表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/221

205 女子高生も友人と料理をする

 夏休み。


 今日はリンリンとコルちゃんが我が家にやって来てくれた。リンリンも大学の休みが丁度同じみたいだから暫くは一緒にいられるみたいでうれしみ~。


「ねぇねぇ。2人は1週間後の水曜日って空いてる? 空いてるよね。絶対空けて!」


「コルコ。私が知らない間にノラノラがおかしくなってるんだが」


「ノラさんの突発性は今に始まったものでないですよ」


「それもそうだったな」


 呑気に納得されてるけど肝心の返事はー?


「もうすぐ生誕祭が始まるから今年はコルちゃんとリンリンも一緒がいいんだよね」


「あーなるー。だからそんな必死になってたのね」


「わたしは大丈夫ですよ」


「バイト入ってた気がするけど店長に言ってシフト変えてもらうわ」


 リンリン優しみー! これは全力ハグー!


「おー。お姉さんが一緒でそんな嬉しいかー」


「嬉しいー!」


 これはますます張り切らないといけない。今度の生誕祭は趣向を変えて楽しみたいからね。

 リンリンから離れて真面目な顔をしよう。2人は何も分かってなさそうに我が家のもふもふと戯れてるけど。


「生誕祭なんだけど、今回は私達も向こうで料理を出そうって考えてるの」


「料理をですか?」


「うん。毎回楽しませてもらってるし、タダでご馳走になってるから今度はこっちも料理を提供したいなーって思って」


 ほとんどが央都の人達で成り立ってるお祭りだけど、私ももう立派な一員だからそろそろこういう行事に参加もしてみたい。


「ま、いいんじゃないの。私は構わないよ」


「わたしもいいですよ。出す料理は決めてあるのですか?」


「それがまだなんだよね。向こうで出すなら日本っぽい料理を出したい。どんなのがいいと思う?」


 そしたら2人が少し思案してくれる。


「日本っぽい料理って言ったら寿司とか?」


「和食をイメージするなら味噌汁でしょうか」


 うんうん。そういう意見が欲しかったんだよね。


「お味噌汁はいいね。鍋とコンロを用意したら向こうでも作れるし。お寿司は美味しいけどお魚の鮮度を考えたら当日にするのはちょっと難しいかな」


 生ものだし、万が一食あたりを起こしたら大変。でも米っていう所はわりといいと思う。


「にぎり繋がりでオニギリはどうかな? 具を色々用意したら楽しんでくれると思う」


 人が沢山来るから手の込んだ料理よりサッと作れる料理の方がいいっていうのもある。オニギリなら必要な材料も少なめで済む。お米を炊くのがちょっと大変かもしれないけど。


「味噌汁とおにぎりか。悪くないな。日本っぽさがある」


「どちらも簡単に作れますが、奥が深い料理でもありますね。味噌汁は出汁の作り方で味はかなり変わりますし、おにぎりも塩加減が大事です」


「なので! 今から作りたいと思います! まずは買い出しから!」


 というわけで今日の目的でもある料理研究会を開催!

 近くのスーパーへ行って材料調達開始。試作段階だから美味しくなる組み合わせを選ばないと。


 まずは野菜売り場をうろうろ。


「味噌汁には何を入れる?」


「うちはほうれん草と人参がよく入ってたわ」


「わたしは豆腐と卵入りが好きですね」


「私はエノキが入ってるのが好きだなー」


 とりあえず今言われたのを買ったらいいのかな? 手を伸ばしたらリンリンに手を掴まれた。およ?


「まぁ待て。ノラノラ、向こうで食べる人の気持ちを考えてみろ。多分立ち食いを想定するだろ? 箸を使わずに飲むのを考えたら、吸いにくい奴はやめた方がいいと思うぞ。豆腐とかな。細かく切ればいいだろうけどそうしたら崩れるし」


 やけに細かいアドバイスをしてくれる。


「リンリン向こうで自炊してる?」


「まぁちょっとな」


 これは料理人に昇格しましたねー。


「色んな人に食べてもらうなら回転率を考えて固めの野菜も控えた方がいいでしょうね」


 コルちゃんのアドバイス。となると人参も難しいかな。ホウレン草やエノキは細かく切れば大丈夫だよね。後は王道にわかめやネギ、油揚げあたりかな。


 続いてはオニギリの具材探し。とりあえずコシヒカリと塩を買っておこう。

 どっちも重いからカートの下送り。


「おにぎりの具といえば?」


「明太子!」


「梅ですね」


「私は天むす~」


 おにぎりに関してはどんな具でも合うから正直外れがないよね。おでんの出汁でごはんを炊いておにぎりにするもよし。ここは2人の希望通り明太子と梅を買って、あとはツナ缶に鮭フレーク、塩昆布、後は海苔も必要だね。天むすが食べたいけど当日に揚げ物はきついかなー。魚売り場で小エビを睨んでたらリンリンが手に取った。


「先にエビを天ぷらにしてタッパに入れて持っていけばいいんじゃね? 早く出せば味落ちもそこまでだろうし」


 リンリンさん。本当にこの前まで高校生だった? 私と同じで料理できない組じゃなかった? むー差をつけられた感。


「ん? ノラノラどうした?」


「別にー」


「いやいや。めっちゃ頬膨らませてるじゃん!」


「別にー」


 買い出しが済んで我が家に帰ってきました。重い荷物をキッチンの机に置いて早速調理開始。時間的にも昼過ぎで丁度いいね。


 まずは手洗い。これ大事。おにぎりの為のごはんだけど、炊飯器が使えないんだよね。だからカセットコンロを持ってガス台で作るしかない。


「そうだ。どうせなら飯盒で炊いて作ってみる? 火なら私の魔法で起こせるから」


「コルコ。またノラノラが冗談言ってるぞ」


「ノラさん。ここは異世界ではありませんよ?」


 むー、2人が信じてない。部屋から魔法の杖を持ってきて、それで試しに小さな火を作ったらすごく驚いてる。


「マジかよ! 魔法覚えたのか!」


「絶対に嘘だって思ってすみませんでした!」


「魔法使いノラです!」


 これも日頃の努力の成果だね。えっへん。

 というわけで庭の方で薪を集めて、ミー美の小屋にある藁をちょっと拝借する。

 火が散ったら大変だから物置にある小さめのドラム缶を転がして運ぶ。この中に薪を入れて藁もぽいぽいする。


 我が家のもふもふ達が興味津々と近くに寄ってきた。


「みんなー、離れてねー。危ないよー」


 それでちょっと後ろに下がってくれたから、今の内に杖で火を起こした。藁に火が付いてぱちぱちと燃えあがった。うまく火が灯ったら丁度リンリンとコルちゃんが来てくれた。手には蓋をした鍋を持ってた。飯盒がなかったから代用。ドラム缶の上に網を乗せて、そこに鍋を置いてもらおう。


 後はじっくり炊き上がるのを待つだけ。この間に味噌汁を作りたいけど、この場を離れられないしなぁ。


「って、よく考えたらこの網で味噌汁も作ったらいいんだよ!」


「どうした、ノラノラ? 何を当たり前なことを」


「最初からそのつもりですよね?」


 うん。私がおバカさんだったよ。これが日頃から料理してない人の図だね。

 これならカセットコンロを持って来なくて済むね。その代わり薪が必要になるけど、足りなくなったら向こうの人に分けてもらおう。シロちゃんなら普段から使ってるしね。


 それでリンリンが味噌汁の鍋も持ってきてくれて、コルちゃんが入れる具を運んでくれた。

 火を見ていないと駄目だから全部まかせっきり。


「ありがと~」


「そっちはどうだ?」


「もう少しかな~」


「それなら今から味噌汁作り始めて問題ないな」


 それでぐつぐつと煮込むのを皆で仲良く眺めてる。瑠璃に至っては食べる物と分かってるみたいで一番近くで待機してる。柴助もだけど。


 それから10分くらいしたらいい感じの匂いがしてきた。何だかキャンプしてるみたいで楽しくなってきた。


 ご飯をまぜまぜして蒸らさないといけないから、もう少し待ってからオニギリを作ろう。でも見るからに熱々だろうし、触れる自信がない。そうだ、小さいお茶碗に入れて塩を混ぜて、そこに具材も落としてラップで包んだら大丈夫かな?


 これなら直接触らなくて済むから火傷しないよね。何個も作るって考えたらこれがいいと思う。まず作ってみたのはリンリンご所望の明太子。続いてはコルちゃんご所望の梅干し。種は邪魔だから実の部分だけを箸で取ってご飯に入れてラップで包めば大丈夫。最後は天むす……って言いたいけど今日は揚げ物しないから鮭フレークで我慢。最後に海苔を巻いて完成。


「こっちもできそうだぞー」


 リンリンが鍋の蓋を開けたら湯気があがって、いい感じの味噌汁が出来上がってる。ホウレン草に油揚げ、それにエノキも入ってる!

 お玉でお椀に分けて、最後にネギをいれたら完成。


「うわー、めっちゃうまそうだな」


「ありふれた料理ですけど、調理方法が変わるだけで全く違いますね」


 分かりみー。手間暇かけたこその苦労みたいな?

 それで実食といきます。


「いただきまーす」


 まずは味噌汁を一口。


「んー! 美味しー!」


 普段飲んでる味噌汁味が全然違うー。料理したのがリンリンとコルちゃんだから2人のアレンジだね。具も全部箸で食べなくても一緒に飲めるように細かく切ってくれてある。


「やっぱりエノキだよー」


 味噌汁はこれがないと始まらない。


「ノラノラ、おにぎりめっちゃうまいぞ!」


 リンリンに言われて食べてみる。ふおー、これはあったかふわふわ!

 炊飯器で炊くご飯とは全く別って感じで本当にいい感じ。


「これなら大丈夫そうかな?」


「いけるいける。ぶっちゃけご飯食べなれてる私でも美味しいって感じるし」


「ですね。これはすごくおいしいですよ」


 まぁお腹空いてたからっていう補正もありそうだけど、2人が言うなら間違いないよね。

 よーし、生誕祭が楽しみになってきたー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ