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202 女子高生も学園長から学ぶ

 魔術学園に転移したから学園長室のドアをノックした。


「入れ」


 ノイエンさんの声がしたから返事をして中に入る。


「ああ。ノラかい。今日は珍しくドアから入ってくれるんだね」


 まるで普段は非常識とも言わんばかりの言われよう。文句ならダイちゃんにお願いしたい。


「今日はノイエンさんにお願いがあって来ました」


「へぇ。いよいよ世界でも救うのかい?」


 ノイエンさんが作業の手を止めずに言って来る。だんだんと私に対する認識が酷くなってる気がする。


「世界は救いません。というか平和ですし。実はノイエンさんに魔法を教えて欲しくて来ました」


「あん? あんたは確か魔力なしだろう? どうやって……」


 言い終わる前に魔法の杖を見せたら軽く納得してくれた。


「そんな古代の触媒まで手にして余程だねぇ」


「ノイエンさんならこっち方面も詳しいですよね」


「まぁね。だけどそれを極めた所で並の魔法使いにも及ばないと思うよ。それでもいいのかい?」


 その質問は裏を返したら、私のやる気さえあったら教えてくれるともとれる。これは乗るしかない。


「ぜひお願いします」


「仕方ないねぇ。じゃあ久しぶりに出かけるとするかい」


 ノイエンさんが作業を止めて三角帽子を被った。

 それで学園の屋上まで来ると指を鳴らして箒と大きな樽を呼んでる。


「もしかして遠くへ行きます?」


 無言で頷かれる。前に東都に連れてくれたしこれは期待できそう。

 秘密の特訓エリア的な? 樽の中に入れてもらったら樽が空を飛んだ。


 久しぶりの空の旅は快適そのもの。スピードもゆっくりなおかげで景色を堪能できる。


「にしても、この時期に魔法の勉強に熱心になるなんてあんたも魔法大会に出るのかい?」


 魔法大会! すっかりその存在を忘れてたよ。確か前はノイエンさんの頼みで審査員に出て今回は参加しようって考えてたんだった。もうそんな時期かぁ。


「はい。これで参加しても大丈夫です?」


「大会に魔法の使い方の規定はないね。あくまで魔法で芸術を競うという名目だからね」


 それを聞けて安心。ならますますノイエンさんから魔法の指導を受けておかないと。


 それで空の旅が続いたけどどんどん陸地が減ってるような?

 それでもノイエンさんが降りる様子もなくてついには海の上にまで来てる。


「あの、ノイエンさんどこへ向かっているのですか?」


 さすがに海の上で指導なんてないと思うけど、ノイエンさんならするかもしれない。


「ま。黙って付いてきな」


 そう言われたら何も言い返せない。


 そういえばこの国って島国って言ってたの思い出す。つまり海を渡ってるということは。


「もしかして外国ですか?」


「残念。あんたには色々世話になってるから少し良いものを見せてやろうと思ってね。もう少しだよ」


 まさかのサプライズ! これは期待してもいいのかな?

 海の上を飛んでるっていうのはホルエールでも経験したけど、ここはさらに上空。

 隣には渡り鳥さんが沢山飛んでる。海の方は魚が海面を飛び跳ねてて、なにより海が淡く輝いててとっても綺麗。


 そんなこんなで海を眺めてたら青い海面の向こうにカラフルな島が見えた。近くになるにつれてそのカラフルになってるのが花だってわかった。無人島くらいの大きさだけど、一面に大きな花がいくつも咲いてる。それに何より、花が飛んでる!?

 頭上を飛んでる私の近くにも花びらが舞い上がってる。


「すごい……!」


 ノイエンさんはその花の島を目指して降りていった。降下してる時も花びらは上空に舞い上がっててまるで桜吹雪。ノイエンさんは降りる所を探してるけど一面が花だから足場がない。だから浜辺の方で降りた。


「すごく綺麗な所ですね。思わず見惚れました」


「別名花の楽園。知る人しか知らない島だよ。ここは気候変動がほとんどなく雨も嵐もほぼ来ない。そしてここで咲いてる花は風花と言われて少しの風で天高く飛んでしまう珍しい花だ。だから遠いどこからか花が飛んで来てここに運よく種が落ちたと言われてる」


「風花……」


 地上から見上げたら花が空を飛んでるように見えて、風が止むと花はひらひら落ちて、風が吹いたらまた飛んでいく。

 それに浜辺の方には沢山の鳥の魔物が一杯集まって休んでる。鳥だけじゃなくてアザラシみたいなのもいるし、別の所には私の背丈くらいのあるカニもいる。気候変動がないから沢山の生物がここで休んでるんだ。


「ノイエンさん、ありがとうございます! すっごくうれしいです!」


「そんなに喜んでくれたなら連れて来たかいがあったよ。さて、目的を忘れてないね?」


 そうだった。今日の目的はノイエンさんから魔法を学ぶんだった。


「簡単な術式なら使えるんですけど、それ以外は全然なんです」


「だろうね。そもそも旧式の魔法は応用が難しい作りなんだよ。ていうのも魔力総量が触媒依存する上ほとんど入らないからね。応用しようとすると追加した術式に反応して魔力が消費される。最終的に魔力が空になって不発になるってオチだよ」


 なるほどー。だからこの前フブちゃん達と実践した時にほとんど何も起きなかったんだ。


 でもそれなら1つ解決策がありそう。


「実は前にノイエンさんに買ってもらった魔法棒なんですけど、アンセスさんに改良してもらってこれで触媒に魔力を注入できるんです」


「へぇ。あれから改良したのかい。だけどなんでそれで掴んでるんだい?」


 トングで掴んでるのを指摘されちゃう。


「自分の手で持ったら魔力が爆発するんです。危ないからいつもこうしてます」


「ふぅん。試しに手で持ってみな」


「えぇ!? 本当に大惨事になりますよ? 前にこれでアンセスさんの研究所が崩れたんです」


「安心しな。何が起こってもあたしが何とかする」


 せっかくの指導を頼んだのだから断っても仕方ないかぁ。それにここは人もいないから安全だろうけど。よし、覚悟を決めた。とりあえず誰にも当たらないようにトングを天に向けて、ゆっくり魔法棒を落とした。


 魔法棒が手に触れた瞬間、青い光が輝いた。同時に空に向かってレーザーが飛び出して上空で大爆発発生。それに驚いた魔物達が海に空に逃げ出してる。あんなにきれいだった花も今は粉々になって降ってきてる。やっぱりダメだったー。

 おまけに青い光はずっと出たままだし。


「ノイエンさん、やっぱりダメでしたー」


「諦めるな。できないと思う心は魔法にも反映される。常に成功の景色を忘れるな」


 前にレティちゃんも似たようなのを言ってた。諦めてたら始まらない。

 分かってるけど魔力が暴走してるしどうしようもないー。


「魔力は流れだ。想像するんだ。その魔力はどうありたいか、どうしたいか」


 どうありたいか……。私は特別な魔法使いになりたいわけじゃない。

 誰かを傷つけるような魔法も覚える気はない。

 誰かを幸せに、笑顔にする。それが魔法だっていつも思う。


 だから、爆発なんてしないで。私に従って!


 そう強く願ったら光の形が変わった。


 天高く伸びてた青い光は、今度は点々になって周囲を照らしてる。


「流れが変わったね。あんたの意識が変わったから、それが魔法棒にも伝わったんだ」


 そっか。ずっと危ないからって蓋をしてたけど、たったこれだけで変化するんだ。向き合うって大事なんだね。


 それで気が緩んだみたいで周囲の点々が急に赤く点滅したんだけど!?


「おっと。これは不味いね」


 そしたら周囲に大爆発発生。一面真っ黒になってせっかくの花畑がー。それにノイエンさんも……。


「ノイエンさん、無事ですか!」


「平気さ」


 煙が消えたら花畑の方も無事だった。よく見たら点々に結界みたいな箱が覆われてる。

 被害がでないように防いでくれたのかな。


「まだ魔力操作がうまくいってないみたいだね。今日は安定するまで特訓してやるよ」


「お願いします!」


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