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197 女子高生も親友と出かける

 今日は学校がお休み。休みだし何かしよっかなー、なんて考えても私がするなんていったら異世界に行くくらいだけど。せっかくだしお庭でもふもふ達と遊んであげよう。


「来てあげたよー」


「わふっ!」


 出迎えてくれたのは柴助ただ一匹。尻尾をぶんぶん振って遊んで欲しそうにしてる。

 他の子達と言えば全員がだらだらしてる。屋根の上で瑠璃と猫丸が日向ぼっこしてるし、ミー美は雑草食べてるし、たぬ坊とこん子はリガーの皮をひっぱり合ってる。謎の遊びだ。


「柴助は偉いねー。ご褒美にスライムゼリーをあげよう」


「わうっ!」


 前に食べさせたらはまったみたいですら吉が分裂した時にはあげるようにしてる。月に数回しか食べてないのに見事に味を覚えたみたいで最近だと私が持ってるのを見切られてる。

 まぁ柴助は私が何も持ってなくても走って来るけど。


 それで餌を上げてたら他の子も威勢よく寄ってくる。正直な子は好きだよー。

 皆の分もちゃんとあるから分けてあげよう。猫丸だけが動くのが面倒そうに屋根の上からこっち見てるけど瑠璃が持っていってあげてる。ほう、優しい。


 そんなこんなで戯れてたら家の前に車が来た。


「ノラノラー」


 この声は!


「リンリン!? 嘘、来てくれたの!?」


「私が連れてきました!」


 後ろからはヒカリさんも出て来た。なんていうサプライズ! そういえば大学一緒だから家が近くなったんだね。


「えーすごく嬉しい! リンリンー!」


 これはハグハグの時間だー。


「ノラノラは相変わらずで安心するよ」


 リンリンがいつになく落ち着いてる。それによく見たらいつもはポニーなのに髪を下ろしててふんわり仕上がってる。まるで大人のお姉さんみたいになってる。絶対にヒカリさんの影響だ。


「リンリンは大人になったねー。でもかわいい!」


「でしょー? でもね、ノラちゃん。ここだけの話、リンちゃん大学始まってから毎日のようにノラちゃんに会いたいーって言ってたのよ? これはもう連れて来るしかないって思ってね」


「ちょっ、ヒカリさん! それ言わないでって言ったじゃん!」


 リンリンが照れて顔を赤くしてる。うん、やっぱりいつものリンリンだ。


「ぴー!」


「みー!」


 内の子も久しぶりに会えてうれしいみたいで2人にすりすりしてる。


「よーし! せっかく2人が来てくれたんだから異世界に行こう!」


「待ってました!」


「ノラちゃんは分かってるわ!」


 最早私の存在意義が異世界行きの添乗員みたいになってるような気がするけど考えない。


 2人の手を握って異世界の街にやってきた。どこに行くかは決まってないからとりあえずぶらぶらと歩き始める。ヒカリさんはカメラマンになって早速写真を撮ってる。


「大学の方はどう?」


「んー、まぁぼちぼちかな。ただ講義が毎回1時間以上もあるから途中で集中力切れてくるんだよな」


「そうなんだ」


 高校だと授業は50分置きだから、それは確かに大変そうかも。


「でも学食はマジうまい! しかもびっくりするくらい安いんだよな。おまけに帰り道にめっちゃうまいクレープ屋があるし、本当お金がいくらあっても足りないんだよ」


 そんな風に話してるリンリンはいつになく生き生きしてた。ちょっと寂しい気持ちもあるけど、そうやって楽しんでるなら素直に嬉しい。


「ノラノラも今度内に来なよ。おすすめの場所一杯あるから」


「うん、また行くね」


 こんなに力説されたなら是非とも行きたい。


「リンちゃんもすっかり大学デビューね」


「ほとんどヒカリさんの影響だけどな」


 やっぱりヒカリさんの仕業かぁ。一か月も経ってないのに溶け込んでておかしいと思ったよ。


「こうなったら負けてられない。異世界の女を見せてあげるよ」


 というわけで私は異世界にある洋服店の扉を叩いた。店の奥にはオレンジ髪のツインテの狐族のかわいい子が今日も店番してた。私は早速詰め寄る。


「フランちゃん! 異世界流の最先端を見せてあげて!」


「ふえっ!? なにごと!?」


「このままだとリンリンが都会に染まっちゃうの! だから異世界に染めるよ!」


「え、え、え? なになに!?」


「おーい、ノラノラー。店員を困らせるなよー」


 リンリンに諭されたから一度深呼吸して落ち着く。それでかくかくしかじかと説明してみる。


「えーと。つまりキサラギさんを異世界風の女性にしたいってこと?」


「そうそう」


「無理だよ」


 なんていう無慈悲な一言。フランちゃんってかわいい見た目して時々心臓えぐるような発言するよね。今のはかなり効いた。


「だったらリンリンを異世界で一番かわいくしてあげて!」


「任せて!」


 こっちはいいんだね。それでフランちゃんはリンリンの近くによって上着を脱いでもらってる。その服を借りて目をきらきらさせて凝視してる。


「はふぅ。この素材、いい! 知りたい、もっとこの服について知りたいよぉ!」


「ノラちゃん。もしかしてこの子って結構あれな子なの?」


 あれの定義がよく分からないけど、少なくとも服のことになると何も見えなくなるのはいつも通り。


「お姉さんの服ももこもこしてて可愛いです! お願いがあるんだけど、脱いでもらっていいですか?」


「いやいや、誰もいないからって店の中で脱ぐわけないでしょ」


「だめぇ?」


 フランちゃんが目をうるうるさせて首を傾げてる。うさ耳パーカーで狐耳がチラ見えするその絶妙な角度にはヒカリさんが崩れた。


「ぐはぁ。ヒカリ、落ち着くのよ。これは甘い誘惑だわ。絶対に乗ってはいけない。違う、違うわ。ひと時の羞恥とかわいい妹の誘いを断るのを天秤にかけて、あなたは棒に振れるの!?」


 なんか1人で自分の中にいる天使と悪魔と戦ってるみたい。


「ええい! だったら受け取りなさい!」


 豪快に服を脱いでフランちゃんに渡してる。インナーのシャツだけの姿になったけど、それでも普通に様になってるのがヒカリさんのすごい所。


「わ~、ありがと~。これ大切にするね」


 なんでか貰おうとしてる。


「フランちゃん、それくらいにしてあげて」


「む~。仕方ないかぁ。よし、じゃあしっかり似合う服を用意するね!」


 それで2人に渡されたのは立派なケモミミパーカー。普段フランちゃんが来てるような奴。うさ耳じゃなくて猫耳なのがポイント。フードを被ればだれでもケモミミちゃんの仲間入り! 普段はフードを下ろしてお洒落にするもあり、何気にパーカーの裾の部分に猫の尻尾が伸びてるのがグッド。まさに猫賊!


「かわいい! ねぇねぇ、写真撮っていい?」


「ちょっとノラちゃん!? 恥ずかしいからやめて!?」


「右に同じく!」


 照れてる2人は新鮮だなぁ。特にヒカリさんは自分にカメラ向けられるの結構苦手なんだね。モデルなのに。


「一枚で許してあげる」


 可愛さのあまり既にシャッターは切られてる。


「ねぇねぇ、にゃんにゃんって言って?」


「言うわけないだろ。だったらノラノラだって着ろよ!」


「フランちゃん、まだある?」


「もちろん!」


 というわけでフランちゃんから猫耳パーカーを借りて来てみた。おー、これはかわいいなぁ。クルッと回ったら尻尾も動いて本当に生えたみたい。


「にゃ~んにゃん」


「そうだった。ノラノラにはこの手の羞恥心がないんだった」


 リンリンの目が死んでる。


「はぁはぁ! ノラちゃんかわいいわ!」


 ヒカリさんに至っては勝手に暴走してる。


「フランちゃん、この服売ってもらえない? 普段着にしたいな」


「本当!? じゃあノノムラさんのこれと交換して欲しい!」


「それお気に入りだからダメー」


「ふにゃー!」


 フランちゃんが服に顔を埋めちゃった。余程欲しかったみたいだけど、さすがに譲れない。


「じゃあ私は交換してもらおうかしら? 案外悪くないわ」


「本当!? ありがとう!」


 ヒカリさんがにっこり笑って自分の服をあげてる。すごく高そうだけどこれが大人の余裕?


「え、なにこの流れ? 私ももらう展開?」


 皆がリンリンをジーっと見てる。


「いやいや、猫耳着て生活するなんて無理だし!」


 皆が無言で見つめる。


「ああもう! 分かったよ! 着ればいいんだろ、着れば!」


「わーい! ありがと~!」


「これで変なあだ名ついたらノラノラのせいだぞ」


 その時は私も同じの着て大学に突撃するから問題なし。

 これにてリンリン異世界染め作戦完了だね。


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