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194 女子高生も魔法の勉強を頑張る

 今日は魔法の勉強を頑張る。せっかく魔法の杖を手に入れてリリにも教わったんだから、この際に大魔法使いを目指すのだー。

 でも毎回リリに教わるのも悪いかな。多分言ったら快く教えてくれるだろうけど、親友としてこっそり強くなって驚かせたい気持ちもある。

 となったら、行くべき場所は……。



 ※異世界※



「いらっしゃいませ! 本日は特売日の……ノラ様!」


「特売日ノラだよー」


「はっ! 今のはそういうのではなくてですね!」


 知ってるけど冗談として乗りかかるのが私の流儀。


「実は今日レティちゃんに教えて欲しいことがあるんだ」


「私如きにノラ様にお教えできるものなんてないと思いますが」


 相変わらずの自虐だけどスルーして、魔法の杖を見せてみる。


「これは触媒ですか」


「うん。私でもこれを使ったら魔法を使えるから勉強してるんだよ。でもまだまだ勉強不足だからレティちゃんに教えを請いに来たのです」


 レティちゃんはノイエンさんの弟子だからこの手の魔法関係には詳しいと思うんだよね。時々サラッと魔法を使うから優秀なのは間違いない。


「旧式魔法は私も知識だけで実戦経験は皆無なんです。そんな私にノラ様がご満足できるような内容は1つもないかもしれません」


「その知識すらないのが私なんだよね」


 レティちゃんが困ってる様子でどうしようか迷ってたら店の扉が開いた。


「レティくーん! ポーション売ってくれないかねー。魔力切れ狐なんですよー」


「フブちゃんだ~。こん~」


「ノラ君! こんこんですな~」


 フブちゃんはお金をカウンターに置いて勝手にポーションを飲んでる。レティちゃんは頭を抱えて未だに悩んでる。


「何事?」


「魔法を教えてもらおうとしたら悩んじゃった」


 魔法の杖を見せて説明してみる。


「えーこれ触媒じゃん! 初めてみたー!」


 まるでおもちゃを与えられた子供みたいに尻尾を振って魔法の杖を眺めてる。店でもラスト1つだったしやっぱり珍しいものなんだ。


「旧式魔法の勉強かー。いいね、面白そうだし協力してあげるよ」


「本当!」


「もち!」


 これは頼もしい助っ人登場だね。それでレティちゃんとは言うと床に崩れて更に苦悩してる。


「万が一ノラ様に間違った知識を教えた場合、すべての責任はレウィシア・ウォムシェにある。それがお師匠様の耳に入ったらこのお店を首……いいえ街から追放されて一生野宿生活なのでは!?」


 ネガティブ思考を極めるとこうなっちゃうみたい。


「えーっと。レティちゃん、無理ならその、いいよ?」


 ここまで思い詰められると思ってもなかったし。


「はっ! ここでノラ様の誘いを断ったら『レティちゃんってそういう子だったんだね。今後このお店には二度と来ないから』ってなるのでは!?」


 レティちゃんの目がぐるぐる回って最早正常な思考ができてないみたい。フブちゃんは隣でお腹抱えて笑ってるし。


「レティ君は真面目だねぇ。人生もっと気楽にいきなよ?」


「そうそう。フブちゃんなんて西都で野生の狐になってたくらいだし」


「ちょっとノラ君!? ちゃんと生活してたからね!?」


 そうだったんだ。木の上にいたから野生児だと思ってたよ。


「うぅ。自分でもこの性格は悪いと分かっているのですがどうしても出てしまうんです」


「よし分かった。レティちゃんの克服の修行に出かけよう!」


「えぇ!? む、無理ですよ!」


「大丈夫大丈夫。ここに人生お気楽組がいるから」


「そ、そうでしょうか。でも私もノラ様のようになれるなら……がんばります!」


「やったね! 早速でかけよう!」


「ノラ君、君は人の心を操るのが上手すぎて私は怖くなってきたよ」


 フブちゃんが何か言ってるけど気にしない。目的が2つ同時に達成できるならそれもいいと思ったのは本当だもん。



 ※異世界森・湖前※



 暖かな日差しが仕込む森の中、半透明な湖の前にやってきた。

 湖にはバービーさんが生息してて今日も枝を運んで湖を泳いでる。


「まずは色んな魔法を知りたいんだよね。フブちゃん、実践をお願いしてもいい?」


「任せておきたまえ!」


 魔法の杖を渡してフブちゃんが杖の先で記号を……記号? 何かスライムの絵を描いたり落書きしてるような。もしかしたらとんでも魔法を?


「出でよ! スライムの王よ! 我が従属となれ!」


 なんか叫んでるけど杖は全く反応してない。そもそもそんな呪文って必要だっけ?

 リリは何も言ってなかったけど。


「おーい! 我がスライム達よ、どこに行ったのかねー?」


 杖をぶんぶん振ってるけど何も起きてない。まだ魔法を使ってないから魔力切れってわけでもない。


「フブちゃん、もしかして旧式魔法を知らない?」


 そしたらびくって尻尾と耳を跳ねさせてる。図星だね。


「いやー、面白そうだったから乗っただけなんだよねー」


 やっぱりそういう感じか、この子はー。かわいいから許す。


「レティちゃんはどう?」


「魔法の前にノラ様はどんな魔法を使いたいですか?」


「私? んー、服を綺麗にしたりとか、空を飛んだりとかそういうのが出来たらいいなぁ。でも前にリリに聞いたんだけどそういうのはできないって言われたんだよね」


 するとレティちゃんが目を瞑って首を振った。


「魔法とは、不可能を可能にさせる儀式だとお師匠様が言ってました。できないと思う心は魔法にも表れる。だからこそ、可能にさせると強く願えば可能になるのです!」


 レティちゃんが魔法の杖でまるで数学の方程式とも見える長い魔術式を延々と描いてる。これは期待ができるかも!


「完成しました!」


 魔法の杖を掲げて先端部分が光って……光ってない? 描いた魔術式も徐々に消えていった。それでもレティちゃんは石化したみたいにピクリとも動かない。


 誰が見ても失敗したって分かるけど何か言えない空気。フブちゃんが気を使ってレティちゃんの肩を叩いて首を横に振ってる。そしたらレティちゃんが切り株の横にしゃがみこんで丸くなっちゃった。


「所詮私はスライム以下の芋虫猫です。こんな落ちこぼれが魔法を使ってごめんなさい。今日から毎日雑草だけ食べて生きます」


 完全に自虐モードになっちゃった。


「レティちゃん。魔法は確かに失敗しちゃったけど、でもさっき言ってた言葉は真理だと思うよ。できないと思うよりできると願う。私もそれを聞いてハッとしたよ。だから、レティちゃんは何も間違ってないよ」


「で、ですが私は魔法を失敗したんです」


「失敗は成功の母って言葉もあるし、有名な偉人はたった一度の成功をするために何万回って失敗をしてるんだよ。だからレティちゃんは何も間違ってない!」


「ノラ様―!」


 パァッて明るくなって抱き付いてくれた。よしよし、いい子だねー。


「思ったんだけど、これ適当に描き続けてたらその内成功するんじゃないかね?」


 フブちゃんが魔法の杖で記号を描いては消してる。なるほどその手がありましたか。


「今のノラ君の言葉を参考するなら何通りも試していたらその内とんでもない魔法を顕現させる! そして私は央都で表彰されて賢星の仲間入りなのだー!」


 後半の野望はともかくとして、色々試すのは大事だね。

 それで暫く皆が思った記号を色々試して描いていく。



 ※1時間後※



 見事に撃沈。


 そんな簡単にうまくいくから大昔の人が成功させてるよねって今更ながらに皆が気付いた瞬間だったよ。


「ここまで失敗すると逆に清々しいね。触媒が廃れる理由も納得だよ」


「古代の人はこれで魔法を使っていたとは驚きです」


 もうお手上げって感じで2人がくつろいでる。やっぱり触媒の難易度が高いんだね。

 これはもっと時間をかけて勉強しないといけないかもしれない。


「ま。だからと言って今の魔法が便利かって言われても微妙だけどね。魔力なんて個人差があるから余計格差を生み出してるし。おかげでこっちは薬漬けなんじゃ」


 そういえばフブちゃんがレティちゃんの所でポーションを飲んでたのはそういう?


「私も毎日ポーション飲んだら魔力が現れたりしないかな」


「だってさ、レティ君。どうなんだい?」


「それが事実なら魔力なしが生まれたりしないと思います」


 見事な正論。これまた撃沈。

 私の快適魔法生活はまだまだ先になりそう。

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