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180 女子高生も友人の悩みを聞く

 時間の流れは早くてあっという間に寒い冬がやって来た。空から大粒の雪が降って町中を真っ白に染めてる。登校してる生徒の足跡が雪の跡にくっきりと残ってる。歩いたブーツの跡も残ってる。


「寒いー」


 マフラーにコートをしてても全然足りない。特に足が冷える。タイツはいてるけど冬の寒さには厳しい。学校に着いたら教室がストーブでぬくぬくできるから我慢我慢。


「ぴー!」


 瑠璃は雪が好きみたいで楽しそうに飛び回ってる。鱗みたいな体なのに寒くないのかな。夏はよく冷房の部屋に逃げてるけど冬は元気なんだよね。


「ノラノラー。早いなー」


「リンリン。おはー」


「はよー。わたしゃ眠いわ」


 珍しくリンリンと登校が一緒になった。家の方角も違うしリンリンは自転車通勤だから基本的に会わない。でも今日は雪が積もってるから徒歩みたい。


「早起きしたから?」


「それプラス遅くまで勉強」


 大学受験に向けて頑張ってるんだね。ご褒美にほっぺを手で温めてあげよう。


「あー生き返るー。ノラノラの手って本当あったかいよな」


 保温効果は10秒で切れちゃうけどね。


「瑠璃ー。助けてー」


「ぴー」


 そしたら火を吹いてくれたからリンリンと仲良くあったまる。


「これはいいな。これから登校中は瑠璃に火を吐き続けてもらおう」


「ぴ!?」


 瑠璃に対する負担が爆上がり。対価でリガー10個くらい求められそう。


 そんなこんなで学校に到着。既にバスも停まってて教室に入ったらコルちゃんが席で読書してた。しかも眼鏡をかけてるし、なんか新鮮!


「コルちゃん、おはよー」


「おはようございます、ノラさん、リンさん」


「コルコ、まさか目が悪くなったのか?」


 そしたらコルちゃんが眼鏡を外した。


「視力は落ちてませんよ。これは伊達メガネです」


「イメチェン?」


「わたし、思ったんですよ。子供っぽく思われるのは見た目に原因があるって。ですから眼鏡をしたら少しは大人びて見えると思ったんです」


 随分深い溜息を吐いてらっしゃる。


「何かあったの?」


「実はこの前、スーパーへ買い出しに行ってたんですよ。それでその帰り道にビラ配りしてる人から、お使い偉いね~って笑顔で言われたんですよ!? しかもその後に園児向けのクリスマスの企画のチラシを渡されてそれはもう悲しい気持ちになったんです!」


 いつになくご乱心になってます。確かにコルちゃんは背も小さいし童顔だから勘違いするかもしれない。流石に園児は酷いと思うけど。


「それで考えたんですよ。これからは大人な振る舞いをして舐められないようにします」


 大分根に持ってる。


「気持ちは分からんでもないが、でも伊達メガネだけって効果薄くないか?」


「ほかにすぐ思いつく方法がなかったんですよ」


 眼鏡してると確かに賢く見えるし大人っぽいよね。コルちゃんは元々賢いけど。


「それならヒカリさんに聞いたらいいんじゃない?」


 ヒカリさんならモデルだしコルちゃんの頼みなら喜んで一目散に駆けつけて来そう。それで完璧なコーデを一瞬で完成させそう。そしたらまた溜息吐いてた。あれ?


「それも考えたんですけど、お姉ちゃんに頼んだら徐々に熱が入って当初の目的を見失うんですよ。お姉ちゃんは可愛かったらなんでもいいんです」


 今の言葉をヒカリさんが聞いたら致命傷を負ってたね。


「厚底の靴を履いてみたら?」


 少しでも身長が伸びたら少なくとも園児には間違えられないと思う。


「私のサイズにあったのが売ってませんでした……」


 どんより絶望の声が聞こえる。


「だったら前にノラがコーデしてくれたみたいに服着崩したらいいんじゃないのか?」


 そういえば2年になった時、そんな遊びもしたね。


「ただの反抗期と思われそう。瑠璃を肩に乗せてみるとか?」


 鷹とか鳶を腕に乗せてる鳥使い的なイメージは大人っぽさがあると思う。それを実践しようと思ったけど肝心の瑠璃は何処に? 探したら生徒に紛れてストーブの近くであったまってる。何かシュール。


「こういう時は異世界の人に聞いてみよう!」



 ※放課後・リリル宅※



「いらっしゃーい。今日は来てくれて嬉しいわ。なんだか皆と会うの久しぶりね」


 リリが自室に案内してくれてそう言ってくれる。確かに最近皆でこっちに来るの事態少なかったからね。


 部屋に入ったらキューちゃんが椅子に座ってスライムプリンを黙々と食べてる。いつも何か食べてるのは気のせい?


「ノノムラに友人殿か。歓迎するぞ! かっかっか!」


 完全に自分の家だと思い込んでる感。

 そんなキューちゃんをコルちゃんがジーっと見てる。


「なんじゃ? 我の寛大さに感涙したのじゃ?」


「あーいえ。少しだけお仲間に感じまして」


 確かにキューちゃんは背も小さいし歳も1000を超えてるくらい。背の小ささに関してはコルちゃんより更に低いし。


「キューちゃんだったらコルちゃんの悩みも分かってあげられるんじゃない?」


「我に悩みなんてないがのう」


 実際悩みがなさそう。


「そうなんですか? わたし、背が小さくて周りから子供扱いされるんです。ヘイムさんにはそういうのないんですか?」


「あるのじゃ」


 あるんだ。


「じゃが! そんな無粋な発言をする輩には暗黒の闇で覆ってやれば態度を豹変させるのじゃ。我を馬鹿にした罪は重いのじゃ」


 輩は一体どっちなのかって思う。コルちゃんも参考になってなさそうだし。


「まーでも実際の所、普段からの態度や振る舞いからも大人っぽさてのがあるんじゃないのか?」


「そうでしょうか」


「そうそう。例えばほら」


 リンリンが指さす。丁度リリが紅茶を淹れてくれてたみたいでその仕草は優雅そのもの。


「リリルお嬢様を真似すれば大人っぽくなれるぞ」


「リンー? おやつ抜きにするわよ」


「失礼な態度を取って申し訳ございませんでしたー」


「分かればよろしい」


 それで紅茶を淹れてもらったからお礼を言って飲ませてもらう。リガー風味の紅茶だー。

 リリも一口飲んでたけど、その仕草はやっぱり気品を感じる。リンリンがお嬢様呼びしたくなる気持ちもよく分かる。


「リリって何か大人っぽいよね。気品あるっていうのかな?」


「ノノー、そんな恥ずかしいこと言わないでよ。私とノノも同い年でしょ?」


 そうだけどやっぱり根本的な育ちの違いを感じるよ。


「つまりわたしも金髪にすればいいのでしょうか」


「なんでそうなった!」


「わたしだってリリルさんみたいになりたかったんです!」


 コルちゃんが壊れた!


「わ、私なんて全然大人じゃないわよ。それならコルの方が落ち着いてるし頭もよさそうだしで大人に見えるわ」


 リリが気を使って言ったんだろうけど、その余裕のある発言こそが大人っぽさなんだよね。

 今のがとどめになったみたいでコルちゃんが沈んじゃった。


「こ、コル!?」


「リリルが泣かせたのじゃ」


「私は普通に励ましただけなのに!?」


 それで少ししたらコルちゃんが急に決心したみたいに顔を上げた。


「わたし、決めました。高校を卒業するまでに身長を10cm伸ばします」


 残り1年ちょっとでそれは厳しすぎると思うんだけど。


「桁を1つ減らした方がよくない?」


「ノラさん、わたしは大人になるんです。それで年相応だと証明するんです!」


 こんなにやる気になってるコルちゃんは珍しい。無謀な気もするけど本人がその気なら応援してあげたい。


「ふむ。身長を伸ばしたいのか。なら我が魔法で……」


「それは遠慮しておきます」


「まだ何も言ってないのじゃ!?」


 キューちゃんの悪名は何となく分かるからね。

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