175 女子高生も異世界友人を招く
週末の夕方。学校帰りにこっちに来た。学校で用事があったから時間も結構遅め。それでも異世界の空はそんなに暗くない。それでも街には黄色い光が宙にぽつぽつと浮いてる。
そんな街中を歩いてたら金髪の子と青髪の子を発見。
「リリとムツキだ~」
「ノノ!」
「久しぶりだね」
こんな時間でも友人と会えるなんて嬉しみ。
「2人も学校帰り?」
どっちも制服姿だし。
「そうね。食べ歩きしてたらムツキと出会ってね。それでどこか買い物でも行こうって話をしてたのよ」
「ノラも一緒にどう?」
「もちろん行く!」
2人の間にお邪魔してお買い物~。何気にこの3人で出かけるのって久しぶりだから楽しみが倍増だね。
「どこに行くか決まってる?」
「私はどこでもいいわよ。ムツキは?」
「修理に出してた武器を取りに行きたいから付き合ってもらってもいい?」
「いいよ~」
それで大通りの道を歩いて噴水広場に行くちょっと手前の街角にあるお店に入った。
「らっしゃい」
中には作業着を来た熊さんが店番をしてる。前に一度だけ来たことがあるだけで、また来るのはかなり久しぶり。
ムツキは熊さんと話して武器を受け取りに行ったから、商品でも見てよう。剣や槍、弓、他にも変わった武器が沢山置いてある。その中にあった木の棒みたいのが目に入る。先が渦巻き状になってる変な杖。
「これは?」
「それは触媒ね。まだ取り扱ってる店があるなんて驚きだわ」
「触媒?」
「そ。空気中の魔素を取り込んで魔力を生成する物って言った方が分かりやすいかな? 要するに魔法を使う為の道具よ」
なんてハイテクな代物! つまり私でも魔法使いになれるという奴では?
後1つしかなさそうだしこれは買いたくなる。
「あれ、でもリリや学園の人は誰もこんな杖を使ってないよね?」
学園内だけでなくてもキューちゃんやケルちゃんもそうだし、レティちゃんも使ってる様子はなかった。
「人の体内にも魔力があるって学説が出回ると、魔法を使うのに触媒は不要ってなったのよね。でも太古の時代では触媒を使って魔法を使うのが当たり前だったのよ。特に火を起こす魔法が発見されて以降、文明が発達したって歴史があるの」
それはこっちの歴史に通ずる何かがあるね。
「これいいなぁ。魔力なしだけど、私でも魔法使えるんでしょ?」
そしたらリリが苦笑してた。あれ?
「確かに使えると思うけどあまりおすすめしないわ。ちょっと貸してみて」
それで杖を天に掲げてジッとしてる。すると杖の中に小さな粒子が入っていってるのが見えた。杖がほんのり光輝いて、それでリリが杖の後ろの先の方で地面に何か文字を描いてる。そしたら文字がうっすら光って同時に部屋にそよ風が入って来る。それも一瞬。
「やっぱりこんなものね。触媒って魔素を魔力に変換してそこから更に魔術式を併用して初めて魔法となるの。手間が多いわりに触媒に入る魔力が圧倒的に少ないから使える魔法なんて火の粉や微風を起こせるくらいなの」
ほえー。見た目は結構派手なのに実際はそうでもないんだね。私がイメージしてた魔法使い像が一瞬で砕けちゃった。
「最近だと魔道具が発展したのも逆風なんじゃないかな」
いつの間にかムツキが戻って来て会話に混ざってきた。
「そうそう。だからわざわざ触媒を媒介して魔法を使う物好きはいないのよね」
「店長さーん! これ売ってもらっていいですか?」
「ってノノ!?」
代金を払って買っちゃった。やっぱり憧れの魔法使いをこのまま諦めたくないしね。
店を出たら異世界でもさすがに暗くなってきてた。
「この後どうする? 私、明日休みだからまだまだ大丈夫よ」
「私も明日は騎士のお仕事はお休み」
まさかのお2人さんがお休みとは。奇遇を通り越して運命だね!
「実は~、私も休みなんだよ。これはあれをしないとダメだね」
「あれ?」
「お泊り会!」
※野々村宅※
リリとムツキを連れて我が家に舞い戻ってきた。本当はリリかムツキの家がよかったんだけど、多数決で2人が私の家を立候補されたから負けちゃった。
我が家に付いたら早速もふもふ達のお出迎え。一目散にやってくるは柴助で次に瑠璃、ミー美。たぬ坊とこん子もゆっくりと寄ってきてくれた。猫丸は廊下で丸くなって動かないけど。
「は~、この子かわいいわぁ」
リリが柴助に抱き付いてもふもふしてる。その気持ちはとっても分かる。柴助も嬉しそうだし。ムツキはたぬ坊とこん子の頭を撫でてる。人見知りな2匹だけどムツキ相手には結構素直。温和な性格だから警戒しないのかな?
「ぴー!」
「みー!」
瑠璃とミー美が私に寄って来たから頭を撫でてあげよう。皆寂しがり屋だからね~。
「じゃあ家にあがって~」
「お邪魔します~」
「失礼します」
2人を家に招いたけど、家の中が真っ暗。そういえば今日はお父さんとお母さん帰りが遅くなるって言ってたような。ラインに連絡入ってないか確認してみる。おじいちゃんの家に寄って行くから帰りが遅くなるって来てた。とりあえず友達が家に泊まっていくからって返事をしておこう。すぐにスタンプでおっけーの文字が来た。
「ご両親さんは出てるの?」
「うん。ちょっとおじいちゃんの家に行ってるみたい。お泊りの許可はもらったから大丈夫だよ」
「嘘、今の一瞬で!?」
リリに驚かれたからラインのやりとりを見せたらまた驚いてた。
「は~。やっぱりノノの世界って最先端よねー」
「分かるかも。こっちに来ると何世代も先の世界に感じる」
私からしたら魔法のある世界の方が余程ハイカラだけどね。
「夕飯作らないと。リリとムツキは食べれないのってある?」
「私は何でも大丈夫よ」
「うん。好き嫌いはないから」
それを聞けて安心。何を作ろうかなー。冷蔵庫を覗いてみる。野菜室に大きな大根が目に入った。よし、これを使おう。今日はちょっと寒いしおでんがいいかな?
煮込むにはちょっと時間が足りないかもしれないけど、そこは頑張る。
「よーし。じゃあ私が腕にかけて料理作るよ~」
「なら手伝うよ。皮むきでもなんでも任せて」
「だったらこれを切ってもらっていいかな。後、皮もお願い~」
地味に苦手な皮むきをムツキにお願いしよう。手を洗ってから大根をざーって軽く洗い流す。ムツキも手を洗ったら大根を切り出してくれた。初めて見る野菜だろうけど流石の手際。1人暮らしのキャリアは違うね。
「ノノー、私も何か手伝うわ!」
「じゃあこれを見ててもらおうかなー。沸騰したら教えてー」
鍋にお水を入れてお湯を沸かす。おでんだからゆで卵が欲しいからね。
そんな感じで談笑しながら料理をしてたらさくさく進んでいった。
※1時間経過※
「できたー。おでんだよー」
「へー、美味しそう」
「いい匂いする」
大変な下準備もリリとムツキがいてくれたからサクサク進んだおかげで結構早めに作り終わったね。本音を言うならもう少し煮込んでいたいけど、時間も遅くなってるし早く食べたい。
ご飯もさっき炊き終わったからそろそろだね。ご飯をお茶碗に盛っておでんも全員に配膳していこう。お母さんとお父さんの分含めて5人分作ったから結構量が多くなっちゃった。
おかげで具が鍋の底に埋まってたりする。よし、全員均等に分けれた。
「じゃあ食べよっか。いただきます」
手を合わせて早速実食。んー、ちょっと味が薄いかな。だしの素先生だけだと不安だったから昆布も入れたけど、やっぱり煮込む時間が足りなかったかー。むー。
「なにこれ、美味しいー!」
「すごく食べやすい。温かくて優しい」
「そう、それ! 心があったまるわ!」
と思ってたけど異世界の友人さんにはご好評だったみたいだからヨシ。
「わ! これを半分に割ったら中から黄色いの出て来た!」
「こっちには中にもちもちしたの入ってる」
卵に餅巾着だね。普段当たり前に食べてる物でも世界が違ったらこういう反応になるんだね。私が異世界で料理食べるのと同じ。
「こんな料理、向こうだったら絶対に食べれないわよね」
「うん。具材もそうだけど出汁や調理方法、全部が違ってる」
「私のおじいちゃんが作ってくれるおでんはこれよりもっと美味しいんだよ」
子供の頃食べさせてくれた記憶があって、あの味はずっと忘れられない。おじいちゃん曰く、おでんは仕込みが命って言って朝から下準備して弱火でぐつぐつ煮込んでるそう。出汁の加減も完璧だったし。
「私はノノの作ってくれたこれすっごく好きよ!」
「私も。誰にでも作れる物じゃないと思う」
2人は褒め上手だね~。これは今度おじいちゃんに出汁の作り方を聞いておこうかな?
Q. 冷蔵庫の中に都合よくおでんの具材が入っていたのは何故?
A. きっとおでんを作る予定だったのでしょう。
Q. お泊り会なのに夕食食べて話が終わってるのは何故?
A. ネタが思いつきませんでした。




