170 女子高生も幼馴染と勉強する
放課後。学校のチャイムが鳴り響いて皆が帰路に付き始めてる。
「それではノラさん、また明日」
「ばいばーい」
コルちゃんはバス通学だから先に教室を出て行っちゃった。私も帰ろうかな。
そうだ、偶にはリンリンを誘って帰ろう。
クラスは3年だから上だね~。階段を上がって先輩さん達とすれ違っていく。そういえば3年生のクラスへ行くのは何気に初めてかも。いつもリンリンの方から来てくれるから新鮮な気分。
クラスの前まで来て中を覗いても人が誰もいない。あれ、いない?
「あの~、3年生のリンリン……如月さんってもう帰りました?」
廊下で話してる生徒に話しかけてみる。
「如月? 如月なら終わったらすぐに教室出て行ったよ」
「教えてくれてありがとうございます~」
もう帰っちゃってるみたい。考えたら3年生って受験生だし、そろそろ忙しくなる時期だよね。
靴を履き替えて外に出た。空を見上げたら丸いお月様がくっきり見える。今日は中秋の名月で満月。お月見日和だね~。
「そうだ。家にはいるだろうしちょっと見に行こうかな」
お月見だから帰りに団子も買っていこう。
※如月宅前※
リンリンの家の前まで来てインターホンを鳴らした。それでばたばたーって音がして扉が開けられた。
「どちらさまーって、ノラノラか!」
「ノラノラだよ~。一緒に帰ろうって思ったけど教室にいなくて来たんだ~」
「そっか、悪いことしたな。上がってよ」
「お邪魔しまーす」
靴を脱いで上がらせてもらった。家の中は暗いから両親はまだ帰ってないみたい。それでリンリンの部屋にご案内される。ゲーム機に漫画にリンリンらしい部屋。
でも机の上には教材が並んでて問題集を解いてたみたい。
「勉強中だった?」
「あーいいよ。集中切れてやめようって思ってたし」
「じゃあいいものあげるね~」
「おっ。これ、あの美味しい所の団子じゃん」
ちょっとお高いけど味は本当に美味しい。きなこ味が私のお気に入り。
「今日はお月見さんだからね」
「そうだったっけ? 全然覚えてないわ」
こういう所はいつものリンリンで安心する。
「じゃ、ここはお月見と洒落こんでベランダで食うか」
「さんせーい!」
外は少しだけ暗くなってきて、おかげでお月様がはっきり見えて来た。白い光が暗い路地を照らしてる。
「進路決まった?」
「一応」
「へ~、どこどこ?」
「ヒカリさんが通ってる大学」
「へ~、いいね」
顔見知りがいたら大学生活も寂しくないだろうしね。ヒカリさんもお節介な所あるから、すごく優しく教えてくれそう。
「ということはリンリンも都会デビューかぁ。私だけ田舎者になるね~」
「悪いな。本当はここを出て行く気なんてなかったけど、でもやっぱり興味あったんだわ」
「知ってる。リンリンはきっとここを離れるって思ってたから」
心の準備はまだできてないけど、それでも永遠に別れるってわけでもないしね。
「って言っても何したいとかそういうのはまだ全然なんだけどな。それをヒカリさんに話したらじゃあ内の大学に来ないかって誘われてね。向こうに行ったら何かやりたいことも見つかるかもしれないし」
「きっと見つかるよ」
根拠は何もないけど、でもそう思う。
ちょっとだけ静かな時間が流れる。虫の鳴き声が耳によく響いてくる。
「ヒカリさんの大学かぁ。あそこって結構偏差値高くなかったっけ?」
ヒカリさんを見てたらあれだけど、あの大学自体は普通に難しい所だった気はする。
「そうなんだよ! それで今も必死に勉強してたわけよ」
学校終わってすぐに勉強するくらいってことは本気なんだね。これは幼馴染として放っておけないね。
「よし分かった。今日は帰るまで少し付き合うよ。私も勉強していく」
学校帰りだから教材は揃ってるしね。
「ちょい待ってくれよ~。今団子食って休憩終わった所じゃん。もう勉強する気起きないんだけど」
「だめだめ。大学行くって決めたんでしょ? だったら頑張らないと」
「今日のノラノラ厳しいぞ~。いつもの甘々なノラノラはどこいった~」
「勉強頑張ったら一杯ハグハグしてあげるから」
「言ったな? 本気にするぞ」
それでやる気になってくれるならいくらでもハグっちゃうよ~。
短くなったので没ネタでも書きます。読まなくて構いません。暇ならどうぞ。
第117話女子高生も新学年になる、の回で本当は転校生の新キャラが登場する予定でした。意気揚々と執筆も終わったのですが校正作業中にふと思いました。
「この新キャラ出したら現実の話が増えるのでは? そうなったらタイトル詐欺になるのでは?」
そう思って泣く泣くお蔵入りになりました。その話は今もWordに残っています。なので実際に投稿した内容は大分改稿された状態となってます。
新キャラの名前は黒白あやめ。クロシロではなく、コクビャクと読みます。
黒髪ロングストレートのミステリアスな女子。クールな雰囲気で1人でいることが多い。というテンプレな属性ですが、彼女は大のゲーム好きでもあります。特にボードゲームが好き。
しかし幼少期にその趣味が周りから理解されず、また親の都合で転校を繰り返していたのでいつしか親しい友人がいなくなってしまいました。そんな中、ノラが彼女と仲良くなろうとするも彼女はいつものように素っ気なくして相手にしなかったのですが、何度もやってくるノラに対して彼女はある提案をします。
「私にゲームで勝てたら友達になってもいい」
そう言ってチェス盤を出すのでした。彼女は選択肢に悩むとゲームの結果で決めるという癖があったのです。ノラはそれに承諾して挑みます。しかしノラはチェスのルールを知らなかったのでコルから聞きながらプレイするという素人展開。ですが何故か勝ってしまいます。実は彼女、ゲーム好きですがゲームの腕は滅茶苦茶弱いのです。今まで一緒にゲームをする相手がいなかったので遊ぶ機会が殆どなかったのが原因。
そこでノラが今度はコルやリンも誘って皆でしようと提案してめでたく友達になるというオチです。




