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168 女子高生も姉妹に巻き込まれる

「いやー、やっぱりここはいいわね」


 ヒカリさんが異世界の街をこれでもかってくらい激写してる。結構撮ってると思うけどまだまだ足りないみたい。


「お姉ちゃん、あんまり目立つ行動は控えてくださいね」


「分かってるわよ。これでも節度とマナーには自信があるのよ」


「全然説得力がありません」


 コルちゃんが呆れて溜息吐いてる。今日は2人を誘って異世界へお出かけ。本当はリンリンも誘いたかったけど家の用事で来れなくて残念。


 今日はどこに行こうかな。せっかくだから変わった所に行きたいし、誰か誘うのもありかな。リリとかムツキとか。


 考えてたら前の方で栗色の髪のケモミミさんを発見。紺色の制服を来たあの感じはミコトちゃん?


「ミコトちゃーん」


「ノラじゃん。奇遇だね」


 パンを片手でもぐもぐしながら手をあげて挨拶してくれた。


「今日は騎士学校お休み?」


 騎士の制服は白いからよく目立つ。


「そうそう。せっかくの休みだから鬱憤はらしに美味しいの食べてる。これ、さっき狐の子が経営してるパン屋で買ったのだけどすごくおすすめだよ」


 ミコトちゃんは食べ歩きが趣味らしいからずっと我慢してたんだろうね。


「分かる。シロちゃんのパンはすごくおいしいよね」


「へー、あの子とも知り合いなんだ」


「まーねー」


 もふもふを目の前にしては放っておけないからね。


「な、なんて美人さんなの! 名前聞いても!?」


 後ろでヒカリさんが既にカメラ構えて震えてる。ミコトちゃんは髪とか顔の手入れがすごくて綺麗だから気持ちは分かる。


「すみません、お姉ちゃんはいつも節操がないんです」


 何故かコルちゃんが謝ってる始末。

 その様子を見てミコトちゃんがきょとんとしてる。


「ノラの知り合い?」


「そうだよー。コルちゃんとヒカリさんだよ」


「そう。ミコット。ま、ほどほどによろしく」


 素っ気ない挨拶だけどヒカリさんはぐいぐい迫ってた。ミコトちゃん、ちょっと表情歪んだけど、でもヒカリさんの顔をまじまじと見つめ始める。


「あなた、髪の手入れ上手ね。それに眉とまつ毛もちゃんとしてる」


「ふっふーん。ミコットちゃん、見る目あるわね。これでもモデルなのよ、私」


「本当? え、ちょっと教えて欲しいんだけど」


 それで2人が急に眼の影がーとか、髪の仕上げがーって盛り上がり出してこっちは完全に忘れられてる感。


「ふぅ。ヒカリとは話が合うかも。今度ゆっくり話をしたいかも」


「私はいつでもウェルカムよ。でもね、私よりも内の妹はもっとすごいわ! この天然素材の肌を見て! ぷにぷにで生まれたての赤ちゃんみたいでしょ!」


 ヒカリさんがコルちゃんの後ろに立ってほっぺをツンツンしてる。本人はすごく不服そうな顔をしてるのは見えないんだろうね。


「こっちだってすごいよ。見てよ、ノラの髪。一本一本がとてもさらさら。無駄な栄養が殆どない完璧な状態。初めて見たときからずっと憧れてた」


 ミコトちゃんが私の髪を触って自慢し出す。一体何の勝負が始まってるの?


「ノラもすごく時間をかけて手入れしてるんでしょ?」


「えー大したことしてないよ?」


 お金もそんなにないから安いのばっかりだし。


「そうなの? それはそれですごいけど」


「いいえ、ミコットちゃん。美容の世界の大したことないは、めちゃくちゃ努力してる人の決まり文句よ」


 ヒカリさん、勝手に変なこと吹き込まないで欲しいんだけど。ミコットちゃんも何か納得してるし。


「はぁ、ヒカリっていいね。私もヒカリみたいな姉が欲しかった」


「私はいつでも妹は歓迎よ」


「ミコットさん、騙されてはいけません。お姉ちゃんは外面がいいだけで、中身はダメダメなんです」


 それでもミコットちゃんはコルちゃんの声が届いてないみたいで恍惚な顔してヒカリさんを崇めてる。一瞬で落ちたね。


「ミコトちゃん、そういえば今日はミコッちゃんと一緒じゃないんだね」


 休みって聞いたから一緒に過ごしてると思ったけど。


「姉さんいっつもどこに居るか分からないんだよね。人にあれだけガミガミ言う癖に自分だってふらふらしてるじゃんっていうね。もう探すの諦めたよ。姉さん探す時間あるなら美味しい店巡りした方が有意義だし」


「あー、えーっとミコトちゃんー」


「ん? どうしたのノラ?」


 呑気にパン食べてるから言いづらいから指だけさしておこう。それで後ろを振り返ったら腕を組んで仁王立ちしてるミコッちゃんが後ろに立ってた。


「ね、姉さん!?」


「あなたが見えたから声かけようと思ったけど」


「へ、へーそうなんだ。ずっと姉さん探してたんだー」


 必死に取り繕ってるけどお怒り状態だから全部聞こえてたのは言うまでもない。


「私なんかが姉で悪かったわね」


 プイッてそっぽ向いてる。ミコトちゃんがあたふたしてるけど、こればっかりは擁護できないなー。


「姉さんごめん! 買い置きしたパンあげるから許してよ」


「許さないって言ったら?」


 ミコトちゃんから愛想笑いすら消えていって絶望してるよ。そんな姉妹の間にヒカリさんが割って入った。


「まぁまぁ。姉なら寛大な心で妹を許してあげたら?」


「あなた、誰?」


「コルちゃんのお姉ちゃんのヒカリさんだよ」


 それでコルちゃんもいるって気づいてくれて納得してくれた。


「あなたには関係ない」


「関係ありですとも。ミコットちゃんとは私の妹に……」


 そしたらミコッちゃんから言いえない黒いオーラが溢れてる。妹を奪うなって言いたいのだと思う。それにはヒカリさんも一歩下がってた。


「お姉ちゃん。身内同士の関係に勝手に首を突っ込まないでください。こういうのは本人同士が話し合って解決するのが普通なんですよ」


 それにミコッちゃんがうんうんと頷いてる。

 だんだん修羅場になってきた感。


「それにさっきの発言からしてもミコットさんに非があるのは明らかじゃないですか」


「あなたに常識があって助かる」


「いえいえ。姉の粗相をどうか許してください」


「ううん。こっちも妹が迷惑かけてごめん」


 2人が保護者みたいに頭を下げ合ってる。こっちはこっちで仲良くなってるような。

 コルちゃんは占いも詳しかったから元々ミコッちゃんも気に入ってただろうけど。


「ちょっとー、私まで悪者扱いって酷いじゃない」


「そうよ。ヒカリは悪くない」


 これ収拾つくのかなぁ。


「ノラちゃんはどう思う? 私は悪くないわよね?」


「ノラは私の味方だよね?」


「ノラさん、ダメです。ノラさんは常識がありますよね?」


「私はノラを信じてるよ」


 ここで私に振るという無茶振りー。責任重大過ぎて困るんだけどー。

 仕方ない、こういう時は……。


「よし、決めた。皆でご飯食べに行こっか」



 ※異世界・酒屋※



 昼過ぎの酒屋には人がぽつぽつと入ってた。そんな中に5名が来たわけだけど、何故かコルちゃんとミコッちゃん、ミコトちゃんとヒカリさんでテーブルが別れてる。ここで私がどっちかに入ったらまた話がこじれそうだからカウンター席に座ろう。


 テーブル席の方は不穏な空気漂ってるけど大丈夫?


「ノリャお姉ちゃん、何かあったの?」


 セリーちゃんがただならぬ気配を察して小声で話しかけてきた。


「姉妹喧嘩、なのかなぁ」


「えー大丈夫?」


「多分大丈夫じゃない。セリーちゃん、ちょっと協力してくれない?」


「いいよ! 何すればいい?」


「セリーちゃんはいつも通りで大丈夫だよ」


 セリーちゃんが頷いて厨房へとパタパタと戻っていった。姉妹仲直り作戦決行だね。


 それで少ししたらセリーちゃんがメニューを運んで来てくれた。


「お待ちしました! クルクル実のスラース和えです!」


「ありがとー」


 持ってきれくれたお礼に頭なでなで~。


「ノリャお姉ちゃん、今は仕事中だからそういうのダメだよっ!」


 口ではそういう言ってるけど嬉しそうな顔してるからずっとなでたくなるー。


 ちらっとテーブル席の方を見る。皆こっち見てる。いい感じ。


 それで食べ終わってセリーちゃんがカウンター越しのちょっと向こうで皿洗いをしてる。小さいのに健気に頑張ってるね。


「セリーちゃんは私が本当のお姉ちゃんだったら嬉しい?」


 リガーのジュースを一口飲んで話しかけてみる。


「すごく嬉しいっ!」


 洗い物の手を止めずに言ってくれる。


「でもノリャお姉ちゃんがお姉ちゃんじゃなくても、お姉ちゃんでも私はノリャお姉ちゃんが大好きだよ!」


 この子はなんて嬉しいことを言ってくれるんだろう。嬉しくてにやにやしちゃうー。


「最近あんまり会いに来れなくてごめんね」


「全然いいよ! こうやって会いに来てくれるから、ノリャお姉ちゃんが今も気にかけてくれてるって分かってるもん! だから平気!」


 本当見ない間にたくましくなったなぁ。初めて出会った頃は自信も何もなくて路頭に迷ってたのが嘘みたい。姉心かな、泣けてきた。


「私、思ったんだけど本来姉妹ってああいう感じじゃないかしら」


 後ろからヒカリさんの声が聞こえた。


「過保護になって干渉し過ぎる。反省しないといけないかもしれない」


 ミコッちゃんが続けた。


「姉さんは悪くないよ! 私がだらしなくてちゃんとできないから心配してくれてるって分かってるし!」


「お姉ちゃんも元気だしてください! お姉ちゃんのいい所はいつも元気で誰にでも明るく接する所じゃないですか。そんな暗い顔されたら、私……嫌です」


 そしたらテーブル席の方で明るさが取り戻していって笑い声が溢れてきた。

 お姉ちゃん作戦大成功。厨房の奥で狼の大将さんが後ろ姿で無言で親指を立ててくれてる。

 ご迷惑おかけしました~。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 狼の大将いいですね、一番好きなキャラです。
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