149 女子高生も生誕祭を楽しむ(5)
生誕祭に来てから大分時間も経った気がする。でもお祭りムードは全然冷めてない。
かくいう私もまだまだ生誕祭を堪能するつもり。今日はとことん遊ぶ!
「あれ、そういえばリリを見かけてないかも」
生誕祭に来て大体の顔見知りと顔を会わせたけど親友とはまだ会ってない。
きっとリリも生誕祭を楽しんでるんだろうけど探すのも苦労するんだよね。
瑠璃に探してもらう? うーん、瑠璃にそこまで出来ると思えない。今もお腹が満たされたみたいで欠伸ばっかりしてるし。
よし、ここは1つリリのお屋敷に行ってみよう。
~リリル邸前~
お屋敷の近くに行ったら何か人が結構集まってて賑わってる。けどその理由はすぐに分かった。すごくいい匂いがする!
「はいはい、順番に並んでー! 料理は逃げないから!」
屋敷の前で屋台を開いてリリが看板娘してる! しかもいつもはストレートなのに今日はツインテ! 金髪ツインめちゃかわいい!
「リリー!」
「ノノ! あーよかったぁ。何も教えてなかったから来なかったらどうしようって思ってた所なの! ノノをびっくりさせたくて今年は私も料理に挑戦したのよ! どう!?」
えっへんとばかりにドヤ顔してる。これはびっくりサプライズ。
「すごくいいと思う! ツインテ似合ってるよ!」
「そこ!? 嬉しいけど!」
リリお嬢様が赤面して顔を隠してる。やっぱり可愛い。
屋台の方を見たらこれまた大きな鍋でお屋敷の執事の人やお爺さんにメイドさん達が料理を作ってる。ちらっとリリの方を見てみる。満面の笑みで親指を立ててる。人には得意不得意あるから仕方ないね。
「リリの所は何を作ったの?」
「よく聞いてくれたわ! 爺! 1つ頂戴!」
リリがお爺さんの所に駆けつけて木製のお椀を受け取って戻って来た。ほかほか湯気も立ってるからスープかな?
「じゃーん!」
そう言って中身をドドンと自慢されて見たらまさかのラーメン! いや、うどん? 薄くて黄色い色をしてるけど麺は結構太め。スープは透明の色をしていて葉の付いた赤い実に緑色の丸いゆで卵みたいのが半分に割れてる。中身は黄色だから絶対卵。
「前にノノの国の料理でオソバを食べさせてくれたでしょ? あの味が忘れられなくてせっかくだから生誕祭で出そうっと思ってたの。絶対ノノも驚いてくれるだろうって思ったのよね」
まさかのおそば! これにはびっくり!
「見た目は全然似てないけど私なりに色々と工夫したのよ。味見だけは何回もしたから保証するわ!」
ちゃんと料理にも貢献してたみたいだね。これはリリアンナ先生に脱帽だよ。
「すっごくうれしい。まさか生誕祭でおそばを食べられるなんて思ってなかったー」
「さらにさらにー! ノノにはこれが必要でしょ?」
それでリリが出してくれたのは……お箸! 木で出来た手作り感満載のお箸だ!
「ノノの国だとこれで食べるのが主流らしいからね。まーでも、ここの人はこれに使い慣れないだろうからさすがに普通のにしたけどね」
つまり私の為だけにリリが手作りしてくれたってこと? わーなんかもう感動通り越して嬉しすぎてハグしたくなっちゃうー。
「リリ大好きー、ぎゅー」
「わわわ! 汁が零れちゃうからー!」
この気持ちを伝えておかないと気が収まらないからね。
というわけでお椀とお箸を受け取って早速食べてみよう。まずはスープを1口。
すごくあっさりしてる! 口の中に嫌な感じが全然残らないし、なるほどこれは確かにおそばかもしれない。ほんのり甘みがあるのはこの赤い実が入ってるからかな?
じゃあ麺もスーッと。
「んー、美味しい!」
すごく安心する味。日本で食べるおそばと殆ど変わらない。見た目は違うけど味の再現度はかなり高い。この緑のゆで卵も箸でさらに半分に切って食べてみる。うん、卵だ!
「ノノはいい顔して食べてくれるわね。これは作った甲斐があったわ」
「だって本当に美味しいんだもん。まさかこっちで自分の国の料理を食べれるとは思ってもなかったし」
「ぴー!」
瑠璃が料理に釣られて目を覚ましてる。本当に食いしん坊さんなんだからー。でもさすがに麺は瑠璃が食べるのは無理な気がするー。ここはこの卵で我慢してもらおう。
1口で食べたけど満足そうにしてる。
「喜んでくれて本当嬉しいわ。ヘイムなんか屋敷を出て行く前に軽く3杯も食べて行ったのよ? そんなに食べたら他の食べられなくなるって忠告したのに今頃大丈夫なのかしら?」
その足で大食いに参加するとはなんていう度胸だよ。最早お腹の中に死神が宿ってる説を推したい。
「でもこれだとリリと一緒に回れないねー」
「そうなのよー。皆が私考案だからーって言って聞いてくれないのよー」
リリと一緒に回りたかったなぁ。
「でもでも! 生誕祭はまだまだこれからだし、それに夜には自由になるつもりよ!」
確かにこのペースなら完売までは遠くなさそう。
「ノノ、前に言ってたでしょ? 今年は魔導砲のある近くまで行きたいって」
1年前の些細な一言を覚えてくれてるなんて嬉しみが深いよー。
「確か魔力を注いだ分だけ光が遠くに飛ぶんだったよね?」
「そうそう! だからそれは一緒にしよ!」
「うん、私もしたい!」
「決まりね! 待ち合わせはどうしようかしら?」
「またここに来るよ?」
「うーん。なんか悪いのよね。ノノが先に魔導砲のある所まで行ってくれてもいいわよ?」
なるほど、確かにそれなら時間的にも余裕ができそうだね。
「えーっと、確か北のお城の近くだよね?」
「そうよ。お城は目立つから間違えたりはしないと思うわ。ここからでも見えるしね」
そう言ってリリが北を指さしてくれる。お城の所は大きな階段があるから他の所よりも少し高いからよく見えるんだよね。これは楽しみになってきた。
「それじゃあ夜、お城で会いましょ! それまで生誕祭を楽しんで来てね!」
「うん、また後でね! おそば、本当においしかったよ。ごちそうさま~」
今日は本当にいいことばかり起きて楽しさがハイになってきちゃう。夜までまだ時間もあるしまだまだ生誕祭を堪能しちゃうぞー。




