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145 女子高生も生誕祭を楽しむ(1)

 ~生誕祭当日~



 ついにやって来た! 待ちに待った生誕祭! この日の為にダイエットも頑張ったんだから今日は一杯食べる~。リンリンとコルちゃんが来れなかったのは残念だけど瑠璃が一緒だから楽しむんだから~。


「お~、すごい人!」


 普段もそれなりの往来があるけど今日は一段と多い! 去年来た時よりも増えてるんじゃない?


「私達も楽しもっか」


「ぴ!」


 瑠璃は空を飛んでるから人混みからはぐれる心配もなくて安心。まずはどこから行こうかな。とりあえず一番近くの酒屋に行ってみよう。


 そしたら酒屋の前に巨大過ぎるイノシシみたいのが屋根の上から吊るされてた。大きすぎて別の建物からもロープで固定してる。象くらい大きい。瑠璃も驚いて周囲をぐるぐる飛び回ってる。


「グレンシシの大食いカァ! 優勝者には10万オンスカァ!」


 鴉の店員さんが翼をパタパタして大声をあげてる。去年も大食いやってたね。今回はこれまた規模が大きそう。既に挑戦する人が席に座ってる。巨漢の人やら大きなトカゲさんやら……あ、ムツキだ。その隣にはキューちゃんもいる。


「かっかっか! 食べるだけで金がもらえるとは何とも親切極まりない祭事じゃな!」


「キューちゃんがんばれー」


「おお! ノノムラ・ノラではないか! 我が勇姿をそこで拝んでおくがよい!」


 それは時間的に難しそう。私も色々見て回りたいし。


「ムツキもがんばれー」


「がんばる」


 それで締め切りになったみたいで狼の大将さんが鉈を取り出してグレンシシって言われた大きなイノシシを捌いて切り身にして、それを片手で炎の魔法を出して火で思いっきり炙ってる。わおー、その場で調理とは豪快だー。


 包丁で肉をさらに細かく切り分けて皿に乗せて、そこに特製のソースみたいのをかけてハーブも添えてる。大食い用のメニューとは思えない細かさ。料理人だけあって見た目にもこだわってるみたい。


「これは大食いだが品のない奴は即失格とする」


 狼の大将さんがお皿を並べながら説明してる。やっぱりその辺も料理人としてのプライドみたいな? これはムツキとキューちゃんにも勝機が見えてそう。


「ノリャお姉ちゃん! 待ってたよ!」


「セリーちゃん!」


 セリーちゃんが酒屋の扉の近くでテーブルを並べて大きな看板を立ててる。ポーション飲めます? 見たら机の上には透明の容器に青と緑の飲み物が並んでてストローもついてる。


「これはポーション?」


「そうだよ! 1つどう!?」


「じゃあ貰おうかな。青いのも違うの?」


「青い方はハイポーション味! 緑が普通のポーション味だよ!」


「それじゃあ青いのもらうね。ありがとー」


 セリーちゃんから受け取って早速飲んでみる。そしたら口の中がスーッとしちゃう。ミントに似てる? でも味は全然違う。苦くて苦くて、ほんのちょっぴりだけどこか甘さを感じられる。そんな味。癖になりそう。


「これ美味しい。すごく好きな味かも」


「やったー! 実はこの前ノリャお姉ちゃんのアドバイスを受けて苦みを残した方がいいって言われて改良したんだよ!」


 あの時の研究を今日の為にがんばってたんだ。セリーちゃん、なんて健気なんだろう。

 これはなでなでしてあげよう。


「えへへー、ノリャお姉ちゃんに満足してもらえて今日は一番うれしい!」


 こんな純粋な笑顔を見られて私も幸せー。


「私も1つもらっていい?」


「いいよ! 好きなの取ってください!」


 颯爽と現れた金髪のケモミミの美人さん。


「ミコッちゃん!」


「ノラ。奇遇ね」


「今日は妹さんと会えるといいね」


「うん」


 生誕祭に必ず来てるって言ったからには何としても会わせてあげたい所。


「これおいしいね。あなた、中々センスある」


「ありがとうございます!」


 セリーちゃん嬉しそうに飛び跳ねてる。多分料理を出してる所が多いからこういう飲み物系は色んな人が助かりそうだね。食べ歩きするのに持つのにも丁度いいし。


「ぴ~」


 瑠璃も飲みたそうに寄ってきた。


「瑠璃飲めるのー?」


「ぴ~」


 一口あげたら一瞬で表情歪んで逃げていっちゃった。瑠璃にはまだ早かったね。

 それを見てセリーちゃんとミコッちゃんも笑ってる。


「ミコッちゃん、せっかくだし一緒にお店回らない? 1人で心細いんだよね」


「私も1人であの子を見つけられる自信ないし助かる」


 みたいだから一緒に行けそう。これは幸先がいいね。


「それじゃあセリーちゃん、お店がんばってね」


「うん! いってらっしゃい!」


 ペコリとお辞儀する姿も様になってきてもう一人前の料理人だね。

 キューちゃんとムツキにも一言いっておこうかな。


「なんでじゃ! この葉っぱなどただの飾りであろう! これが食えないから失格など横暴なのじゃ!」


 うん。何も見なかったことにしよう。


「じゃあ行こっか」


「そうね」


 ミコッちゃんと並んで街の通りを歩いて行く。生誕祭っていうだけあってどこも気合を入れて料理を出してる。あっちは炊き出しをしてるのか大きな鍋をドンと構えていい匂いがしてくる。別の所からは屋台みたいにして甘そうなお菓子を出してる。


 普段は素通りするお店も今日は飾り付けが豪華になってお洒落になってて入りたくなってくる!


 ミコッちゃんは辺りをずっとキョロキョロしてる。多分妹さんを探してるんだと思う。


「そう慌てなくともきっと見つかるよ。せっかくの生誕祭なんだから楽しまないと損だよ、ミコッちゃん?」


「これが最後のチャンスと思うとどうしても、ね」


 んー、これは一筋縄じゃいかなそうだね。ここは1つ何か美味しい物でも食べて落ち着いてもらおう。そしたらリガーを売ってる鳥さんのお店を発見!

 店の前にりんご飴ならぬリガー飴みたいなのが沢山置いてある!


「ミコッちゃん! あそこ行ってみよう」


「ちょっ、手を引っ張らないでってば」


 ここは強引に行っちゃうよー。というわけで鳥さんの店に到着。


「おー、嬢ちゃんじゃないか」


「こんにちはー! 店長さんも料理出してたんですね! これはリガー、ですよね?」


「おうよ。リガーのアイスだな。リガーを沸騰したお湯に入れると中の果肉だけが溶けるんだ。それを凍らせて作ったのがこいつってわけだな」


 ほほう。リガーの皮って弾力があるって知ってたけどそんなテクニックがあったとは。


「これもらっていいですか?」


「もちろんだ。そっちの嬢ちゃんもどうだ?」


 ミコッちゃんが頷いて仲良く受け取った。


「ぴ~!」


「はっは! お前も来てたんだな。ほらよ」


「ぴ!」


 瑠璃ももらったみたいで早速実食。おー、皮が思ったよりも柔らかくなってる! 凍らせてるけど一度茹でるとこんなにも柔らかくなるんだ。それに凍った中の果汁や果肉がシャーベットみたいになってて美味しい!


 顔に出てたみたいで鳥さんが翼で親指あげたみたいにしてくれた。これには瑠璃もご満足だね。


「……悪くない。アイスなんて食べたの久しぶりね」


 ミコッちゃんからもご好評。生誕祭って普段知ってる人の意外な一面が知れたりもするから本当にいいね。


 鳥さんに手を振って別れたらミコッちゃんがこっち見てるのに気づいた。


「あなたが誘ってくれなかったらこれも食べれなかったと思うと、あなたの言うように惜しいことをする所だった」


「妹さんを探したいミコッちゃんの気持ちも分かるよ」


「うん。でも、そうね。せっかくだから今日はあなたに任せるわ。私だけだったらろくにどこも回らないだろうし」


 まさかのエスコートをご所望? むむむ、そんな風に言われたら断れない。

 これはミコ様と冗談で言いたくなるけど言ったらきっと怒るからやめておこう。


 生誕祭はまだまだ始まったばかり。次はどこに行こう?

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