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142 女子高生も占い師を説得する

 梅雨が明けて暑い夏がやってくる。なんならもうすでに暑い。

 でも夏には楽しいイベントが沢山あるから今年も頑張って乗り越えよー。


 とか言いつつも異世界に来てるのはいつものお約束。朝早くに来れたから軽いランニングついでに街を探索中。


 それで丁度外に出る城門近くを通ったら長い薄黄色髪のケモミミさんを発見。相変わらずヒラヒラした服を着てて動きにくそうだけど遠目でも分かるくらい綺麗だ。


「ミコッちゃん、おはよー」


「ノラじゃない。おはよ」


 いつもは無表情だけどちょっぴり口元を緩めてくれて嬉しい。


「どこかにお出かけ?」


「うん。帰ろうと思って」


「帰る?」


「長く村を出てたからいい加減顔を見せないといけないと思って」


「また戻って来るよね?」


「それは分からない。村の人の反応次第」


 これは本当にお別れしないといけないの? こんな急に? 全然心の準備ができなくて、寧ろ理解が追い付かない。


「ミコットは見つけられなかったけど、あなたと出会えたおかげで私も心の整理がついたから感謝してる」


 ミコッちゃんは村でもかなり地位の高い人だと思うからあまり勝手ができないだろうから、ここで引き止めるのはきっと酷かもしれない。でもお別れしたくないよ。


「もう一度確認したいんだけど妹さんの特徴教えてもらっていい?」


「名前はミコット。髪は茶髪で制服みたいな格好をよくしてた。動きやすいからってスカートよりもショートパンツをよく履いてた気がする。わりと食べるのが好きな子。前に央都に連れた時も食べ歩きしてたし」


 んー、何だろう。何か見覚えのあるような情報に感じる。茶色……ケモミミ……食べ歩き。

 あ、そういえば。


「ミコッちゃん。もしかしたら私、妹さんに会ってるかも」


「そうなの?」


「うん。前に西都と東都に行った時、屋台に寄ったらケモミミのある人と出会ったの。今のミコッちゃんの情報と似てる。あんまり会話はできなくてすぐにどこかに去っちゃったの。本人は旅をしてるって言ってた」


「多分、ミコットで間違いないわ。はぁ、今もふらふらしてるのね」


「ごめん。私がもっと気にかけてたら説得できたのに」


「謝らなくていいよ。説得してもあの子が素直に言うこと聞くとも思えないし。それにちゃんと元気にしてるならそれを聞けただけでも満足」


 ミコッちゃん、本当は会いたくて仕方ないのに大人な反応だなぁ。もしかしたらこのまま帰るのも心残りがあるのかもしれない。何とか2人を会わしてあげたいけど……。

 そうだ、1つだけ方法がある。


「ミコッちゃん、もう少しだけ央都に残れないかな? もしかしたら妹さんに会えるかもしれない」


「本当?」


「毎年この時期になると央都で生誕祭っていう行事が行われるの。色んな人が色んな料理を出して賑わうんだよ」


 去年は夏頃だったはずだからもうすぐだと思う。規模も大きくて他国の人が来るくらいだから食べるのが好きな妹さんがこれを知らないはずがないと思う。


「生誕祭……。なるほど、それは考えてなかった。確かにあの子が来る可能性は高そうね」


「でしょ?」


「でも人が多いとあの子を見つけるも一苦労しそう」


「その点は任せて。事前に央都の知り合いの人に声をかけておくから皆にも協力してもらうよ」


 酒場だと目玉になる料理が出るだろうし妹さんが寄る可能性は高い。それにノイエンさんなら目がいいから人混みの中でも見つけてくれるかもしれない。


「あなたがそこまで言うなら私ももう少し残ってみるとするわ。あの子と会えないまま帰るのは癪だし」


「本当はこのままミコッちゃんとお別れしたくないっていうのが一番の本音なんだけどね」


「……あなたのそういう所、嫌いじゃない。ありがとう」


 垂れたケモミミがぴこぴこ動いてるからこれは中々いい反応。こういう笑顔は大好きだよー。ハグしたくなるけどそれは我慢。


「さて。帰らないならこれからどうしようかな」


 ミコッちゃんが言った。そもそも手持ちが殆どないし一見じゃ帰る恰好には見えない。なんというか異世界の人はフッ軽な人が多い気がする。

 街の方を見たら朝の準備に活動し始めた人でにぎわってきた。


「せっかくだしどこか行く?」


 なんとなく誘ってみる。頷いてくれたからいいみたい。


「どこか行きたい所とかある?」


「うるさい場所は嫌」


 となると街に引っ張るのは疲れるかなぁ。となったら。



 ~異世界湖~



 西の門を出た近くの森の中に広い湖がある。そこに来てみた。


「へぇ。こんな所があるのね」


 ミコッちゃんが湖を見渡して言ってる。朝の森はのんびりしてて静か。動物の鳴き声も時々するのが心地いい。湖は空の光が反射してるみたいで中まで透き通ってよく見える。


「前にレティちゃんに連れてきてもらったんだー。その時はバービーって魔物を怒らせて大変だったの」


「バービー? あれって別に害はないでしょ?」


 きょとんとした顔をしててちょっとかわいい。これはバービーの巣から大事な草を取っていったなんて言えない。


 それで湖に沿って歩いていたら綺麗な音色が聞こえてくる。ハープの音?

 それで音の方に目を向けてみると切り株に座ってミツェさんがハープを奏でてた。

 白い服装にピンク色の髪も相まって協会のシスター感がすごい。


 しかも音色に惹かれてか魔物が集まってる。あれはラビラビ、ワーモット、オオクサドリ、それにフィルミーもいる。近くの湖にはスライムがなんか集まってるし音に反応してる?


 聞き入ってたらミツェさんがこっちに気づいて演奏をやめた。それと同時に魔物さん達もこっちに気づいてどこかに行っちゃった。写真に収めておけばよかったー。


「ミツェさんこんにちは~。お邪魔しちゃってごめんね?」


 ミツェさんは愛想よく笑いながら首を横に振ってくれた。なんという懐の広さ。

 私だったらどれだけ魔物が集まって来るかギネスに挑戦すると思う。


「ここで会うなんて奇遇ね」


 ミコッちゃんが親しそうに話しかけてる。これは意外な関係?


「2人は知り合い?」


「知り合いってほどじゃないけど。シーシーさんには毎年帰郷祭で村に来て演奏してもらってるから」


 ほほう。そういえばミツェさんと初めて出会ったのも生誕祭でだったし、そういう行事に呼ばれやすいのかな。歌姫って呼ばれるくらいだから引っ張りだこなのかも。


「あなたほどの歌唱力と演奏力がある人は早々いないってあの方も言ってた」


 ミツェさんが照れくさそうに少し顔を赤くしてる。歌の綺麗さに耳を奪われがちだけど、西都に行った時は鍵盤楽器も普通に演奏してたから本当に器用なんだと思う。


「魔物も寄ってくるなんて余程綺麗じゃないと無理だよね」


「心の綺麗さに~人も魔物もないのよ~」


 それには同意だね。私の周りにも優しい魔物が沢山いるし。


「けれど~本当に魅了するのは~音や言葉じゃなくて~舞なのよ~」


 舞? それはいったいどういう意味?


「私のなんてあなたほどじゃない」


「神すらも~その舞に~心奪われる~」


 私にはなんの話かさっぱりなんだけど。


「もしかしてミコッちゃん、踊れたりする?」


 それならそのひらひらした格好にも納得できたり。

 でも質問に反して腕組んでそっぽ向かれちゃった。これは地雷かー。


「ノラ。ミコッテさんの舞は本当に美しいのよ。あの舞の前だと竜すらも火を吹くのやめるから」


 ミツェさんが耳打ちするみたいにボソッと言ってくれた。それが聞こえてたみたいで今度はミコッちゃんの顔が赤くなってる。


「シーシーさん、勝手言わないで。そこまですごくないから」


 ミツェさんはニコニコするだけで何も言わない。これはどんなのか気になる!


「帰郷祭に行ったらミコッちゃんの踊りが見れる?」


「見れるわ~」


「見れないから」


 どっち? なんて聞くまでもないだろうけど。


「よし決めた! 今年は私も帰郷祭に行く!」


「え……本当に来るの? 別に大したことないよ。あれなら生誕祭の方が数倍規模も大きいし」


「ここまで言われたら1度は行かないとって思って。それに実は前から気になってたんだ」


 ケモミミ村と聞いては行かずにして何が異世界だよ!


「これは楽しみね~」


「楽しみ~」


 ミツェさんと手を取り合って歌いたくなるくらい気分が高ぶってきた~。


「……一気に帰りたくなくなってきた」


 ミコッちゃんの悲痛な声が聞こえた気がしたけど多分気のせい。

罪の告白の時間です。


ミコッテの妹のミコットですがノラが深都に行った時は灰色の髪の~みたいな情報だったのですが何故か茶髪になってます。はい、ミスです。何で茶髪に変わったんだ!

多分染めたんだと思います(白目)


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