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124 女子高生もスライムアイスを作る

「今日の日中の気温は30度を超える所もあるでしょう」


 まだ春っていうのに天気予報で30度超えを予想されてるんだけど。せっかく今日は休みだからゆっくり過ごそうと思ったのになー。異世界に行ったら逃げられるけど、過去にそれを見破られて痛い目にあったしなぁ。


「んー、どうしよっかなー」


 朝から既に暑いし冷たい物が食べたい気もする。うん、食べたい。なら作ろう。

 冷たいのといえばやっぱりアイスだね。オーソドックスにアイスクリームを作ろう。作り方は分からないからスマホで調べる。


 ふむふむ、砂糖と卵と生クリームと牛乳があれば作れる感じかな。バニラも好きだけど、ここはせっかくだから異世界流にする。


「すら吉ー。分裂してるー?」


 部屋に戻ったら水槽の上でスライムが2匹クルクル回ってる。完璧なタイミングだね。

 スライム味のアイスを作ろう!


 台所に行って早速調理開始。エプロンと三角巾をして気分は料理人。材料を広げてるせいか瑠璃と猫丸が興味を持って近寄ってきてるけど今は構ってられない。


 まずはスライムの味を作ろうかな。ここに書いてあるコーヒーアイスのコーヒーの所をスライムに変えたらいけるはず。


「野々村野良の3分クッキングの始まりだよ~」


「ぴ~」


「な~」


 視聴者もいてくれてるおかげでやる気もあがってきたよ。


「まずはスライム1体をフライパンに乗せまーす。それで弱火でゆっくり加熱します。そうすると何とスライムが一瞬で溶けちゃいます!」


 すら吉は日本だと水がないとすぐに蒸発しちゃうから加熱なんてしたらそれこそ一瞬。これで液体になったスライムが完成したからここに牛乳を加えよう。それで軽く掻き混ぜてボウルに移しちゃおう。


 後は砂糖と卵と生クリームをボウルに入れて泡立て器で混ぜる。かなり混ぜる。

 これが結構大変。


「あら、野良。何か作ってるの?」


「ちょっと借りてる~」


「へー、アイスかしら? いいわね」


 お母さんに一瞬で見抜かれたんだけど。この時点でアイスって分からなくない? ケーキの可能性だってあるし。今日の気温とかそういうのを一瞬で計算してアイスに導いたならかなり強い。


「でもそんな泡立てだとダメよ。貸してみなさい」


 そういってボウルと泡立て器を渡したらすごい勢いで混ぜてる。私と違ってシャカシャカ音もなってるしこれは負けた。


「これくらいでいいんじゃない?」


「お母さんありがとー」


「あとで1つ頂戴ね」


「もちろんだよー」


 お母さんのおかげで混ぜるのも早く終わったから後はスライム味の元を加えて軽く混ぜて冷凍庫で冷やすだけ。


 1時間置きくらいに軽くしならせるのを続けたら、スライムアイスの完成!


「思ったより時間かかったー」


 3分所か3時間くらい必要だった気がする。もうすぐお昼だし。


「んー、思ったより見た目が普通かも」


 牛乳を混ぜたからかもしれないけど、見た感じは殆どバニラアイスにしか見えない。ほんのり水色っぽくはあるけど。


 とりあえずスプーンで小皿に移してみる。


「ぴー!」


「なー!」


 瑠璃と猫丸がここぞと台所に戻ってきた。退屈になってどこかに行ってたのに完成すると足が速い。


「はいはい。あんまり食べるとお腹壊すから少しだけだよ」


 瑠璃と猫丸にお皿に移したのを食べさせてあげる。どっちも中々食いつきがいい。

 これは期待できる?


「それじゃあ頂きまーす」


 バニラの味がしっかり残ってるけど、それ以上にスライムの風味がある! これはいいね! ラムネやソーダと違った爽やか感があって食べやすい。


「あら、できたのね」


「うん。美味しいからお母さんも食べて」


 丁度お母さんが来てくれたから小皿に移したのを渡す。それでスプーンで一口食べてた。

 お味は?


「不思議な味ね。見た感じはバニラって思ったけど何か入れたの?」


「スライムだよ」


「えーっと、部屋にいるあの水玉だったかしら?」


 お母さんがすら吉を覚えてくれてたみたいで感動。


「そうそう。時々分裂するからこうやって料理したりするの」


「へー。でも悪くないわね。案外お店に出したら売れたりしてね。なんてね」


 お母さん流石にそれは褒め過ぎだよ。それに圧倒的スライム不足で全然量作れないし。


「せっかくだからリンリンにもあげてくるー」


「気をつけて行くのよ」


「はーい」


 上げる分だけのアイスをタッパに移して、保冷バッグに入れて保冷剤も入れておこう。


 外に出たけど暑い! これは急がないとアイスが溶けちゃう!


 久し振りに自転車を使おう。籠にバッグを放り込んでレッツゴー。

 歩道の近くを走って畑を見てたら農家さんがこんな暑い中でも作業してる。私何か既に息があがりそうなのにすごいなー。


 ぼーっと眺めてたら向こうの畑にかわいいポニーの子を発見。歩道をそれて砂利道を通ってそこに走ったらあっちも気付いたみたいで目が合った。


「ノラノラじゃん。どっか出かけるん?」


「野良猫からの配達でーす。さっきアイス作ったからお届けに来たよー」


「マジかー! ノラノラのそういう所、本当大好きだぞ!」


 リンリンが感極まって抱きついてきそうになるけど服が汚れてるのに気付いて慌てて下がってた。今日は暑いからアイスでも食べないと始まらないよね。


「一杯詰めてきたから皆で食べてね」


「せっかくだから今もらうわ。もう昼だしな。おーい、親父ー。ノラノラがアイス持って来てくれたぞー!」


 奥の畑で作業してる厳ついお父さんに声をかけてる。こっちに気付いて表情を崩して優しく笑ってくれた。


「よーし、わたしゃ早速食べるぞ」


 もうすでに休憩モードに入ってタッパに手が伸びてる。


「スプーン持ってきてないんだよね。後お皿も」


「大丈夫大丈夫。親父がいつもコーヒー飲むのに紙コップとお湯と混ぜるスプーン常備してるからそれ使う」


 そう言って休憩所っぽい日除けしてある所に移動してリュックを漁って紙コップとスプーン出してそこにタッパのアイス入れてる。


「親父ー。早く食べねーと溶けるぞー」


 既に溶けかかってるからこれは時間勝負感。それでもお父さんが来る気配はなさそうだけど。リンリンは早速一口食べてた。


「やっば、めっちゃウマ!」


「暑い中お疲れさまだね~」


 こんなに暑いとアイスも至福だろうね。


「ん? 普通のバニラと思ったけど違うな、これ」


「何だと思う?」


「どうせノラノラのことだから異世界関係だろ? 異世界で食べれるって言ったらあの果樹園の果物かなんかじゃね?」


 そういえば昔リンリンと異世界果樹園に行ったね。


「おしいね」


「んー。あ、分かったわ。スライムだ、これ」


「正解!」


 拍手をしてあげよう。


「そうかー。しかし美味いわ。これ店で出したら売れるんじゃね?」


 まさかリンリンにも言われるなんて。これは本気でスライムアイスを経営した方がいい?


「そういえばリンリンに昔スライムあげたよね。あれからどう?」


 確か丁度1年くらい前だったと思う。そしたらリンリンがバツが悪そうに「あー」って言ってる。あれ?


「本当はノラノラに言いたくなかったんだけど聞いてくれ、私の懺悔を」


「うん」


「ノラノラがスライムくれたじゃん。んで、私もノラノラに見習って水槽で飼おうって思ったんだよ。でも空いてるのが無かったから金魚飼ってる水槽に乗せてあったんだよ」


 なんかオチが見えたよ。


「だって金魚がスライム食べるとか分かるわけないじゃん! しかも半年かけて食いきるとかあいつら絶対私を欺こうとしてたわ」


 大きさで途中で気付きそうって思ったけど、そもそも気温で蒸発したりもするから分かりにくかったのかも。


「そっかー。今度分裂したらまた上げるよ?」


「いやいい。また食われるのがオチだし」


 こう考えるとスライムさんはどこの世界でも食べられるのが運命みたい。

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