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118 女子高生もお嬢様の家でだらだら過ごす

 何気ない学校の帰り道。いつもみたいに異世界に転移しちゃった。どこで時間を潰そうか迷ったけど帰るのが遅くなったら親も心配するから、とりあえずリリのお屋敷にお邪魔させてもらおう。


 でも最近お屋敷の人に完全に顔を覚えられたのか分からないけど、私が屋敷の近くに行くと門番の人に会釈されるし、屋敷の執事のおじいさんに妙に歓迎されるようになったんだけど。おかげで少しだけお嬢様気分を味わえる。


「ノノ! 来てくれたのね!」


 部屋にお邪魔させてもらったらリリが歓迎してくれた。キューちゃんは床に倒れて転がってたけど私が入ったら起き上がってた。


「よい所に来たな。我は退屈で死ぬ所だったのじゃ」


「リリ、キューちゃん、こん~」


 見たところリリが机に座ってノートを開いてるから勉強してたんだろうね。向かいにも教材が出てるのを見るとキューちゃんもしてたけど飽きたパターンだ。


「今日も自習?」


「今終わった所よ」


「そうじゃ終わったのじゃ」


 キューちゃんは明らかに終わってなさそうだけど。


「それならよかった。学校から帰ってる途中にこっちに来たからお邪魔したんだ」


「全然構わないわ! なんなら毎日来てくれていいから!」


「うむ! むしろ毎日来て欲しいのじゃ!」


 2人が意気投合して珍しくハイタッチしてる。余程退屈に飢えてるのかなぁ。

 とりあえず荷物を床に置かせてもらってリリの近くの椅子に座らせてもらおう。


「そういえば気になったんだけどリリって普段何してるの?」


「え、普段?」


 急な質問過ぎて驚いてる。ちょっと言い方が悪かったかもしれない。


「普段っていうか、暇な時? こっちに来て結構長くなるんだけど娯楽をあんまり知らないんだよね」


 私の国だったら漫画とかカラオケとかスポッチャとか色々ある。こっちの世界も平和そうだから娯楽が色々あってもおかしくないと思うんだよね。


「暇な時かぁ。時間があるときは大体街をふらふらしてるわね」


「食べ歩き的な?」


「そうそう」


 確かにリリと出会う時は大体街中か魔術学園な気もする。


「娯楽と言ったら魔道具のおもちゃがあるわ。でもそういうのは殆ど東都でしか買えないの。あ、東都って言うのは五大都市って言ってね。大きな街の1つよ」


「東都には1度だけ行ったよ。北都と南都にはまだ行ったことないけど」


 他にも小さな都市も沢山あるってノイエンさんが言ってた気がする。


「そうなのね。五大都市って言っても全部が全部同じような発展をしてるわけじゃないのよ。東都が一番最先端で魔道具の開発も進んでると言われてるわ。観光客の殆どが東都に行くらしいの」


「ほうほう」


「西都は森の中にあって果実や野菜が美味しいのよ。だから美味しい料理や店が多いって聞くわ。南都は海に面した所でそこでしかできない催しも多いの。北都は広い荒野の中にある街よ。厳しい環境だから魔物とも共存して生活してるのよ」


 聞いてるだけで行ってみたくなる情報ばかりなんだけど。これは今度大きな休みになったら頑張って行ってみよう。


「央都はそれらの中間的な街ね。特出した所はないけど色んな人が集まるわ」


「まさにリリル講師じゃのう」


 キューちゃんがからかって言ってる。でも実際端的な説明で分かりやすい。


「ちょっと話が脱線したけど娯楽の魔道具は私も小さい頃に爺に買ってもらった奴しか持ってないわ。今ハマってるって言ったらこれね」


 リリが部屋の棚から1冊の本を取り出して見せてきた。相変わらずのアラビア文字。

 でもちょっとずつこっちの勉強してるから少しだけなら読める。


「勇者……物語?」


「ノノ、もしかして知ってる?」


「少しだけなら。確か勇者が魔王を倒しに行く話だよね」


 ミツェさんの語りを聞いてるから大雑把には内容を知ってる。


「そうそう。でもこの話は古典過ぎて最近の人はあんまり興味を持たないのよね。実際勇者の苦悩ばかりで読むのも疲れるって意見もあるし。それで最近になってフーカ・リッケって作者が勇者物語を出版したんだけど、これがもう面白いの! こっちだと悪の魔王軍との戦いが主になってて痛快な戦いが繰り広げられてて読んでて楽しいの!」


 珍しくリリが饒舌に語ってる。本来の話だと勇者は魔物に同情したり殺すのを躊躇うような人格って聞いてるから大分原型から変わってそう。


「我も1度読んだがそれはもう酷い内容じゃった。起こる展開全てが勇者にとって都合が良すぎる。おまけに勇者と戦う我ら幹部もどいつも本気を出しておらぬ。そもそも魔法を使うのにいらぬ技を叫んでるのが理解できんのじゃ」


 キューちゃんが肩をすくめて呆れてる。一応本物の史実を知ってるから人が都合よく書き換えた部分は分かってそう。


「えーそれがいいのにヘイムは分かってないわ」


「大体魔王軍の死神が糞雑魚かませ骸骨なのが気に食わぬ!」


 あーこれは自分の扱いが酷過ぎて怒ってる奴だ。

 でもこうやって聞いてると普通の大衆小説みたいなのもあるみたいだね。


「リリもそういう本を読むんだね。もっと高尚な本を読んでると思ったよ」


「普段の授業で嫌というほど魔法の古典を勉強してるから、こういう時くらいは現実を忘れたいのよ」


 やっぱり娯楽に走る時の考え方はどこでも一緒みたい。


「あ、そうだ。娯楽といえば央都に魔剣遊戯っていうのがあるわ」


「魔剣遊戯?」


 名前からして物騒そうだけど。


「簡単に言えば闘技大会ね。魔法、武術なんでもありの戦いよ」


「えー危なそう」


「試合前に魔法装甲っていう防御魔法をかけられるから怪我はほぼないって聞くわ。それで勝負が始まって審判が勝負ありって言うか、5分経過すると勝負が終わるの」


「5分経ったら引き分け?」


「ここが魔剣遊戯の醍醐味ね。5分経つと観客がどっちの戦いがよかったか投票するのよ。それで投票数の多かった方が勝ち。戦う力が相手より高くても、観客を魅了するような戦い方をできれば勝てたりするのよ」


 それは確かに色んな戦いが生まれそう。


「もしも投票が同率だったら?」


 殆ど起きないだろうけど。


「その時は審判が最後の1票を決めるの。その時の緊張感はすさまじいわ」


 聞いてる感じだと戦いというよりスポーツ的なものなのかも。平和になった世の中だからこそ、実力を見せる場がないからこういうのもあるのかな?


「私が見た最高の戦いは、さっき話した勇者物語の勇者の見た目をした人が剣に魔力を注いで魔法剣にする技を使った時ね。ちゃんと必殺技も叫んでてびっくりしたわ。しかも相手が勇者の仲間の魔術師を再現した人であの戦いは胸が熱くなったわ」


 なるほど。観客を魅了するっていうのはそういうコスプレ的な戦いをしても盛り上げられるのかぁ。思ったより奥が深そう。


「ほう。そんな娯楽があるとはな。リリアンナ・リリルよ。今度その大会に我を参加させるのじゃ。一瞬で優勝してやろうぞ」


 確かにキューちゃんは強そうだけど。


「んー、何かヘイムは初戦で負けそうなイメージがあるわ」


「分かるかも。相手を煽るだけ煽って負けそう」


「なんでじゃ! 我は最強の死神ぞ! そこらの人間なぞ敵ではないわ!」


 その発言がすでに負ける人のそれなんだよね。これはあながちかませ骸骨として物語に出されるのも間違ってない気もする。

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