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117 女子高生も新学年になる

 今日から新学期。晴れて2年生になれてクラス替えもあったけど何とかコルちゃんと同じクラスになれた。

 今日は始業式だから授業もなくて午前中でお終い。教室にはまだ人がそれなりに残ってて雑談を楽しんでる。私もその中の1人。


「つかれたー、やっと終わったわー」


「リンさん。別に何もしてないですよね?」


「いやいや。あのお偉いさんの話を座って延々と聞かされるのかなり苦痛じゃね? これだったら玉葱の収穫してる方がマシだわ」


 絶妙に分からない例えを出されると返答に困るんだけど。


「新入生も結構入ってたね」


「こんな山奥の学校に来る物好きもいるんだねぇ。通学だって面倒だろうに」


 コルちゃんの前でそれを言う度胸を尊敬するよ。気にしてなさそうだけど。


「新入生となると後輩になりますね」


「そういえばそうだね。けど部活でもしてないとあんまり関わりもないよね」


 先輩呼びはちょっと憧れるけどその願いは多分叶わない。どこか部活に入る予定もないし。


「そういえばさー、今日学校来て面白いことあったの聞いてくれない?」


 リンリンが誰かの椅子に座って急に真面目な顔をした。これは多分普通にネタ系。


「間違えて2年のクラスに入ったのでしょう?」


 コルちゃんの最速のつっこみ。実際ありえそうな失敗。私も1年のクラスに行きそうになったし。


「そんなヘマしないって」


「じゃあ何があったの?」


「ああ。実は靴箱の中にラブレター入ってたんだよ」


 リンリンがさらっと流すように言った。え?


「らぶ」


「れたー?」


 コルちゃんと仲良く変な声が出てる。ちょっと理解が追いつかない。


「あー先に言っておくけど私宛てじゃないからな? 多分卒業式の時に誰かが入れたんだろうよ。中身確認したら知らない子の名前書いてあったし。でも本人が気付かないまま卒業したから今日まで靴箱に残ってたんだろうよ」


 あーそういう感じかぁ。なんか安心してる自分がいる。


「それはそれで悲しいような」


 意を決して告白しようとしたのに気づいて貰えないまま卒業なんて一生後悔しそう。


「そうですよ、リンさん。人の恋路を面白いなんて言ってはいけませんよ」


「ちょっ、何で私が悪者みたいになってるし! 大体卒業式に告白っていうのがおかしいんだよ。仮にそれでおーけーもらえたとして進路とか就職先が違ったら結局疎遠になるじゃん」


 まるで恋愛マスターと言わんばかりにダメ出ししてる。言いたいことは分からなくもないけど。


「私としてはリンリンじゃなくてホッとしてるよ」


「安心しろ、ノラノラ。わたしゃ男とは縁がない星で生きてるよ」


 それは自慢していいことなのかな。


「でもさ、リンリンって普通にモテそうだと思うんだけどなぁ」


「えーないだろ」


「リンリンって言いたいことはっきり言うし、気さくだから相手も気を使わずに接してくれそう」


 褒めたつもりだけど本人にはあまり響いてないみたい。というか分かってなさそう。


「モテるかどうか何て結局ビジュだろ? それならコルコの方がモテそうだわ」


「あーそれは分かるかも」


 日本で染めてなくて白髪って珍しいし、それにコルちゃんは小さくてかわいい。

 守ってあげたくなるような初々しさがあると思う。


「そうでしょうか? ですが恋愛に関するような話なんて私にはありませんよ」


「うーん。なんでだろ? 頭はいいし、料理もできるよね」


「分かった。完璧過ぎて逆に萎縮してるんだよ。釣り合いにならないから高嶺の花扱いされてるんだろうよ」


 確かに高校生でここまで物腰が丁寧なのも珍しいかもしれない。


「ヒカリさんの前だと素が出るでしょ? きっと仲良くなったらそういう一面も見れて、ギャップ萌えすると思うよ」


「ノラノラ、そんな言葉どこで覚えた?」


「この前呼んだ雑誌」


 一度知った言葉は使ってみたくなる。


「じゃあ私から提案してあげるよ。まずリンリン。私としては髪型を変えるとよくなると思う」


「髪型ねぇ。今更変えるのも面倒なんだよなぁ」


 普段のポニテも可愛いけど、せっかくだから弄ってあげよう。髪を結んでる紐を外して櫛で梳いてあげる。気分は美容師。


「個人的に髪の毛を上で結ぶより下で結んだ方がかわいいと思う」


 いつもは髪を束ねて括ってるけど、うなじの下くらいで括るといいかもしれない。束ねずにゆるい感じで結んだ方がいいと思う。こうするとあら不思議だね。ゆるゆるポニーの完成。ストレートっぽくも見えるからリンリンの長い髪の長所も活きてるはず。


「こんな感じでどう?」


 手鏡で見せてあげる。


「いやいやいや。これは私には似合わないって! いくら何でもかわいすぎる!」


「答え出たね。自分でかわいいって言ってるよ」


「ノラさん、策士ですね」


 リンリンは髪も綺麗だし毛も染めるくらいしてるんだから、少し弄るだけで変貌できる素質あるんだよね。


「次コルちゃん」


「わたしも髪型を変えるんですか?」


 それもいいんだけど、コルちゃんに関してはそのままでも十分いい。それにセミロングくらいは下手に髪を弄ると逆に幼くなって子供っぽい印象が残るかもしれない。それは恋愛においてマイナス。


「コルちゃんはね、服の着こなしを変えるといいよ。もっとリンリンみたいに崩すといいよ」


「ノラさん本気ですか?」


 勿論本気だよ。ネタでも冗談でもなく真剣に考えてる。


「ブレザーのボタンは留めちゃダメ。インナーのシャツもちょっと崩して、後リボンの紐もゆるゆるにするの。結んでないってくらいでいいかも。なんなら垂らすくらいでいいと思う」


 勝手にコルちゃんの服を改造してあら不思議。さっきまでの清楚系美少女はどこにいったのでしょう。


「の、ノラさん。これはさすがに恥ずかしいですよ」


 手鏡で見せてあげたら顔を赤くして言ってる。やっぱり普段崩して着慣れてないからなのかな。私はよく崩すし、リンリンに至っては先生の前でも平気で崩してる。


「いい、コルちゃん? 相手を落とすコツはギャップだよ。こんなに清楚そうな子が服を真面目に着てないっていうのに殆どの男子はイチコロだよ」


「恋愛初心者とは思えん発言だわ」


 ずっと見てきたから、こうしたら可愛くなりそうって偶に考えちゃう。


「というわけだから暫くはそれで学校に来てね?」


「おい待て。そんな話聞いてないぞ」


「そうですよ。こんな崩して学校に来るなんて無理です」


「ダメダメ。せっかく新学年になったんだからイメチェンしないと」


 せっかくの力作を今日限りにするのは勿体無い。ここはごり押しするよ。


「だったらノラノラもイメチェンしろよー。私らだけとかズルいじゃん」


「いいよ。じゃあ好きに弄って?」


 それは私も思ってたし、それにどんな風にしてくれるか興味ある。


「ま、マジか。反抗すると思ってたんだけどな。コルコ、どうするのが正解だ?」


「……難しいですね。ノラさんの見た目はある種芸術点が高く天然物です」


 私は動物園にいる絶滅種の動物か何かなの?


「前はこんな感じでおさげにしたよ」


 手で髪を弄って見せてみる。


「うーん。やっぱノラノラは普段のじゃないと落ち着かないわ」


「それは思います。いつものノラさんじゃないノラさんは別人です」


 それは一体どういう理屈? これは寧ろ見た目変更が許してくれなさそうなパターン。


「いっそ髪を切るとか?」


 伸ばしてもいいけどショートにしたら印象変わりそう。


「それだけはやめろ!」


「断固反対です!」


 謎の抗議を受けたからこれも却下みたい。うん、これはどの案も通りそうにないね。

 南無三。


「ていうか、これでもし本当に誰かから告白されたらどうすんだよ」


「わたしはまだ男女の関係というのにイメージがありませんが」


「その時は私を呼んでくれていいよ。それで私の彼女ですって言ってくれていいから」


 実際告白までされる状況になったら私に関与できることなんてないだろうけど。

 そしたらリンリンとコルちゃんが私をじーっと見てる。んー?


「ノラノラ。頼むから悪い男には捕まるなよ?」


「困った時はおねえちゃんも呼びますからね?」


 何か急に態度が一変したけど何事? これは恋愛マスターじゃないと解読不可能だよ。

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