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103 女子高生も西都へ行く(1)

「うーん。今日はどこに行こうかな?」


 今日は定期テストだったから学校はお昼で終わったし、帰りに丁度異世界にも来れちゃった。時間も一杯あるしどこか新しいところに行ってみたいな。


 街を適当にぶらぶらしてたら前方に見覚えのある顔を発見!

 白い大きな尻尾のある子とピンク髪の綺麗なお姉さん!


「シロちゃんにミツェさんだ~。こんにちは~」


「ノララなのです! こんこんきつねです!」


「ノラ。こんにちは」


 2人も気付いてくれて笑顔を向けてくれた。今気付いたけど何だか意外なコンビな気もする。2人って接点あったのかな? それに2人共大きめの鞄を持ってるしどこかに行く感じかな。


「こんこん~。2人共荷物持ってどこかにお出かけ?」


「はい。シーシーさんが西都に帰省すると仰ったので付き添いに行こうと思ってるのです」


「西都って確か五大都市の1つの?」


 前にノイエンさんが少し言ってたのを思い出す。


「たまには~小鳥も~羽休めに帰るのよ~」


「その旅~付き添っても~いいですか~」


「あなたとなら~どこでも~嬉しいわ~」


 ミツェさんの許可が下りたからこれは一緒に行ってみよう。前に東都に行ったからきっと西の都もすごく栄えてるんだろうなぁ。これは楽しみ。


「ノララはそのままで大丈夫です? 西都は森の中なので軽装だと危ないのです」


「そうなの? でも今から家に帰ってたら間に合わないしなぁ」


 こんな機会めったにないから今日は絶対に行きたいし。


「大丈夫。森の中だけど魔物もいないし、木々も精霊も人の味方だから」


 ミツェさんが小声で言ってくれる。まだ普通に話し慣れてないのにそう言ってくれるのは2つの意味でうれしい。


「よかった。じゃあこのままでも大丈夫?」


 ミツェさんがコクンと頷いてくれた。


 そんな訳で早速出発。央都の西の門を出て行って、スライム街道を歩いて行く。

 その先にある森の中に入って、前にレティちゃんと一緒に行った村を素通り。

 ここまでは私も知ってる道。問題はここから。未開のジャングルの中をミツェさんが先導しながら進んでくれてる。


「シロちゃんは西都に行ったことあるの? 因みに私は初めて」


「私も初めてなのです。だから今からわくわくしてるのです。パンの材料になる食べ物を買って帰りたいと思うのです。それに……」


 急にシロちゃんが物思いにふけった感じで遠い所を見てる。


「それに?」


「実は私の幼馴染が西都にいるって噂を聞いたのです。だからもし会えたらいいなって思ってるんです」


 へー、シロちゃんの幼馴染かぁ。ということはケモミミさんだね。


「仲良かったんだね」


「よかった、かは分かりませんがよく実家のパン屋に来てくれました。それでよく話しかけてくれました。恥ずかしがりやだった私はあの子に声をかけられても隠れてばかりで……。それでもあの子は気にせずよく来てくれたのです。けどある日、急に村からいなくなって、それでお別れも言えないままだったのが少し心残りなんです」


 それは確かに切ない……。シロちゃんは魔力なしだったから村でも窮屈だったって前に言ってたから、きっとその子の存在は特別だったんだろうね。でもそんないい子が何も言わずに出て行くものなのかなぁ。


「そういえばシロちゃんの故郷の村は毎年皆が帰ってくるんだよね? その時に会えなかったの?」


「うぅ、どうしてか帰郷祭にも姿を見なかったのです」


「それって何かあったんじゃ……」


「それは多分大丈夫だと思うのです。あの子は急に思い立って勝手に行動する性格なのです。きっと何かやりたいことを見つけてそれに没頭してるかもなのです」


 それは中々癖のありそうな子だね。


「西都に行って会えるといいね」


「はい」


 それで森の中を歩いてたらミツェさんが足を止めた。目の前には大きな樹木……いや、これ大きいってレベルじゃないんだけど。巨大、ううん要塞? まるでお城みたいな大樹が道を塞いでて、でも木の根の間に人が歩いて通れるようなトンネルの穴があった。ミツェさんがそこを指差した。


「ここを越えたら~故郷の中~」


 そう言ってミツェさんが大樹の中に歩いて行く。何か緊張しちゃって、シロちゃんと目があった。それで2人で一緒に大樹の中に入っていった。


 中は緑色に明るくてジメジメした感じもなかった。周囲は小枝で覆われててまるで枝で造った木箱の中にいるみたい。それに空気中に緑色の点々みたいなのが浮いてる。明るいのこれのおかげ? 試しにツンツンしてみるとふわふわしてどこかに飛んで行っちゃった。


「ここは神樹の加護があって、多くの精霊が住んでいます。この緑色の点は全て精霊なんです」


 ミツェさんが教えてくれる。精霊なんて本の中でしか聞いたことないよ。


「ほえー、そうなんですね。精霊を見るのは初めてです」


「私も初めてなのです!」


 精霊って聞いたらこの緑の点々さんも可愛く見えてきた。


「本当はここのトンネルを開通させるのも反対派が多かったんです。神樹に傷をつける者には天災が下る、と。西都の古い教えです。ですが外交が盛んになりつつある近年において、いつまでも閉鎖社会でいるべきでないという考えも徐々に増えてこの道が出来ました」


 この大樹はそんな大層な物だったんだね。確かにこんなに大きかったら神様が宿ってても不思議じゃないかも。


「その考え、少し分かる気がするのです。私の村にも神様がいるのですけど、神様を怒らせたら死後の先まで祟られるって言うのです」


「私の国でも末代まで祟られるって言うなぁ」


 やっぱり神様を怒らせるようなのはダメなんだろうね。でもそうなったらこの大樹を開通させて結構させたのってかなり度胸があったと思う。


「ここに穴を開けた人はすごい身分の人だったんですね」


 そしたらミツェさんがクスッと笑った。あれ、何か変なこと言ったかな。


「違いますよ。ここの穴を開けたのは紛れもなく神様そのお方です」


「えぇ!?」


 まさか神様本人の意思だったなんて。


「神も~閉鎖な箱の中で~退屈だったのよ~」


「西都の神様って~破天荒だね~」


「私もそう思うわ~」


 そんな感じで他愛ない話をしながら歩き続けて多分1時間は経ったと思う。なのに一向に出られる気配がない。外から見ても相当な幅だったから当然中も広いとは思ってたけど。


「ミツェさん。後どれくらい歩かないとダメ~?」


「見えてきたわ~」


 ミツェさんが指差すと白い光が大樹の中に入って来てた。陽の光と思ってたけど多分違う。大きな白い点が見えたから白い精霊さんが宙に飛んでいったんだと思う。そしたら向こうに出口が見えてそこを出たら……。


「わぁ!」


「ここが西都なのです!」


 出口の先には木を家にした建造物がいくつも並んでた。空は全部木の葉っぱで覆われてて完全に緑の世界。街のあちこちに可愛い小さな若木があって、そこには実がいくつも付いてた。それを小さな子供達が取って食べては元気に走り去っていった。自由に取っていい感じ?


 ミツェさんが私の見てたのに気付いたみたいで木の実を千切って渡してくれた。


「ここだと街にある実は自由に食べていいんです」


「えー、すごい」


 せっかくだから貰ったピンク色の実を食べてみる。想像以上に酸っぱい!

 そしたらミツェさんが笑ってた。


「自由に食べれる分、味はそこそこです」


 まぁそうだよね。これで美味しかったら悪い人が全部盗んでいきそうだし。


「お。シーシーさんじゃねぇか。帰って来たんだな」


「歌姫さんが帰って来た!」


「ミッツェルさんが帰って来たぞー!」


 なんかミツェさんが街の人にめちゃくちゃ歓迎されてる。盲目の歌姫って呼ばれてたくらいだし、やっぱり故郷でも有名人なんだね。


 当の本人は恥ずかしさで赤面してるけど。


 それでミツェさんが私の袖を掴んでくる。あれ、どうしたのかな。


「ノ、ノラ。私を匿って……! このままだと街の人皆集まって……」


 ミツェさんが手で顔を隠して今にも卒倒しそうな勢い。うん、地元でもミツェさんはミツェさんだったね。


「シロちゃん、あっちに走ろう!」


「わわわ、待ってくださいなのです!」


 今度の街はどんなわくわくが待ってるのかな。楽しみ!

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