3-13 北の国から ②
「これがドワーフの国か……」
さぁ、やってまいりましたドワーフの国。西を見ても東を見てもドワーフばっかりでございます。
国と言っても幾つかある集落の一つと考えたほうが良い。だからここに居るのは一万人程度だと言う話だけど、パッと見はちょっと大きめの村という感じだ。
なのでそこに住む人達は千人程度。では、残りはどこにいるのかと言いますと、みなさん地下に街を作っているらしいのです。
どうやら、そこがダンジョンらしい。
それじゃあ、みんなダンジョンの存在を知っているのかと言うとそうでもなく、周辺の人間国家は、その街をドワーフが掘った物だと認識している。
イメージって恐ろしいね。私も知らなかったら、普通にドワーフが掘った物だと思うかも知れない。
ダンジョンを不法占拠しているって感じ? でもそのおかげでダンジョンを攻略されずに済むならダンジョン側も悪くないのかも。
それにしても……
「見られているわね」
「見られていますわね」
「目立っちゃってますね~」
ボソッと呟いた私の言葉に、ティナとニアが相づちを打つ。
表面の村っぽい部分は“玄関”的な役割なので、良く見ると人間の姿も見かける。
そんな場所でも、騎士やメイドを連れたお嬢様っぽい女の子が馬車にも乗らずに現れたものだから、ドワーフの住人達はチラチラ私達に視線を向けていた。
「それはそうと、ドワーフって違いすぎない?」
違うというのは、ドワーフの男女のことです。
ドワーフの女性達は、コロナと同じようにみなさん“ロリ”だ。子供はただサイズが小さくなっただけ。
年配の人は雰囲気で何となく、お年寄りだなぁ……って分かるんだけど、外見はそんなに変わらない。多分良く見ると小皺とかあるんでしょうけどね。
もしかしたらコロナも、それなりにいい歳なんでしょうか?
見かけは十~十二歳くらいでもギルドマスターなんてやっているから、三十は超えていると勝手に思っていたけど、五十でもおかしくないんだね。
まぁそんな感じに女性はロリなのに、男性はいきなりおっさん臭い。
髭がぼうぼうでガッチリした体格は、良くファンタジー物語で見る“ドワーフ”そのものなんだけど、とてもロリと同じ種族には見えなかった。
「もしかしたら、髭を無くせば若いのかも知れません」
「むしってみるぅ?」
そんなティナとニアの会話が聞こえた訳ではないと思うけど、二人が軽く視線を巡らせると、その周辺にいた男性ドワーフたちが一斉に離れていった。
それでも私達に向けられる視線は減らない。
私はいつもの黒銀ドレスで、一応、丈を足首からふくらはぎ丈にしてあるけど、やっぱり貴族っぽく見えるのかな?
「あ、あの……」
「なんでしょう?」
一人のドワーフ女性がおっかなびっくり話しかけてきたので、私は出来るだけ威圧しないようにニッコリと微笑む。
「そちらの方は、ご病気ですか?」
「へ…?」
彼女の視線を追うと、そこには白目を剥いて気絶したままの大地と風太が、無残に放り出していたままだった。
「酷いって、師匠っ」
「……死ぬかと思いました」
「ん? 死んでないならいいじゃない」
大地達から師匠と呼ばれているのはニアだ。彼らに城の騎士達もドン引きな戦闘訓練をしているうちにそう呼ばれるようになったらしい。
どこら辺がドン引きなのかと言うと、一日に二回は私が神聖魔法で再生してあげないとやばいくらい。
逆にそこまでやられておきながら、まだ精神が崩壊してないだけ、二人はかなり成長していると言っていい。
そんな二人でも、生きているから問題ない的なニアの言葉に顔を青くしていた。
ふむ……もう少し鍛える余地があるか。
「それでは二人のお買い物に行きましょうか」
「え? 買い物って、俺達の?」
「なんでしょうか……」
二人のことに関してはあまり口を挟まない私が声を掛けたことで、大地はともかく風太は警戒した表情を作る。
「大丈夫よ、私だって鬼じゃないんだから」
悪魔ですけど。
「……ならどうして突然?」
まだ腑に落ちない顔をしている風太に、私は簡単に説明する。
「ドワーフと言えば高品質の武器が定番でしょ?」
そうして私達は地下街のほうへ足を向けた。
地下への入り口は数カ所開いていて、イメージ的には地下鉄の下り口に近い。
地下でも人が住んでいるのだから、ある程度の光源はあると思っていたけど、思っていた以上に明るかった。
昼間のような明るさではないけど、床や天井がほんのり光っていて目が慣れてくれば普通に動ける程だ。
後から建てられた住居なんかは光ってないから、ダンジョンの機構的な何かかな?
私は適当に言っただけだったんだけど、やっぱりドワーフは細工物や鍛冶が好きらしい。地上側にも武器屋はあるけど、チラリと見た印象だとどうも“土産物屋”的な感じがしたので、そこの店員さんに聞いてみると、実用的な武器は地下街のお店で売っていると教えてくれた。
どうして突然、二人に武器を買ってあげようかと思い付いたのかというと、二人の装備がしょぼかったからです。
一応はセイル国から支給されているんだよ? でも今二人が装備しているのは、一般的な騎士見習いの装備で、お世辞にも勇者が着けるものじゃない。
実際、勇者とは認められなかったし、某ゲームみたいに、勇者に木の棒と布の服だけで放り出す王様より数百倍マシだけど、武器なんてただの鉄の剣なんですよ。
お城の工場を見せて貰ったけど、あれは酷いと素人の私にも分かる。
剣の形をした鋳型に鉄を流し込んで、それを適当に叩いて形を整えて研いだだけだから、製鉄技術がちゃんとある、現代のホームセンターに売ってるバールのような物のほうがマシに見えた。
せめて中古でもいいから魔力剣でも支給してくれればいいのに、妙なところでケチなんですよ。大国のくせに。
それでもノアに任せれば凶悪な【魔剣】にしてくれると思うけど、そうなると新兵に初陣でバズーカ持たせるようなものだから、それも危ない。
そこで折角ドワーフの国に来たのだから、そこそこ良さそうな剣を買ってあげようと思ったのです。
「ここね」
「でっけー……」
「……デパートみたいですね」
街の住人から聞いてお勧めの武器屋まで来てみたら、小さな砦ほどの大きい建物がそこにあった。
奥からガチンガチンと金属を叩く音が聞こえるから間違いはないでしょう。
「それじゃ中に入りましょ」
「わかった」
「……俺達、お金はあんまりありませんよ?」
「大丈夫よ。奢ってあげるから」
「いいのかっ?」
「うん、平気」
お金はそこそこ持っている。
まぁ、何と言いますか、この世界では【聖魔法】と言う神聖魔法と同系統の魔法はあるけど、私のように頭皮の治療が出来る人は居ないのです。
「へぇ……品揃えは良いのね」
中に入ると家電量販店のようにずらりと武器が並べられて、店内のあちらこちらでドワーフ女性の店員が接客していた。
でも手前の品は悪くはないけどそんなに良くもない。どうやら奥に行くほど品質が高い物が売っているみたいなので、先に進むことにした。
「お客様、どのような物をお探しでしょうか?」
貴族っぽい私が居るので、早速店員さん(ロリ)が話しかけてくる。
外でもそうだったけど、ドワーフの人はあまり私に怯えない。コロナの時はギルドマスターだから怯えないのかと思っていたけど、どうやらドワーフという種族はあまり視力が良くないらしい。
……こんな暗いところに住んでいたら、目も悪くなるか。
「人間の軟弱で貧弱な男の子が使える剣が欲しいんですけど、ありますか?」
「……軟弱…」
「……貧弱…」
大地達が何か呟いていたけど私は気にしない。
「ええ、ございますよ。通常剣と魔力剣とございますが、どちらを、」
『何でこんなに高いのよっ!!』
突然、お店の奥から大きな声が響いた。
「………なにあれ?」
「申し訳ございません……常連の方なのですが」
尋ねてみると店員のおねーさん(でもロリ)が困った顔をする。
普段なら、どこにでもそんな客は居るのだと流すところだけど、私は少しだけ気になった。イントネーションは女性なのに、その声は男性だったのだから。
「ごめんなさい、少し奥を見せていただきますわ」
「お客様っ、」
騒ぎのほうへ向かおうとする私に、店員さんが慌てて声を掛けたけど、私はそのまま奥へと向かった。
次回は、勇者との邂逅





