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悪魔公女Ⅱ ~ゆるふわアクマ旅情~【書籍化&コミカライズ】  作者: 春の日びより
第二部 第三章・勇者の国 【異世界テス編】

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3-09 冒険者になりました ①

 ほのぼのパートです。

 



 前略、聖王国(タリテルド)のお父様、お母様、お元気でしょうか。

 私がそちらを旅立ってから、早いものでもう一年以上が過ぎました。

 私がいるこのセイルは聖王国と良く似た気候で、私も変わらずに過ごしております。

 しばらく城の上級エリアから出ることを許されなかった私ですが、ようやく城下町に下りる許可が出たのです。

 そんな訳で(どんな訳で?)ユールシアです。


「まぁ、姫様、良くお似合いですわっ」

 鏡の前で佇む私に、二十代半ば程のお姉さんが嬉しそうにそう言った。

 最近になって私にもセイル国から数人の侍女が付けられた。本当は【英雄クラス】と判明した者は初日から付けて貰えるらしいんだけど、私の場合、最初にちょっとやらかしたせいか若干恐れられていたのと、そもそもノア達従者を最初から引き連れていましたから、延び延びになっていたのです。

 まぁ、付けられた侍女達も、監視員としての役割を持っていると思うから、同じように侍女を付けられたあの地球から来た四人にも、信用はしても信頼はするなと伝えているけど、侍女達の態度は意外と好意的だ。

 この世界は数千年も【異世界の勇者】を召喚して頼りにしてきたので、私達は憧れを持たれる存在なのでしょう。


 でもこの数ヶ月、図書館で文献などを漁っていたけど、少々おかしな事が分かった。

 この世界に召喚される日本人は千年前なら、ちゃんと平安時代の日本人が召喚されていた記述が残っている。つまりは、地球でもアトラでも、この世界【テス】でも時間の流れは変わらない。

 でも勇気くんは、殺された時より12年も過去の日本に転生し、キョージは時代こそそのままだけど、十歳以上――たぶん12歳ほど若返っている。

 十二……。私にかけられた【十二刻の砂時計】と言う術式で、そうとう時空が歪められていたせいかも。

 そこで私は、城下町に下りて異世界人の影響がどれほど出ているのか調べてみようと思ったのです。

 ……すみません。色々言いましたが、ただの暇つぶしです。

 だって、折角テンプレ的な異世界に来たんですもの、観光ぐらいしたいですわっ。

 そう言う訳で、ずっと街に行く許可を申請していたのですが、ようやく許可が下りました。

 私達だけなら、こっそり城を抜け出してこっそり戻るのも考えましたけど、出来れば日本のあの子達を連れて行ってあげたいじゃないですか。

 許可がやっと下りたのは、私が従者達をあちこちに送って色々と有名になってきたので、幽閉しておくのが対外的に難しくなってきたからみたいです。


 でも、街に連れて行けるのは二人までと言われた。従者達もだけど、あの四人もね。どうやら、私をこの国に縛り付けるためにはあの四人が必要だと考えているみたいで、全員だとそのまま国を出奔しかねないと思われている。

 信用無いなぁ……。(自覚無し)

 まぁぶっちゃけ、この国以上に良いところがあったら、移動しても良かったりする。でも居てくれと頼まれている訳だから、仕方なくこの国を内側から浸食しています。

 でもまぁ、やることはキョージのやった事と大差ない。

 表向きは勇者じゃないけど勇者級の力を示して、地位と信用を勝ち取る。キョージは裏社会にも手を出している感じだけど、私は聖王国でもやったみたいに吸血鬼でも使って支配させようかしら……。


 また盛大に話が逸れました。

 要するにこれから街にお出掛けですが、【黄金の聖女】なんて恥ずかしい二つ名で出掛けると、アイドルのゲリラライブが始まった某繁華街並になると燈火達に言われたので、お忍びで出掛けることになったのです。

 えっと……私って一応、他の異世界人って設定なので、地球の地名とか知ってるのを前提で話されても反応に困るんですけどー。


「どこもおかしくはないですか?」

「ええ、姫様は腰の位置が高いので、何を着てもお似合いになりますわ」

 そう言う事じゃなくて、ちゃんと街に出てもおかしくない格好か聞きたいんだけど、侍女さん達は私を着せ替えするのが愉しいみたいで、あまり話を聞いてくれない。

 それとこの国にもお姫様のビアンカが居るのに、私を姫とか呼んでもいいの? そう聞いてみたら侍女のお姉さんは、

「殿下は殿下ですので、ユールシア姫様は姫様ですわ」

 ……と、訳の分からない返しをされた。

 またあれですか? 微妙に“姫様”と言う単語に憧れを持たれる感じですか?

 今回、街に下りる面子は、私とニアにティナ、そして燈火と瑞樹の二人という女の子ばかりのメンバーです。

 アニマル(リンネ)達は闇の勢力側でなんか色々やっているみたいで、今回は付いてきていません。摘み食いに行っただけなのに、ホントに何やってるんだろ……?


   *


「ここが王都の街……なんですね」

 人気のない場所で馬車から下りて、通りに出ると初めて見る異世界の街に瑞樹は感動したようにそんな呟きを漏らした。発言だけ聞くとただのおのぼりさんだ。

 白い建物が並ぶ街並みは地中海っぽい。実際に海も近いのでそんな印象です。

 歩いている住人達はやっぱり白人系が多いけど肌の浅黒い人や黄色系も少ないながら居た。それでも髪の色や眼の色に若干の違和感を感じるのは、やはりここが異世界だからでしょうか。

 そんな違和感を感じるのは住人達も同じようで、若い女の子五人組にチラチラと視線を向ける人も居た。主に男性。

 そんな視線が気になったのか、燈火がこそっと声を掛けてくる。

「……ねぇ、ユルちゃん。私達の格好、おかしくないよね?」

 そして何故か、ここでも『ユル』と呼ばれはじめた。

 君達はここでも私をユルユルにしたいのか……そんな思いは顔に出さずに私は服装を気にする燈火に軽く笑いかける。

「大丈夫だと思うよ? 見られているのは、燈火達が可愛いからだよ」

「ユルちゃんに言われてもねぇ……」

 確かに形状が整っているのは認めるけど、私達【悪魔】の外見は慣れないと怖いんじゃないかなぁ。

 燈火と瑞樹は普通に可愛い。若干顔は平たいけど、この世界も異世界人の血が微妙に混ざっているのか偶に薄い顔立ちの人も見かける。

 瑞樹は私より年上だけど、私よりも背が低くて小動物っぽい印象なのにスタイルはかなり良いので、瑞樹が訓練で動くたびに騎士達の視線がわずかに上下しているのを私は知っている。

 燈火は少しツリ目の気の強そうな顔立ちをしているけど、全体的には整っているので、きつさよりも美人っぽい雰囲気がある。どこまで地球の文化が浸透しているのか知らないけど、城の誰かが燈火を見て『ツンデレキタコレ』とか言っていた。


 今回の服装だけど、燈火達は初級冒険者の女の子っぽい格好にしている。ただし、城から用意された物だから、そこそこ裕福な都会の子みたいな感じです。

 私は前にやったみたいに、裕福な商人の娘みたいな格好です。ちゃんと顔を隠すための鍔が広い帽子も用意している。

「……出来ればあなた達も着替えて欲しかったけど」

「え~……私、この剣を持ってこないとかあり得ませんしー」

 ニアはいつもの護衛騎士の格好です。騎士と言っても鎧を着込んでいるのではなく、簡易礼服みたいな感じ。

 ちゃんと女戦士っぽい格好も用意してもらったんだけど、それだと【黄金魔剣(ニヤンコけん)】が浮きまくるのよね。それでしかたなくいつもの格好にマントを羽織っている。

「私は面倒なので」

 そう言ってきたのはティナだ。そこはウソでも良いから侍女としての誇りがあるとか言おうよ……。

 二人の格好は街中では浮くかなぁ……と思っていたけど、王都だからか貴族の屋敷も多く、騎士やメイドはそれほど珍しくないのか、服装で目立つことはなかった。


 ……今更ながら、この二人が一緒なのは不安を感じるわ。

 ニアは放っておいてもある程度は常識を持った行動をしてくれるけど、そこに私が絡むと突然見境が無くなる。一番無害だけど一番手が早い。

 そして見境のないことに掛けては定評のあるティナである。言い含めておけば私の獲物には手を出さないけど、それ以外は気がつくと、すれ違った数秒後にチンピラが死んでいたりするので偶にビックリさせられる。

 今回のメインであるあの目的地だと人選を間違ったかも知れない。

 一応、お城から騎士が数名護衛に就くと言われたけど、丁重にお断りしたのは正解だったかも。何かやらかした時には目撃者は少ないほうが良い。

 それでも監視したいのか無理矢理にでも付いてきそうな雰囲気だったので、ニアに勝てるのなら良いよと譲歩したら、皆さん諦めてくれました。

 騎士達は訓練で、ニアが(不器用で)手加減が苦手なのを知っているからね……。


「ねぇねぇ、ユルちゃん、燈火ちゃん、あの屋台は何かな? いい匂いがするよ」

「あ、ホントにいい匂い。お肉焼いているのかな?」

 瑞樹が通りにある屋台を見ながら愉しそうに声を掛けてきた。

 普段はそんなに興味がない物でも、観光地に行くと食べたくなる感じは分かる。

 私は悪魔ですから、じゅわっと焼ける脂に何の魅力も感じません。

「二人とも食べてみる? 何事も経験よ」

「う~ん……」

「でも……私達の“言葉”ってちゃんと通じるのかな……」

「大丈夫よ。お城の人にも通じてたでしょ?」


 この世界の言葉はもちろん日本語ではない。

 私達悪魔は【神霊語】を使えるので自動翻訳されるけど、彼女達の場合、この世界に来た時に【公用語スキル】を会得していた。

 これは神霊語と違って、この世界の公用語を母国語のように使えるスキルで、最初私と話していた時は日本語だったけど、ビアンカの言葉を聞いて自然とテスの公用語に切り替わったらしい。

 思っていたよりスキルって便利ね……。でもさすがに、このシステムをアトラに持って帰るのは無理そう。


「私、買ってくるっ」

 大人しい外見だけど、意外とチャレンジャーな瑞樹がそう言った。

「私もそうしようかな……ユルちゃん達はどうする?」

「私達は結構よ。行ってらっしゃい」

 そして外見に似合わず、若干内弁慶的な燈火に私がニコリと微笑むと、二人は恐る恐るといった感じで屋台のおじさんに近づいて声を掛けた。

 数分後……

「ユルちゃん、買えたよ~、通じたよ~っ」

「うん、初めて食べるって言ったら、安くして貰っちゃったっ」

 興奮した感じの二人が、手にお肉の焼き串を持って戻ってきると、嬉しそうに報告してくれた。

「うん、二人とも良かったねぇ」

 何故、一番年下の私が保護者的位置なのでしょう……。

 でも何事も経験とは言え、二人は本当にチャレンジャーです。

 ……まさか、屋台の端っこに書いてある『オーク肉』の文字を読まなかったとか無いと思うけど、現代の女子高生は人型の肉も平気なのか。

 元はオークだから筋張っているのか、ミンチにして木の棒に巻き付けて焼いた物を、彼女達が食べ終えるのを待ってから私達は目的地に移動した。

 そこが今日のメインである“冒険者ギルド”なのです。


 ……やっぱり絡まれるかしら?


 

 

 

 次回、ギルドでのテンプレは来るのでしょうか?


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― 新着の感想 ―
ふたりはオークが何だか解らなかった可能性もある、かなあ? 最近のラノベやゲームは、序盤の雑魚がゴブリンだし。昔はオークだったのにねえ。
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