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悪魔公女Ⅱ ~ゆるふわアクマ旅情~【書籍化&コミカライズ】  作者: 春の日びより
第三部 第四章・【奈落編】

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4-12 待ち受けるモノ

また徐々にシリアスになります。



 悪魔崇拝者達を操っていた“誰か”が居たような気がして、その“誰か”が残していた羊皮紙には、シルベルタルが隠したモノの位置情報が記されていた。

 ローズが蚊の鳴くような小さい声で『…もう忘れてる』とか呟いていたけど、私には何のことだかさっぱり分からない。


「それはそれとして、正確な位置は分かった?」

『うん。だいぶ絞り込めたわ。アイツもいつか取引材料に使えると考えて、ある程度の絞り込みは出来ていたみたいね。多分だけど……』

 ローズが鼬の爪を使って地面に簡単な地図を書く。

『ここが今の位置で、私達が最初に落ちたのがここら辺。それで私達が最初に勘だけで感じていた“魔素の泉”がここら辺……』

「……結構進んだつもりだったけど、まだ半分も来てないのね」

『魔界もそうだけど、この奈落(アビス)でも距離感はあまり気にしないほうがいいわ。はっきり言ってユールシア様と一緒じゃなかったら、私の魔力だと、ここに来るまでだって数倍の距離に感じていたはずだから』

「ふ~ん……」

 知らなかった……距離感って魔力で変わるのか。

 まぁ、プロペラ機とジェット機で到着時間が変わるようなものか…と納得してローズの話の続きを聞く。

『感覚で言うと、魔素の泉があると思っていた場所とだいぶ範囲が被るわね。ここからここら辺』

「……随分と範囲が広いのね」

『仕方ないでしょっ。魔素の泉の場所だって曖昧なんだから。でもおそらく、その魔素の泉そのものを使って何かを隠している? ……ううん、“何か”を封じているのかもしれない』

「面倒事の予感しかしないわ」


 あのシルベルタルがわざわざ奈落(アビス)の、しかも奈落(アビス)の魔素が集中する“魔素の泉”まで使って封じているモノなんて、どう考えても『内緒のポエム日記』なんかじゃないほど禍々しいモノに決まっている。

 それはそれでアレを激怒させる切り札にはなるかもしれないけど、私はそんな愉快なモノを求めているわけじゃない。

 でも本当にそれが、あの光の精霊王さえも使役する邪神さえも生易しく感じる存在に対する“切り札”に成り得るのなら……


『魔界に戻るための“魔力の泉”があるのなら、結局行くしかないのよね…』

「そうなのよねぇ……」


 そこに何かあるとしても、現世に戻るためには魔界に通じる魔素の泉に向かうしかないので、知ってしまったからには無視するのは精神衛生上よろしくない。

 初めから私達には、それ以外の選択肢はない。

 今は弱体化している私やローズが本来の力を取り戻したとしても、私とシルベルタルには明確な力の差が存在する。

 私とリンネが力を合わせれば、ギリギリでも太刀打ちできるかと考えていた時もあったけど、シルベルタルが光の精霊王を使役している時点で、私と同じくらいの悪魔が数体居ても勝ち目は薄いと考えている。

 はぁ~~~……我ながら、なんであんなのに喧嘩を売ったのか……と、顔には出さないけど、心の中で溜息を吐く。


 でも、シルベルタルは『明るいほうが好き』とかとんでもない理由で、世界から夜を奪おうと考えている。そうなれば気温は上昇して植物は枯れ、数年で生き物の住めない砂漠と海だけの世界になってしまうだろう。

 お父様もお母様も、私が大事に思っている人達が全員死ぬ。

 それだけじゃなく、今も戦い続けている従者達や、シルベルタルに単身挑んで戦い続けているリンネを私は絶対に見捨てない。


「……こっちに来てから、どれだけの時間が経ったっけ?」

『正直分からないわ。こっちに来てからの体感だと数日だと思うけど、実際にはこれも魔界と一緒で、現世では1時間しか経ってないかもしれないし、何年も過ぎているかもしれない』

「それはマズいね……」

 私が魔界にいた頃は数年いた感覚でいたけど、現実から計算すると数ヶ月しか経っていなかった。なので今回も急いではいたつもりだったけど、そこまでの危機感は持っていなかった。

 そんな想いが顔に出ていたのか、皮肉屋のローズが珍しく励ますような言葉を私にくれる。

『大丈夫よ。あいつら普通じゃなく強いし、それにユールシア様が強く願えば時間だって変えられる。あなたも魔界の神の一柱(ひとり)なのよ?』

「うん。頑張る」


 強く願う。それを意識したせいだろうか、ただ歩いて進んでいたときよりも早く移動できているような気がした。

『ちょっと、ユールシア様、速いっ』

「あ、ごめんっ」

 私と一緒の速さで移動できているはずのローズが付いてこれなくなっていた。

 意識しすぎたせいで脚が速くなったからだと思っていたけど、それにしても何かおかしい感じがする。なんだろ……これって…、

「向こう……」

『え、なに?』

「向こうに何かある気がする」

 奈落(アビス)の荒れ地しか見えない地平線の向こうから、何かが“呼んでいる”気がした。

『……私には分からないけど?』

 そちらの方角に顔を向けていたローズが不思議そうな顔で私を見上げる。

「ローズには分からない?」


 何が切っ掛けでそう感じるようになったのか……?

 私が目的地に近づいたから?

 そこに何かあると意識したから?

 現世で待っているみんなのことで気が急いたから?

 理由は分からない。その一つかもしれないし、その全てかもしれないし、全く違う理由かもしれない。

 でも……

『きゃっ!?』

「ごめん、ローズ。急ぐよ」

 私に付いてこれそうにないローズを鷲掴みにしてから襟巻きのように首に巻いて、魔力を放出するように足を踏み出した。

 ズズズズズズズン……ッ!!

 今まではシルベルタルに万が一でも気取られることを恐れて、出来るだけ気配は消していた。

 でも魔力を解放した今、固定化されていた岩山や荒れ地が鳴動して、私が進む道を開きはじめた。

『どうしたのっ!? 何があったのっ!?』

 首に巻かれたローズが驚いて声をあげる。


 私を“呼んでいる”モノは何なのか?

 どうして私を呼んでいるのか? シルベルタルが封じたモノと同じものか、それとも全く違うものか分からない。

 もしかして私を破滅させる罠かもしれない。でも……“予感”があった。

 今まで運と偶然と諦めない根性だけで進化して、それをリンネや自称兄を名乗る魔神に知識をもらって補っていたけど、その繋がりが絶たれた奈落(アビス)で、私は本来持つ悪魔の感覚が、“呼ばれている”のと同じくらい強く“行くべきだ”と感じていた。

 その感覚を信じて進んでいると、それを感じられなかったローズも周囲の異変に気付きはじめた。


『……暗くなっている?』

「そうね……」

 光もなく闇もなく、精霊の力が全く届かない魔界や奈落(アビス)では、見える光景の全てがまやかしで、気が遠くなるほど永い間蓄積されたイメージでしかない。

 それなのに進むたびに辺りが暗くなる。月のない森の中で静かに夜が忍び寄ってくるように、徐々に自分の周囲しか見えなくなる闇の中で、不可解な状況に不安を覚えるローズの頭をポンポンと叩いて宥めながら進むと、闇の中に果ての見えないほど巨大な岩壁がそそり立っていた。

『……行き止まり?』

「違う……」

『ユールシア様、それっ!?』

 ローズが指摘した私の指先に、小さな光の粒子がこびり付いていた。

「これって……」

 この魔力……ううん、この“精霊力”には覚えがある。

 これは、シルベルタルの戦いの最後で彼女が呼び出し私にとどめを刺した、光の精霊王……【八百万灯火(やおまとび)】の残滓だった。

 あの存在が私をここまで導いた? それともこの残滓を持つ私を、ここに居る何かが呼び寄せた?

 その光の残滓を擦りつけるように、手で岩壁に触れる。すると……


 キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィン……ッ!


 音叉を鳴らすような悲鳴の如き『音』が鼓膜を振るわすように響いて、周囲の景色が罅割れるように砕けて完全な闇が支配する。

 何もない……何も見えない。でも……そこに何かがいた。


 気配もなく姿も見えず、それでも世界を覆うような圧倒的な存在感……。

 その瞬間、私はその存在の正体を理解した。

 光と闇。光があるからこそ闇が生まれ、闇があるからこそ光を認識出来る。

 表と裏。表裏一体。常に同時に存在する同一でありながら別でもある、世界の昼を司る【光の精霊王】の対にして、世界の夜を司るモノ……


「……【闇の精霊王】……」




次回、現れた闇の精霊王。それが求めるものとは? そしてユルの決断は?


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― 新着の感想 ―
光さん(誰だ!?)に対する人質? かと思いもするけど、精霊って乙女ゲームの方を読んでると「人質?何ソレ?」な気もする!
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