表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第4章 ノールト国編
87/380

第83話 氷龍VS魔法少女①

 翌日。ついに、私達は敵を戦うことになる。

 アティカの町を出て、変身し、雪道を抜ける。

 木々のせいで、中々敵の全貌は見えてこない。


「念のため、いつ敵が襲って来ても大丈夫なように、きちんと武器を構えておいて下さい」


 沙織の指示に頷き、しっかり武器を構える。

 森の中は人通りが少ないのか、雪で足を取られる。

 だから、木の枝の上を飛び、枝から枝へ飛び移り、移動する。

 フラムさんの話だと、もうそろそろなんだけど……。


「一番乗り!」


 その時、前を移動していた明日香がそう言った。

 木の枝から雪に落下し、着地する。

 彼女はそのまま前方を見ると……固まった。


「明日香?」


 名前を呼びながら、私も雪に着地する。

 それから顔を上げ、目の前にいる生物を見る。

 次の瞬間、私は息を呑んだ。


「……ドラゴン……?」


 それは、ドラゴンだった。

 いや、うん。ドラゴン以外の言葉が出てこないくらい立派なドラゴン。

 体を包む鱗は青色で、口から洩れる息は青白い。

 瞼は固く瞑っており、寝ている様子だった。


「……これが……今回の、敵……」


 私はそう呟き、薙刀を握る力を強くした。

 三人もそれぞれ武器を構え、警戒する。

 敵は油断しているのか、未だに眠ったままだ。


「後衛は私に任せて、三人はまず攻撃を仕掛けて下さい! 突然攻撃をされる可能性があるので、固まらず、バラバラに行動してください」

「おお!」


 沙織の指示に、明日香はそう言って胸の前で両拳をぶつけ合う。

 すぐに私達はバラバラの方向に行き、攻撃を仕掛けようとする。

 しかし……。


「足が……!」


 上手く動かない足に、私はつい、そう呟いた。

 雪が想像以上に積もっており、腰まで埋まってしまうのだ。

 魔法少女の力で強引に突き進もうとするが、いつものように動けない。

 せめて雪を取り除ければ良いのだが……。


「グッ……こうなったら……!」


 その時、蜜柑が大槌を大きく振りかぶった。

 どうしたんだ、と思った次の瞬間、彼女は雪に向かってその大槌を振り下ろす。

 すると衝撃波が巻き起こり、雪が弾け飛ぶ。

 雪が白い煙幕となり、視界を覆う。

 ……いや、これはチャンスだ。


「うおおおおおお!」


 叫びながら、私は薙刀を振り上げる。

 煙幕の向こう側に見えるのは……ドラゴンの額。

 私はそこに向かって、思い切り薙刀を突き刺した……かった。

 しかし、ガキィンッ! と金属音を響かせ、薙刀は弾かれる。


「な……!?」

「葉月!?」


 同じように攻撃をしようとしていた明日香が、驚いた表情でこちらを見る。

 彼女は拳を振り上げ、ドラゴンに今にも殴りかかる体勢だった。

 その拳はその勢いのまま振り下ろされ、ドラゴンにぶつかる。

 しかし、私と同じく、ガキンッ! と金属音を響かせるのみだった。

 ……問題はそこではない。


「……グルァ……?」


 まるで、地獄の底から聴こえるような呻き声。

 あぁ、よりによって、なんで、ここで……。

 こちらからの攻撃手段が通じないということが分かった上で……目を覚まさせてしまった。

 固く閉じられていた瞼はゆっくりと開き、夜空のように澄んだ暗い瞳が露わになる。

 額に攻撃をした私は、その目を間近で見ることになる。


「ぁ……」


 暗い目で見つめられ、私の体は強張る。

 恐怖。

 単純な恐怖。

 その目に見つめられた瞬間、相手が捕食者であり、自分が食われる者であると、完全なる序列が出来た。

 奴は、目の前にいる私を……ただの獲物としか見ていない。

 こちらが敵と認識している相手は、こちらを、食物としてしか見ていない。

 その事実に体は強張り、蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまう。


 ドラゴンは体を起こし、ゆっくりと立ち上がる。

 その体は大きく、立ち上がると、私は完全に見下ろされる。……見下される。

 完全なる上下関係。

 呆然とする私に、ドラゴンはゆっくりと前右足を上げて……――。


「葉月!」


 固まっていた時、明日香が私の腕を引いた。

 数瞬後、ドラゴンは私がいた所に前足を振り下ろしていた。

 まるで目の前にいる虫を潰そうとするかのような、放漫な動き。

 しかし、その動きで今、私は命を奪われかけた。


「葉月しっかりして! 大丈夫か!?」

「ご、めん……大丈夫……」


 ようやく落ち着き、私はそう返した。

 未だに心臓がバクバクと音を立て、死にかけたという事実に、体が震える。

 こんな恐怖は、この世界に来たばかりの頃に、巨大虎に食われかけた時以来だ。

 ……あの時よりも、私は強くなっている。

 薙刀を握り直し、目の前にいるドラゴンを睨む。


「蜜柑。あの場で雪を取り除くという選択は間違っていませんが、後ろにいる私のことも考えて下さい」

「ご、ごめん……」

「全く……木に上るのがあと少しでも遅れていたら、今頃雪に埋もれていました」


 背後から聴こえた声に振り向くと、そこでは、沙織が蜜柑に対して説教をしていた。

 蜜柑のおかげで足元の雪は無くなったが、代わりに周りの雪の量がえげつないことになっていた。

 沙織はギリギリ木に上って足場を確保していた様子で、木の枝の上に立って弓矢を構えている。

 恐らく、あの防御力には、沙織の弓矢も通じないだろう。

 この場で頼れるのは、蜜柑の攻撃力と、技のみ。

 しかし、その両方も、絶対に通用するという確証はない。

 ドラゴンの攻撃力も未知数。


 さて、どうしたものか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ