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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第76話 トネールお姉様

 それからのアリアさんの話は、本当に長かった。

 私はなぜトネールと仲が悪くなったのかを聞いただけなのに、アリアさんの口から出たのはまさかのトネールとの出会いだった。

 生まれて初めての生誕祭にてトネールと出会い、人が多く途方に暮れていたアリアさんをリードしてくれたのが二人の始まり。

 それから二人が遊ぶ機会は増え、いつも姉のように遊んでくれるトネール“お姉様”にアリアさんは徐々に惹かれるようになる。

 トネールからトネールちゃんと呼ぶように言われたのでお姉様呼びは止めたが、実はずっと心の中ではそう呼んでいたらしい。

 幼いアリアさんにとって、トネールは白馬の王子様。

 いつか、彼女と結婚するものだと一人考えていたらしい。


 では、なぜトネールと距離を取るようになったのか。

 私が聞きたい本題に入るまでですでに一時間近く経ったぞ。おい。

 まぁそれはさておき、ようやく本題に入れた。


 それはアリアさんが十歳になった時のことだった。

 今は亡きご両親から、リヒトさんとフラーユさんの婚約の話を聞かされたらしい。

 フラーユさんの成人も間近。二人の仲は良好。正式な結婚も時間の問題だった。

 アリアさんとトネールの仲も良かったので、義理の姉妹になると聞けば喜ぶだろうと考えたのだ。

 ……そらそーだ。自分の娘が同性に恋してるとか思わないよな。


 日本の法律がどうなのかは分からないが、少なくともこの世界では、義理の姉妹でも結婚は不可能。

 さらに、リヒトさんとフラーユさんの結婚は、二人が生まれた頃から決まっていた。

 今更、アリアさんの一存で変えられるような簡単な話では無い。


 その件をきっかけに、自分やトネールもいずれは政略結婚をすることになるだろうと、アリアさんは気付く。

 ちなみに、アリアさんが気付いていなかっただけで、実は彼女にも政略結婚の相手はいる。

 いるけど、本人がトネールまっしぐら過ぎて気付いていないだけだ。

 これも、後から両親に聞いて知ったことらしい。


 自分の恋は報われない。

 アリアさんは、その事実に気付いてしまった。

 結局自分の思いが報われないならば、いっそ、この恋は諦めよう。

 そう考えたアリアさんは、トネールから距離を取ることにした。

 冷たく接することで、この気持ちにケリをつけようとした。

 しかし、生誕祭や王族のパーティなどで、結局二人は顔を合わせることになる。

 日に日に美しくなっていくトネールに、アリアさんは必死に自分の気持ちを抑え込んだらしい。

 しかも、自分は冷たくしているのに、トネールは相変わらず話しかけてこようとする。

 それが、さらにアリアさんを苦しめた。


「お姉様もいつかはフラーユ義姉様のように見知らぬ男と婚約を結ぶことでしょう。私には、それを黙って見ていることなど出来そうにありません」

「……へぇー……」


 想像以上のガチっぷりに、私は間抜けな返事をした。

 するとアリアさんはムッと頬を膨らませて、私を見た。


「葉月様、真面目に考えて下さっていますか?」

「あぁ、ゴメン……そんなに、トネールのことが好きなんだね」


 私の言葉に、アリアさんはさらに顔を赤くする。

 ……おかしいな。

 大好きな百合なのに、さっきから全然興奮しない。

 好きかもしれないって可能性が出た時は、幼馴染百合だー姉妹百合だー、と脳内で騒いではいた。

 しかし、彼女のトネールへの想いを聞く度に、胸が締め付けられるような感覚がした。

 ……何だ、これ……変な感じだ。

 まさか、私はアリアさんに一目惚れでもしてしまったのだろうか?

 ……うーん……それは何か違う気がするんだけどなー。


「……トネールお姉様は、幼い頃から、私に良くして下さりました。……私は、そんなお姉様が大好きです」


 小さく呟いたアリアさんに、私は「そっか」と呟いた。

 アリアさんは、これだけトネールのことを思っているんだ。

 ……だったら、それを本人に伝えるべきではないか?


「……部外者の私が言うのもアレだけどさ、その……このままじゃダメだと思います」

「……ダメ……?」

「トネールは、アリアさんが冷たくなって、ショックを受けています。……確かに結婚は出来ないかもしれません。でも、このまま仲が悪いまま終わったら……アリアさんは、後悔する気がするんです」

「……でも、私は……」


 そう言って、アリアさんは両手を強く握り締めた。

 だから、私は彼女の手に自分の手を置き、少し撫でる。

 それからアリアさんの目を見て、微笑んで見せた。


「トネールに気持ちを伝えましょう? そして、元の関係に戻るべきです」

「でも……そんなこと……」

「……トネールは、アリアさんの気持ちを聞いただけで、離れるような人ですか?」


 私の言葉に、アリアさんはバッと顔を上げた。

 すでに、私の中には、確信にも似た一つの仮定があった。

 トネールは、アリアさんの気持ちを聞いたとしても、拒絶するような子じゃない。

 恋心に応えることは出来なくても、突き放すような真似はしないハズ。


 ……あれ? なんで、トネールが断る前提で考えているのだろう?

 トネールにとっては妹のように大切な存在で……でも、それが恋心である可能性だってある。

 二人が両想いで、この告白をきっかけに、付き合う可能性だってある。

 ……そう考えた瞬間、胸が、張り裂けそうなくらい痛くなった。

 息が苦しくなって、呼吸が荒くなる。

 ……これは……一体……?

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