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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第74話 冷たい幼馴染

「アリアちゃん……」

「……トネール義姉様……」


 そこには、一人の少女が立っていた。

 リヒトさんに比べて少し暗い感じのオレンジ色の、ウェーブが掛かった長髪。

 目は澄んだ紺色だ。

 背は低いが、蜜柑に比べると高い方。


「……誰?」


 私がつい聞くと、アリアさんはビクッと肩を震わせた。

 それから私とトネールを交互に見て、若干眉間に皺を寄せた。


「……これは失礼致しました。私は、ソラーレ国第一王女。現国王のリヒト様の実妹。アリア・ルチェ・ソラーレです。どうぞ、お見知りおきを」


 そう言ってドレスを両手で摘み、上品なお辞儀をする。

 トネールが知っていることは、これは嘘ではないのだろう。

 ……しかし、この子が本当にストーカー?


「アリアちゃんお久しぶりですね。前に会った時より大きくなられて……」


 トネールが明るい笑みでそう言うと、アリアさんは冷たい眼差しをトネールに送った。

 しばらく見つめ合った後、先にアリアさんが目を逸らす。


「えぇ……本当にお久しぶりですね。トネール義姉様」

「そんな堅苦しい呼び方をなさらないで? 昔のように、トネールちゃんと……」

「リヒト兄様とフラーユ義姉様が結婚された為、私達も義理の姉妹になったのです。ですから、もう昔のような友人関係とは違います。……何度言ったら分かって下さるのですか?」


 まるで私に説明するかのように、アリアさんは冷たく言い放つ。

 すると、トネールはまるで怒られた子犬のように、シュンとした。

 アリアさんはそれを一瞥すると、私の方を見て、口角を若干上げて微笑んだ。


「……本日は、この城に泊まるのですよね? 魔法少女の皆様にはいつもお世話になっております。どうぞ、気兼ねなく、自宅だと思ってゆっくりしていって下さい」

「あ……ご丁寧に、どうも……」


 私が軽く会釈をしながら言うと、アリアさんは微笑み、私の横を通って玉座の間に入っていく。

 その後ろ姿を見送ると、途端に肩から力が抜けた。

 ずっと緊張していたことに、今更気付く。

 かなり強張っていたのか、血流が肩に巡っているのが分かる。

 いや、それよりも……。


「トネール、今のって……」

「……あはは……変なとこ、見られちゃった」


 そう言って目を伏せ、両手の指を絡めるトネール。

 長い睫毛が影を落とし、彼女の白い肌に黒いコントラストを作る。

 彼女の顔はどこか悲しそうで、胸が苦しくなる。


「ねぇ、今の子……」

「……アリアちゃんはね、私の幼馴染なの」


 幼馴染、という単語に、私はビクッと肩を震わせた。

 トネールはそんな私の変化に気付いているのか否か、特に変わらぬ態度で続けた。


「リヒト義兄様とフラーユお姉様は、生まれた頃から婚約者だったから、よく会う機会があって……その中で、アリアちゃんと仲良くしていたの」


 それから聞いた話では、アリアさんはトネールより一歳年下らしい。

 小さい頃からよく遊び、仲が良かったのだとか。

 しかし、ある時を境に、突然アリアさんからの態度が激変。

 距離を取られ、冷たく接するようになってしまったらしい。

 本当に突然だったから、トネールにも理由は分からないみたい。


「昔は凄く純粋で優しい子だったの。王族で集まるパーティの時は、よく私の後を付いて来て……本当の妹みたいで……」


 そう言って悲しそうに目を伏せるトネール。

 幼馴染、か……。

 私の頭に、若菜の顔が浮かぶ。

 彼女も、人見知りが激しい性格だから、よく私の背中に隠れていた。

 年齢が一緒だから妹だとは思わなかったけれど、守らないといけない存在だとは思っていた。

 ……あの子、今頃一人でやっていけてるかな……。

 突然湧いた思考に、不安感が湧き上がって来る。

 そこで、思考が逸れそうだったので、慌てて頭を横に振って軌道修正を試みる。


 しかし、もしも若菜に急に疎遠になられたら……ショックで寝込みそう。

 ていうか、誰も信じられなくなって、病みそう。

 トネールはそんなショックを受けているのか……。


「……私にも、力になれることは無いかな?」

「え?」


 私の言葉に、トネールは不思議そうな顔でこちらを見た。

 だから、私は彼女の手を取り、続けた。


「私にもね、幼馴染がいるんだ。今は、元いた世界にいるんだけど……凄く仲が良くて、一番の親友だと思ってる。もしあの子に突然嫌われたらって考えたら、凄く悲しい。……トネールの気持ちも分かるんだ」

「そんな、私は……」

「だから、私はトネールの力になりたい! ……二人の関係を、元に戻したい」


 ダメ、かな? と、聞きながら首を傾げてみる。

 するとトネールは驚いたような顔をしてから、首を横に振り、私の手を握り返してくる。


「ううん……嬉しい」


 そう言って微笑むトネールの顔に、ドキッ、と、心臓の音がやけに大きく高鳴った。

 突然のことに困惑しつつも、私は「良かった」と答えた。

 でも、一体なぜ急に疎遠になったりしたのだろうか。

 本人に聞かないことには始まらないけど、二人きりになる機会なんてあるのかな……。

 どうにか二人きりになれれば……いや、贅沢は言わない。

 せめて、少しでも話す機会があれば……どこかで、アリアさんと会うことが出来れば……。

明日は予定があるので、二回投稿は出来ないかもしれません。

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