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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第73話 王都ソラーレ

 ようやく一通りの事がひと段落し、私達は出発する。

 アルス車に揺られながら、私達は旅路を急ぐ。

 席順は、オリゾンの町までの道のりと同じだ。

 もう二度と蜜柑とトネールに挟まれて溜まるか!

 でも、ギンはトネールにも懐いてるし、私だってモフモフしたい。

 というわけで、なんだかんだ一番初めの席順が平和だったりする。


「沙織ー暇ー」

「そんなこと私に言われても困ります」

「えー」


 さて、明日香と沙織の距離がやけに近い件については、触れるべきだろうか?

 明日香がじゃれるように沙織の腕を抱きしめており、沙織も満更では無い様子。

 沙織ってフラムさんのこと好きなんじゃないっけ?

 あすさおが目の前で行われており、私は幸せなんですけどね。


 そんなこんなで、今朝までのドタバタが嘘のように、何事も無く私達は次の町に着いた。

 着いた頃には空が茜色に染まり、日が沈む前だった。

 アルス車の窓から見える景色に建物が入ったのを見て、フラムさんはその表情を緩めた。


「着いたか」

「またオリゾンみたいな、国境線沿いの所?」


 私がトネールに尋ねると、彼女は笑顔で首を横に振る。


「ううん。流石のアルスでも、この短時間であそこまではいけないよ」

「ふーん……じゃあ何て言う町なの?」


 私の質問に、トネールはこの町……王都ソラーレについて話してくれた。

 ソラーレ国の王都、ソラーレ。

 私達がお世話になっていた町のように、ソラーレ国の城がある場所だ。

 そして、どうやらトネールの姉である第一王女がこの国の王子と結婚しているらしい。

 この国を跨いでノールト国に行く為、ソラーレ国の王子に頼んで手続きを省いてもらうのだ。

 ついでに、今日は城で寝泊まりをすることになる。


「着いたぞ」


 トネール先生の今回の解説が終わったところで、フラムさんがそう言って立ち上がる。

 それに応じてアルス車を出ると、目の前には、巨大な城があった。

 見上げていると首が痛くなり、少し動かすとパキパキ鳴った。


「お待ちしておりました。どうぞ、こちらに」


 使用人のような人にそう先導され、私達は城の中に踏み込む。

 城の中の雰囲気は全体的にドゥンケルハルト王国のものと変わらず、特に新鮮味は無い。

 そういえば、この世界に来たばかりの頃は城に怖気づいてたような記憶がある。

 寝泊りしている内に慣れたのだろうか。慣れとは恐ろしいものだ。


 そんな風に観察しながら歩いていると、玉座のような場所に入った。

 立派な椅子に座った青年が、こちらを見ていた。

 オレンジ色の髪に、黒い目。顔が整っていて、かなりの美形だ。

 その隣では、青年の物よりはほんの少しシンプルな椅子に座った女性が立っていた。

 あ、あの人は確か、この世界に来た頃に円卓の間で見た……。


「ドゥンケルハルト王国の第二王女様と、護衛の騎士。そして、魔法少女の皆様です」


 使用人の言葉に、青年は微笑む。

 ……ねぇ、フラムさんの説明雑過ぎない?

 護衛の騎士って……。


「本日はよく来て下さりました。私はソラーレ国、現国王。リヒト・ルチェ・ソラーレです」


 そう言ってリヒトさんは頭を下げる。

 顔を上げると、彼は隣にいる女の人を示す。


「彼女は私の妻である、フラーユ・ビアン・ドゥンケルハルトです」

「フラーユ・ビアン・ドゥンケルハルトです。魔法少女の皆様は、会うのはこれで二度目ですね」


 そう言って微笑むフラーユさん。

 結婚しているのに苗字は変わらないのだろうか?

 気になったので後でトネールに聞いたところ、この世界では結婚してから一年で苗字が変わるらしい。

 フラーユさんは今年結婚したので、苗字が変わっていないらしい。


「リヒト義兄様。フラーユお姉様。お久しぶりです。ドゥンケルハルト王国第二王女のトネール・ビアン・ドゥンケルハルトです。本日はお世話になります」

「ハハッ、そう畏まらないで。魔法少女の皆様にはお世話になっていますから、これくらいは当然ですよ」


 おーう……イケメンスマイルが眩しいぜ。

 この世界に来てから出会った男のイケメン率がやけに高く感じる。

 ラムダさんの場合は、あれは故郷とかにいそうなオジサンだ。

 商店街で元気に野菜を売っていそうなタイプ。


 それから、私達もリヒトさんに自己紹介を終えた。

 ……フラムさんの自己紹介は無かったが、名前を知っているのだろうか?

 一通りの自己紹介を終えると、私達は本日寝泊りをする部屋に案内されることになった。


「それでは、私に付いて来て下さい」


 私達をここまで案内してくれた使用人に付いて行こうと踵を返した時、部屋の扉の方に気になる物を見つけた。

 扉を少しだけ開けて、こちらをコッソリ見ている影。

 背は低く感じる。


 相手は私と目が合うと、サッと逃げた。

 ……? 何だアレ?


「葉月? どうかしたの?」

「……いや、今、誰かが見ていて……」

「……そう?」


 トネールはそう聞きながら、さりげなく私の腕に自分の腕を絡めてくる。

 そういえば、国王と会うのに、私達風呂入ってないじゃん。

 彼女にそれを聞いてみると、どうやら、リヒトさんはそういうことには寛容らしい。

 あと、遠話魔法でフラムさんが説明しておいてくれたらしい。


「フラムさん、わざわざ連絡して下さってありがとうございます」

「……これくらい当然だ」


 私のお礼に、フラムさんはあくまでクールにそう言った。

 やはりフラムさんはイケメンだ。

 だからこそベッドの上ではトネールのような大人しい感じのお嬢様に乱されて欲しい感が……。


「葉月。何か変なこと考えてるでしょ」

「……うぇ?」


 トネールに突然言い当てられ、私は奇妙な声で返答する。

 すると、彼女は呆れたようにため息をついた。

 そんな会話をしつつ前方を見た時、また、扉の隙間からこちらを見ている人影があった。

 ……一度ならず、二度までも……。

 そこで、私は今いるメンバーを見る。

 私以外は美少女勢揃いだし……まさか、誰かのストーカーなのでは……!?

 城にいる限り、使用人である可能性が高い。

 身の回りのことを任せる相手にそんな人がいるなんて、危険過ぎる。

 捕まえるべきか悩んでいた時、隣を誰かが通り過ぎた。

 赤い髪が揺れたのを確認した時には、フラムさんが扉を開け放っていた。


「ちょ、フラムさん!」


 私は慌ててトネールの腕を振り払い、フラムさんの元に駆け寄る。

 フラムさんが開け放った扉の前には、少女が一人立っていた。


「ぁぅ……あの……」


 背が低く、全体的に幼い見た目だ。

 この子がストーカー……?

 俄かに信じられない現実に、私は首を傾げる。


「葉月!」


 その時、ようやくトネールが追いついてきた。

 彼女は私の前にいる少女を見た瞬間、大きく目を見開いた。


「あ、アリアちゃん……?」

「……トネール義姉様……」


 アリアと呼ばれた少女の言葉に、私はトネールの顔を見た。

 トネールは、驚いたような表情でアリアを見ていた。

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