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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第71話 明日香と沙織の入れ替わり⑦

 魔法少女に変身した途端、巨大鶏が羽根攻撃をしてくる。

 私達はすぐにそれを避け、巨大鶏を見る。

 今回は、いつもとは戦術が大きく変わる。

 沙織が前衛で、明日香が後衛だ。

 参謀である沙織が前に出ることで、戦況をじっくり観察する暇が無くなってしまう。

 明日香にそういう指揮とか出来るようには見えないし……どうしようか。

 そこまで考えて、脳に閃光が走るような感覚がした。


「沙織は明日香と一緒にいて!」


 私の言葉に、沙織は「え!?」と驚きの声を上げた。

 だから私は続けた。


「今の沙織に接近戦は難しいし、沙織が指示してくれないと戦況がグチャグチャになっちゃう! だから、お願い!」

「……分かりました」


 私の言葉に沙織は頷くと、明日香と共に下がる。

 明日香の遠距離攻撃も期待出来ない。

 蜜柑と二人で切り拓く。


「蜜柑! 行くよ!」

「うんっ!」


 私が促すと、蜜柑は頷く。

 前を見た時、私は違和感を抱いた。

 巨大鶏の羽根攻撃……ここまで隙間があったっけ?

 いや、違う。トネールの魔法の弾幕が、これ以上に濃密だったんだ。

 おかげで、前より余裕を持って前に出ることが出来る。

 ……敵より濃密な弾幕攻撃してくるとか、結構容赦ねぇな、トネール。


「はぁぁぁぁぁッ!」


 私は素早く羽根攻撃の隙間を縫い、一気に巨大鶏に距離を詰める。

 薙刀の特性は、リーチが長いこと。

 長い柄をしっかり握り、巨大鶏に向かって振り上げる。


「コケェッ!」


 いざ薙刀斬りかかろうとした時、巨大鶏がこちらに尻を向けてくる。

 しまった、と思った。しかし、すでに私は薙刀を振り上げ、奴を斬るモーションに入っていた。

 ……避けられない……!

 目の前に巨大な卵の殻が現れ、それが体にぶち当たる。

 私の体は吹き飛び、卵ごと地面にぶつかった。

 緑色の卵白や紫色の卵黄が体に纏わりつき、凄く気持ち悪い。


「クッ……!」


 慌てて立ち上がろうとするが、魔力が卵白に溶け出ているのか、体に力が入らない。

 地面に付いた腕に力が入らず、地面に伏せることしか出来ない。

 体にネチャネチャした感覚が纏わりつき、物凄く気持ち悪い。


「葉月ちゃん!」


 すると、不安そうに蜜柑が駆け寄って来る。

 まぁ、蜜柑みたいな美少女がこんなネバネバ塗れにならなくてよかった。

 ……って、それどころじゃない。


「蜜柑! 来るな!」

「え!?」


 驚く蜜柑に、羽根攻撃が諸に当たる。

 この卵と違ってすぐに復帰出来るか……?

 そう思っていた時、蜜柑の服を羽根が貫いているのが分かった。


「な……!」

「グッ……!」


 蜜柑は慌てて服を破いて復帰しようとするが、それより先に、追撃の羽根が来る。

 彼女にそれを避ける術など無く、それを諸に受け、地面に倒れ伏せる。

 人数が少ない分、一人一人を的確に潰せる。

 私は卵白塗れの草を握り締め、歯ぎしりをした。

 その時、巨大鶏の眉間を矢が貫いた。


「ゴゲッ!?」

「葉月と蜜柑に気を取られすぎです。もっと周りを見ましょう」


 明日香の低い声がする。いや、これは沙織の声!?

 なんとか首を動かして声がした方を見ると、そこでは……何だアレ。

 弓矢を構えている明日香を、後ろから沙織が助けている。

 もう一度言う。何だアレ。


「二人とも……何してんの……?」

「僕の命中率は低い。でも、普段弓矢を武器にしている沙織が手伝ってくれれば、命中率は大幅に上がるってわけ!」

「……まさか、あそこまで見事に眉間に刺さるとは思いませんでしたが」


 冷ややかな沙織のコメントに、巨大鶏は不愉快そうに首を振る。

 矢を振り落とそうとしているのだろうか。

 しかし、かなり深く刺さっている様子で、振り落とせる気配が無かった。

 とはいえ、悪あがきのように両羽を振るっているせいで、こちらも近づけない。

 少なくとも、沙織がトドメを刺すのは難しい。


「……僕がやらないと、か……」


 そう呟いた明日香の頬を、冷や汗が伝う。

 ……緊張している。

 当たり前か。彼女自身の弓矢の命中率はそこまで高くないらしいから。

 訓練の最中では的の真ん中に命中したらしいが、百発百中ではない。


「……力が入り過ぎです」


 その時、沙織が明日香の背中に密着し、彼女の手に自分の手を添えた。

 何をしているのか、と注視してみると、沙織が明日香に何か囁いているのが分かった。

 すると明日香は頷き、沙織の指示に従って姿勢とか力加減を変えていく。


「後は……技を使う時をイメージすれば、きっと……」

「分かった」


 沙織の言葉に明日香は頷き、力を込める。

 すると、矢に風が纏わりつく……が、さらにその上に炎が纏った。


「何……アレ……」


 ボロボロになりながらも立ち上がろうとしていた蜜柑が、明日香と沙織の状況を見て呟く。

 彼女の言葉に、私は全力で同意する。

 何だアレは。あんなの、見たことが無い。

 炎と風を纏った矢は、さらに大きくなって弓をも纏わりつき、形を変えていく。

 やがてそれは……一丁の銃になる。

 ファッ!?


「ッ……!?」


 驚きの声を上げようとしたが、大分魔力が溶け出てしまったようで、声が出なかった。

 銃は、白を基調としているが、金色の線がアクセントで入っている。

 よく見ると、魔法陣のような紋様が複数描かれていた。


「……行くよ」


 明日香はそう呟き、銃を構える。

 しかし、結構重いのか、腕が震えていた。

 すると、後ろから沙織が支えた。

 明日香の体は腕力があるので、沙織が支えると銃はその銃口を真っ直ぐ巨大鶏に向ける。

 銃口が安定したのを確認すると、明日香は引き金に指を当て……静かに引いた。

 次の瞬間、銃口から真っ赤な閃光が炸裂した。

 それは真っ直ぐ突き進み、巨大鶏の体を貫く。

 すると、そこを中心に炎が巻き起こり、まるで竜巻のように回転しながら燃え広がる。

 やがてその場に巨大な炎の竜巻ができ、巨大鶏の体を灰と化していった。

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