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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第70話 明日香と沙織の入れ替わり⑥

<葉月視点>


 めっちゃ疲れた。

 魔法少女に変身しているにも関わらず、主に精神的な面で疲れてしまった。

 私は変身を解き、地面に仰向けに寝転んだ。


 あの後、マジでトネールによる魔法乱射を避けさせられた。

 とはいえ、巨大鶏の羽根攻撃による弾幕に近かった。

 だから、次巨大鶏と戦うことになった時役に立つとは思うし、回避力は大幅に上がったと思う。

 でも疲れた……。


「……葉月……」


 すると、私が疲れた元凶であるトネールが、何とも言えない表情で私を見下ろした。

 不思議に思っていると、彼女は私の腰辺りでしゃがみ、スカートの位置を正した。

 ……?


「……下着が、見えてます……」

「わぁ!?」


 顔を赤くしながら指摘され、私は慌てて体を起こし、スカートを手で押さえた。

 心臓がバクンバクンと大きな音を立てて、頭に血が上る。

 顔を上げると、トネールが口元に手を当てて目を逸らしていた。


「……白……」


 そして真顔で色を当てる蜜柑。

 彼女の言葉に、私は自分の顔がさらに熱くなるのが分かった。

 スカートを押さえ、ため息をつく。


「……明日香達の方は、上手くいってるかな……?」


 私の呟きに、二人も、明日香達が行った方向を見た。

 いや、だってフラムさんと沙織と明日香だよ?

 絶対修羅場になってる気がする。


「……ちょっと様子見に行ってくる」

「あ、ちょっと葉月ちゃんっ!」


 立ち上がり明日香達の方に向かおうとすると、すぐに蜜柑が駆け寄ってきた。

 トネールは、私達の後ろをゆっくり歩いて来る。

 彼女を走らせてもいけないので、彼女が追いつくのを確認して、ゆっくり歩いて行く。


「そういえば、トネールは体、大丈夫? 魔力の病気だし、急にあんなに魔力を消費したりしたら……」

「え? あぁ、いえ……私は魔力が多い方なので、アレくらいは全然」

「え、すごっ」


 つい驚いてそう言うと、トネールはクスクスと楽しそうに笑った。

 しかし、さらに聞いてみると、それでも魔力を使うと疲れるらしい。

 とはいえ、魔力を自動生成し続ける病気であるため、トネールの魔力はかなり多いのだとか。

 むしろ、溜め込み過ぎると体に悪いので、定期的に魔法を使って排出しなければならない。

 だから、今回の練習はトネールの体にもむしろ良かったのだ。


 そんな話をしながら明日香達が訓練している場所に向かうと、そこでは、明日香と沙織が抱き合っていた。

 あん?


「……あっ! 葉月!」


 明日香は私に気付くと、沙織を離して手を振って駆け寄って来る。

 私はすぐに明日香に近付き、彼女に小声で尋ねる。


「ねぇ、いつの間に沙織と上手くいったの?」

「え? いや、そんなんじゃ……!」

「でも、さっき抱き合って……」

「矢がね、やっと的の真ん中に当たったから、嬉しくて……」

「矢?」


 明日香の言葉にそう聞き返すと、彼女はとある一点を指さした。

 そこには、木にペンキで描いた的の真ん中に深々と矢が刺さっていた。


「……おー。マジだ」

「だから、嬉しくて、つい……」


 そう言って顔を赤らめ頬を掻く明日香に、私は彼女を肘で小突く。

 理由はともあれ、抱きしめ合っていたのは事実。

 立派な進展だ。


 明日香と話しつつ、私は沙織に視線を向けた。

 そこでは、沙織と蜜柑が何か嬉しそうに話しているのが分かった。

 よく見ると沙織の顔が若干赤らんでいる。

 なんていうか……友達の恋の報告をしている女子の顔って感じ?


「ねぇ、沙織ってフラムさんと何か良いことあった?」

「え? ……いや、別に……」

「……? 訓練の最中ってどんな感じだった?」

「どんなって……僕がフラムさんと訓練していたら混ざって来て、僕に個別で教えてくれて……なんで?」

「いや……」


 フラムさんとの進展は特に無い?

 しかし、じゃあ、沙織は何をあんなに嬉しそうに報告している?

 単純に明日香が的に命中させたのが嬉しかった?

 いや、あれは完全に恋する乙女の顔だし……。


 フラムさんに視線を向けると、彼女はトネールと何か話していた。

 声のトーンから察するに、体調の心配とかかな。

 沙織と何かあったようには見えない……って、フラムさんはそういうのに動揺したりとかは無いか。

 では……一体……?

 そこまで考察していた時強い風が吹きつけてくる。


「わ……!?」


 髪が風に靡き、体が風に押される。

 変身すれば超人かもしれないが、今はただの少女。

 私の体は風に飛ばされ、地面を跳ねた。


「おい!」


 しかし、すぐにフラムさんに腕を掴まれる。

 彼女は右手でトネールを保護しており、左手で私の腕をしっかり握っていた。

 私と目が合うと、フラムさんは目で『自分の腕を握れ』と言っている気がした。

 すぐに、私は彼女の腕を握り返す。


「クッ……!」


 苦しそうに呻きながらも、彼女は少しずつ私の体を引き寄せ、やがてしっかり抱きしめる。

 フラムさんのおかげで、ようやく現状を把握する。

 風の正体は、先ほどの巨大鶏だ。

 奴の羽ばたきで風が巻き起こっているのだ。

 変身しているのは、明日香と蜜柑。

 沙織は明日香が支えているので、吹き飛ばされていない。

 ……魔法少女でも結構ギリギリで堪えてる風を生身で人二人支えた状態で耐えているフラムさんヤバくね?


「コケェェェ……」


 不意打ちの風攻撃があまり効かなくて苛立ったのか、怒気を孕んだ声を上げながら、巨大鶏が地面に降り立つ。

 私はすぐにフラムさんから離れ、三人の方に駆ける。


「沙織! 変身を!」

「は、ハイ!」


 私の言葉に沙織も頷き、アリマンビジュに触れた。

 眩い光が煌く中、私も自分のアリマンビジュに触れて、続くように変身をした。

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