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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第3章 ソラーレ国編
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第67話 明日香と沙織の入れ替わり③

 大人数で話してもアレなので、代表して私が明日香の話を聞くことにした。

 話す場所は、訓練していた所から少し離れて、池の傍に行った。

 澄んだ池を眺めながら、私と明日香は岩に腰かけた。

 しかし、見た目は沙織なので、普段は上品な沙織がかなり粗暴な動作になっているように見える。

 これ沙織の両親が見たら泣くわ。


「それで? なんでボーッとしてたの?」

「うーん……正直、僕にもよく分からないんだけどさ」


 そう言いながら明日香は足元にあった石を拾い、横投げで池に向かって投げる。

 小石は二度地面を跳ねて、池に沈む。


「なんていうか……ずっと、ムカムカしちゃって……」

「ムカムカ?」

「うん。ムカムカっていうか、トゲトゲっていうか……凄く、胸が痛いんだ……」


 そう言って自分の胸に手を当てる明日香。

 私はそれを横目に見ながら、出来るだけ平たい小石を拾い、横投げで池に投げる。

 小石は三度池の上を弾んで、沈む。


「……心臓の病気か……女の子の日か……?」

「……そういうのじゃないっていうか……あーもう! 何て言えば良いんだろう!」


 そう言って、自分の顔を手で覆う明日香。

 私はどう答えれば良いのか分からず、ひとまず、水切りに丁度良い子石を探してみる。

 平たい小石……お、良いのが二個くらいある。


「……沙織がフラムさんのこと好きって聞いてから、ずっと変なんだ……」


 その言葉に、いざ池に小石を投げようとしていた私の体は止まる。

 恐る恐る振り向くと、そこには、俯いたままの明日香がいた。


「……どういう、こと……?」

「……沙織がフラムさんのことを好きかもしれないって考えると、凄く、胸が苦しくなって……弓矢を使うには集中力がいるのに、全然、集中出来なくて……フラムさんに聞こうかなって思って二人を見ると、尚更……」

「……へぇー」


 なんとか平静を保って返事をするが、内心はかなり混乱していた。

 え? 何? ちょっと待って?

 グルグルと激しく思考が回る中、私は額に手を当てて、強引に思考を整理しようと試みる。

 えっと、えーっと、その……つまり、アレだ。


「明日香って……沙織のこと、好きなの?」

「……はぁ!?」


 私の質問に、明日香は真っ赤に染まった顔を上げてそう言った。

 いや、だって、そうとしか思えないじゃないか。

 フラムさんを好きになったという可能性も無きにしも非ずだが、ここで、昨夜の見張りの最中の恋バナを思い出す。

 明日香は沙織の好きな人は気にしたが、フラムさんの好きな人は一切触れなかった。

 つまり、つまり……沙織のことが好きだということじゃないか?


「え、あ、え……そうなのかな?」

「多分そうだと思うけど……違ったらゴメン」

「いや、その……違わない、気がする……」

「……」


 明日香の言葉に、私は池に向かって全力で小石を投げつけ、両手で自分の顔を覆った。

 やりやがったな公式ぃぃぃぃぃッ!

 いや、この場における公式って何だ?

 神様か? 神様が公式か?

 ……神様テメェェェェェ! ありがとう! 大好き! 神様ありがとう!


 今まで私は、色々な、女の子が多く出るアニメを見てきた。

 キャラデザや色合いでの組み合わせや、本編の中での絡みなどで、様々なカップリングを組んできた。

 しかし、それが百合アニメでも無い限り、結局そのカップリングは私の妄想の中でしか存在しない。

 恋愛感情など、アニメの中の二人の間には無いのだ。

 無論、私はそれに慣れていたし、別に苦には思わない。


 そんな中でさ、推しカプの間にガチの恋愛感情が芽生えてみ?

 もう言葉に言い表せないよ? この興奮。


「……葉月?」


 ずっと黙っていたからか、明日香が不安そうに尋ねてくる。

 私はそれに、慌てて意識を百合の楽園から引きずり下ろし、笑って見せる。


「ゴメン。ちょっとビックリしちゃって……」

「……やっぱ変だよね。女の子を好きになるなんて」

「そんなこと無いよッ!」


 明日香の後ろ向きな言葉に、私は反射的にそう反論していた。

 すぐに立ち上がり、明日香の前に立ち、彼女の肩を掴む。


「人を好きになるのに性別なんて関係無い! 自分の気持ちを大事にしないと! だから、自信持って!」

「う、うん……? ありがとう……?」


 若干引いた様子で返事をする明日香に、私は慌てて彼女の肩から手を離す。

 しまった……少し感情的になってしまった。

 とはいえ、百合好きを抜きにしても、別に同性愛は普通だと思う。

 誰が誰を好きになっても良いじゃない。世の中には獣や物を愛する人だっているんだし。

 同性くらい普通だ。


「……で? 沙織を好きになるきっかけとかあったの?」

「……よく分からない」

「え?」


 まさかの返答に、私はつい聞き返す。

 すると、明日香は困ったような笑顔を浮かべた。


「……前からさ、沙織のことは綺麗な人だと思っていたよ。でも、ずっと見ている内に少しずつ、気になって……もっと見ていたいなって……」

「……へぇ……」

「性格も良いし……沙織って、結構可愛い性格してるじゃない? だから……守ってあげたいって……思ったりして」


 ……気持ちは分かる。沙織は可愛い。

 それに、明日香は優しい性格だ。

 沙織は普段凛としている分、その心は弱い。

 同室だった明日香ならそういう面を私以上に見ている可能性もあるし、気に掛けていたら……って感じかな。


「なるほどね……まぁ、大体分かった。応援する」

「ありがとう……でも、沙織はフラムさんのこと好きだよね」

「……だからって諦めるのは勿体ないよ。折角の初恋なんだし、大事にしないと。……蜜柑を見てみ? フられたのに、むしろ開き直ってる」

「……ハハッ……それもそうか……」


 そう言って微笑む明日香に、私も釣られて笑う。

 今すぐ告白しろとは言わないが、相手に好きな人がいる程度で諦めては欲しくなかった。

 自分の推しカプとか以前に、友達の恋だから。

 沙織の方も応援したいけど、そこは、まぁ……推しカプを優先させて下さい。流石に。

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