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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
番外章3 蜜柑とギン編
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第11話 姉の友人

「ただいまー」


 そう挨拶をしながら、私は玄関の扉を開いた。

 すると、玄関には見慣れた靴の他に、見覚えのある靴が二足並んでいた。

 これは確か……お姉ちゃんの、友達の……。

 一瞬浮かんだ疑問に応えるように、リビングの方から話し声が聴こえてきた。

 ……やっぱり……。


「蜜柑、この靴は……?」

「お姉ちゃんの友達だよ。……まぁ、気にしなくても大丈夫」


 私はそう言いながら、靴を脱いで並べる。

 ギンちゃんも靴を脱ぎ、私と同じように並べた。

 まぁ、折角来てくれているのなら、挨拶はしておくべきかもしれない。

 そう考えた私は、ギンちゃんの服が入った袋を持ち直し、リビングに足を向けた。


「あっ! 蜜柑待ってよ!」


 すると、ギンちゃんは慌てた様子でそう言いながら、私の後ろについてくる。

 別にギンちゃんが来る必要は無いと思うけど……まぁでも、これから一緒に住むわけだし、よく遊びに来る彼女等には挨拶でもさせるべきか。

 私はギンちゃんが付いてくるのを見ながら、リビングの扉を開けた。


「でね、そしたら……あっ、みぃちゃんこんにちは~」


 私が入ってくるのを見てそう声を掛けてきたのは、お姉ちゃんのお友達の、望月(もちづき) 花鈴(かりん)さんだった。

 クリッとしたまん丸い目をした、可愛らしい人。

 頭の左側で黒い長髪をサイドテールにしており、右目の横に泣きぼくろがあるのが特徴だ。


「蜜柑ちゃんこんにちは。お邪魔してます」


 そう言って会釈をしたのは、同じくお姉ちゃんのお友達の望月 真凛(まりん)さん。

 花鈴さんに比べると少し冷たい印象を受ける目付きだが、クール系の綺麗な人だ。

 頭の右側で黒い長髪をサイドテールにしており、左目の横に泣きぼくろがある。


 まぁ、見て分かる通り、花鈴さんと真凛さんは双子だ。

 性格は真逆だが、目付きと髪型とほくろ以外は瓜二つで、黙っているとどっちがどっちか分からなくなる。

 髪型とほくろも、違うと言っても鏡合わせのような感じなので、正直見た目の違いはほとんどない。

 少なくとも、初見で二人を見極められる人なんてほとんどいないだろう。


「お……同じ顔の人が、二人……」


 ……今、私の隣で驚愕している、ギンちゃんのように。


「あれ? その子は……みぃちゃんのお友達?」

「あっ、この子は……」

「あれ、蜜柑もギンちゃんも、帰って来てたの?」


 説明しようとした私の言葉を、台所からリビングにやって来たお姉ちゃんが遮った。

 お姉ちゃんは花鈴さんの前にオレンジジュースが入ったコップを、真凛さんの前に紅茶が入ったティーカップを置いた。

 その様子を見ていた真凛さんは「ギンちゃん?」と聞き返した。


「もしかして、さっき話してた……同居することになったっていう?」

「そうそう。蜜柑の命の恩人さん」

「へぇー……!」


 お姉ちゃんの紹介に、花鈴さんは感心したような声を上げながら、ギンちゃんを見た。

 どうやら、二人にはギンちゃんの話くらいはしてあったらしい。

 そんなやり取りをしている間、ギンちゃんは終始驚愕に固まった様子で、口をパクパクと開閉させながら望月双子を交互に見ている。

 すると、お姉ちゃんはそれに気付き、「あぁ」と小さく声を上げた。


「ギンちゃん。こっちは望月花鈴……で、こっちが望月真凛。双子よ」

「……双子……」


 重々しく呟くギンちゃんに、私は苦笑する。

 まぁ、私も初めてこの二人に出会った時は、ギンちゃんのような反応をしたものだ。

 だって、本当にそっくりで、見分けがつかないんだもの。


「フフッ……この反応、蜜柑ちゃんの反応を思い出すね」


 すると、ソファの肘置きに頬杖をつきながら、真凛さんがそんな風に言った。

 彼女の言葉に、花鈴さんは「確かに」と笑った。

 二人の会話に、お姉ちゃんは呆れた様子で溜息をついた。


「蜜柑どころか、二人に会った人は皆こんな反応でしょう?」

「まーねー」

「私達を初見で見分けられたのは、柚子が最初で最後だね」

「あははっ……不名誉な称号だなぁ」


 真凛さんの言葉に、お姉ちゃんは苦笑を浮かべながらそう答えた。

 そう。二人の話によると、お姉ちゃんは唯一、二人を最初から見分けていたらしい。

 望月双子とお姉ちゃんは、中学の頃からの仲らしい。

 どうやって仲良くなったのかは知らないけど、気付いたら家に遊びに来るくらいの仲になっていた。

 初めて会った時は小学生の頃だったけど……かなりビックリした。

 だって、学校から家に帰ったら、同じ顔をした女の子が二人いるんだもの。

 それこそ、今のギンちゃんのような反応をしていたものだ。


「……なんか、頭痛くなってきた……」


 しかし、まだ幼いギンちゃんには、少し情報量が多かったらしい。

 この辺で私達はお暇することにしよう。


「じゃあ、私達はもう行くね。ごゆっくり」


 ギンちゃんの袖を掴んで軽く引きながら、私はそう言う。

 すると、花鈴さんが「あいあいー」と言って手を振った。


「またねーみぃちゃんギンちゃん」

「……またね」

「うん。また」


 挨拶をしてくれる二人にそう返しながら、私とギンちゃんはリビングを後にした。

 階段を上っている間も頭が痛むのか、ギンちゃんはこめかみの辺りに手を当てながら「うぅ……」と呻いた。


「……ギンちゃん、大丈夫?」

「……ややこしすぎて……頭痛い……」

「あはは……何回か会ってたら、自然と覚えるよ」

「もう会いたくない……」


 情けない声を上げるギンちゃんに、私は苦笑する。

 しかし、これから一緒に暮らしていけば、あの二人と顔を合わせる機会も増えるだろう。

 それ以外でも、これからギンちゃんが覚えることはたくさんあるし、彼女が一緒に暮らす上でやらなきゃいけないこともたくさんある。

 でも……不思議と、楽しい気分になった。

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