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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
番外章2 明日香と沙織編
326/380

間話 クリスマス

クリスマス短編です。

時間軸的には明日香と沙織編完結後として考えて下さい。

「はぁぁぁ……」


 かじかんだ手に、白い息を吐く。

 大きく吐いた息は冬の乾いた空気の中に溶け、消えて行く。

 今日は十二月二十五日。クリスマスだ。

 それと同時に、我等が伊勢中学校の終業式でもある。

 二学期が終わり、明日から冬休みに突入する。


 ……まぁ、冬休みと言っても二週間弱の短い期間なのだけれど。

 オマケに部活と大掃除と宿題もあって……多分、休みとは名ばかりの物になるだろう。

 年末年始は実家に帰って親戚の集まりにも参加しないといけないし、師走というだけあって、大忙しだ。

 当然生徒会だって忙しくなるだろうし、冬休みに沙織とデートをする時間は、ハッキリ言って皆無だ。

 と言うわけで、今日は午前中で帰りなのを良いことに、これから沙織と制服デートをするのだ。


 今日子も同じような理由で、今日は日和先輩とデートをすると言って、帰って行った。

 日和先輩の学校は伊勢中学校よりも終業式が早いので、今日はもう冬休みに入っている。

 二人は今頃デート中なんだろうなぁ、としみじみと思いつつ、僕は手を息で温める。

 ……さっむい……物凄く寒い……一応コートを着ているにも関わらず、かなりの寒さが肌を突く。

 いや、マジで寒い。沙織はまだか?


「……明日香、寒そうですね?」


 手を擦り合わせて摩擦熱を起こそうと試みていた時、沙織がそう言いながら、ひょっこりと僕の顔を覗き込んでくる。

 突然のことに、僕は「わ!?」と声を上げた。

 ビックリした……いつの間に背後まで……。


「あー、うん……今日気温低くない?」

「えぇ……天気予報では、最高気温は十度行かないみたいですよ」

「マジで!? 通りで寒いわけだ……」

「手袋持って来て無いんですか?」

「今日天気良いし、大丈夫かなぁ、と思って」


 僕の言葉に、沙織は少し目を丸くした後で、呆れたように小さく笑った。

 それから、肩に掛けていた鞄のチャックを開き、中をゴソゴソと漁る。

 少しして、白い紙袋を取り出し、僕に差し出してきた。


「これ、ちょっと早いかもしれませんが……メリークリスマスっ」

「……これは……」


 沙織に差し出された紙袋を受け取り、僕は早速中身を取り出す。

 すると、中には赤と白の毛糸で出来たマフラーが入っていた。

 フワフワの手触りに、僕は「おぉぉぉ……!」と感動する。


「凄いフワフワ……高かったんじゃないの?」

「あぁ、いえ……確かに良いお店の毛糸ではありますが、元々家にあったものを使ったので、材料費はそこまで掛かっていませんよ?」

「……材料費……?」


 マフラーの感触をモフモフと味わいながら、僕は間抜けに復唱する。

 数秒程して、彼女の言葉の意味に気付く。


「ま、まさかこれ……全部手作り!?」

「……? えぇ、そうですが?」


 当然のように言う沙織に、僕は口を開けて固まった。

 それくらい、出来が良かったのだ。

 毛糸の手触りはもちろん、編み目だって正確で、店で売っているものだと言われても納得するレベルだ。


「……ホントに凄いなぁ……沙織は……」


 白い息を吐きながら言った僕の言葉に、沙織はキョトンと首を傾げた。

 それから僕の持つマフラーに手を添え、上目遣いで僕を見た。


「あの……良かったら、私が巻いても、良いですか?」


 オズオズと言って来る沙織に、僕は打ちのめされるような感覚がした。

 そんなの、むしろこちらからお願いしたいくらいだ。


「そんなの、断る理由が無いじゃん」


 僕はそう言って笑いながら、巻きやすいように屈む。

 すると、沙織はどこか嬉しそうに目を細め、僕の首にマフラーを巻く。

 彼女の指先が首に触れる度に、どこかくすぐったい感触がする。

 マフラーを巻き終えた沙織は、それを見て、小さく頷いた。


「出来た。……やっぱり、よく似合ってますね」


 そう言って微笑む沙織の言葉に、僕は首筋に触れる。

 すると、モフッとした毛糸の感触が掌に広がる。

 マフラーを巻いているのは首の周りだけなのに、何だか体中が温かくなったような感覚がする。


「……ありがとう、沙織」


 お礼を言うと、沙織は少しだけ顔を赤らめて、「どういたしまして」と言いながら目を逸らす。

 彼女の言葉に笑いつつ、僕は鞄のチャックを開けて、袋を取り出した。


「じゃあ……僕からも。メリークリスマス、沙織」

「……これは……?」


 沙織はそう言いながら袋を受け取り、中を覗く。

 中から取り出したのは、青色の手袋だった。

 青地に白い毛糸で雪の結晶が描かれた、可愛らしいデザインの手袋。

 沙織はそれを見て、ほぅ……と溜息をついた。


「これは……手袋ですか?」

「うん。手作り……ではないけど……」

「……いえ、嬉しいですよ」


 そう言いながら、沙織は手袋を胸に抱き、はにかむように笑った。

 彼女は早速手袋についていたタグを外し、白くて綺麗なその手に、手袋をはめる。

 手袋は、まるで彼女の為に作られたのではないかと思うくらい、その手に綺麗にフィットする。

 見た目も彼女によく似合っており、正直、これを選んだ自分のセンスの良さが信じられないくらいだった。


「……あったかいです」


 ポフポフ、と。

 まるで遊ぶように両手を軽く叩きながら、沙織は笑む。

 その素振りが子供のように無邪気で、僕はつい、笑ってしまった。


「ははッ……じゃあ、そろそろ行こっか」


 笑いつつも、僕は沙織に向かって手を差し出す。

 すると、沙織は僕の手を見て、目を細めて微笑んだ。


「……えぇ。時間は有限、ですからね」


 そう言いながら、彼女は僕の手を握る。

 かじかんでいた手が手袋に包み込まれ、温もっていく。

 彼女のマフラーと手のおかげで、僕の心は温かくなり、繋いでいた方の手も、先程よりも温かくなったような気がした。

 僕は彼女の手を強く握り、リードするように、一歩踏み出した。

 ……クリスマスは、まだまだこれからだ。

メリークリスマスです。

皆様はどんなクリスマスを過ごされましたか?

私は異性と二人でドライブをしてきました。

とても楽しかったです。


あ、ちなみに場所は自動車学校です。

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