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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
番外章2 明日香と沙織編
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第33話 告白のタイミング

 今日子のおかげで、覚悟は出来た。

 しかし、いざ告白しようと思っても、中々タイミングが掴めない。

 大体、現在は体育祭前で、色々と忙しい。

 隣とはいえ、クラスが違えば、関わることはほとんど無い。

 オマケに沙織ちゃんは生徒会としての活動が忙しいから、普通以上に接触することが難しいのだ。


 こうなったらいっそ、下駄箱にラブレターでも入れて放課後に待ち合わせをするべきだろうか?

 というか、そうするしか無い気もする。

 だが、今日子にそれを言ってみたところ、反応は微妙だった。

 曰く、「風間さんって男子からは人気あるし、ラブレターもたくさん貰ってそうじゃない? そのラブレターに混ざって、スルーされたらどうする?」とのこと。

 まぁ、彼女の言うことにも一理ある。

 でも、それなら僕にはどうすることも出来ない。


「はぁ……」


 保健室への廊下をずっと歩きながら、僕は溜息をつく。

 こうして他のことに悩んでいたせいで、リレーの練習中に転んで膝を擦りむいてしまった。

 確かに僕にとっては、沙織ちゃんに告白することは重要なことだ。

 でも、そのことに気を取られて、他が疎かになるのは良くないことだと思う。

 体育祭はクラスや団で協力するものだ。元々運動しか取り柄な無いのに、足を引っ張るわけにはいかない。

 まぁ、傷自体は浅いし、さっさと治療してもらえば問題無いか。

 そんな風に思いながら、僕は保健室の扉を開けた。


「失礼しまーす」

「あら、いらっしゃい」

「不知火さん?」


 声を掛けられ顔を上げた僕は、言葉を失った。

 なぜなら、保健室には先生の他に、沙織ちゃんがいたからだ。

 彼女は肘を怪我しているようで、包帯が巻き付けられていた。


「えっ、どうしたの!?」

「た、大したことないですよ。少し肘を擦りむいただけです」

「でも、包帯は……」

「肘とか膝みたいな関節部分の怪我はね、よく曲げたりするから、絆創膏だけだと剥がれちゃうの。特に今は体育祭の練習とかで、よく動かすし。だからこうして、上からガーゼや包帯を使って治療をするの。見た目は大袈裟だけど、本当に怪我自体は大したことないわよ」


 保健室の先生の説明に、僕は「本当ですか?」と聞き返す。

 すると、彼女は「えぇ」と言いながら微笑み、大きく頷いた。

 その答えを聞いた瞬間、肩から一気に力が抜けるような感覚があった。

 僕は椅子に座り、「良かったぁ」と呟いた。


「フフッ……そんなに風間さんが心配だったの?」


 すると、そんな僕の様子を見て、保健室の先生がそんなことを言ってきた。

 彼女の言葉に、僕は「もちろん」と頷いた。


「沙織ちゃんは僕にとって、大切な友達ですから。当たり前じゃないですか」

「し、不知火さん……」


 僕の言葉に、沙織ちゃんは顔を真っ赤にして目を逸らした。

 可愛い。


「フフッ、風間さんってば、愛されているわねぇ」

「そ、そんなんじゃ……」

「そういえば、さっきまで、不知火さんの話をしていたのよ」

「……僕の?」


 僕が聞き返すと、保健室の先生は一度頷いた。

 そこで一旦会話を切り、僕の怪我についての質問を色々とされた。

 すでに擦りむいた怪我は外の水道で洗っていたので、消毒をして、沙織ちゃんと同様にガーゼと包帯で治療をすることになる。

 消毒液を染み込ませた綿をピンセットで摘まみ、僕の怪我に消毒をする。

 染みてヒリヒリとする痛みに眉を潜めつつ、僕は口を開いた。


「そ、それで……沙織ちゃんとしていた僕の話って、どういうことを話していたんですか?」

「た、大した話はしていないですよ」


 僕の問いに、すぐに沙織ちゃんはそんなことを言ってきた。

 いやいや、好きな子が知らない所で僕の話をしていたなんて、気にならない方がおかしい。

 さらに問い詰めようとしていた時、保健室の先生が口を開いた。


「本当に大した話じゃないわよ。ただ、リレーの練習をしている不知火さんが、足が速くてカッコいいって話」

「先生ッ!」


 保健室の先生の言葉に、沙織ちゃんは顔をさらに真っ赤にして叫んだ。

 あぁ、どうしよう……凄く嬉しい。

 にやけそうになる顔を、なんとか右手で隠す。

 すると、先生が箱から大きめの絆創膏を取り出しながら、続けた。


「でも、本当に大した話じゃないのに……なんで言わなかったの?」

「それは、その……恥ずかしくて……」


 沙織ちゃんはそう言いながら、目を伏せる。

 彼女の言葉に、保健室の先生はやれやれと肩を竦め、僕の怪我に絆創膏を貼った。

 それから、ガーゼやら包帯の準備を始める。

 先生の手元を観察していると、ふと気になったことがあり、僕は沙織ちゃんを見た。


「そういえば、沙織ちゃんはなんで怪我をしたの? ……転んだ、とか?」


 僕の質問に、沙織ちゃんは少し目を丸くした。

 それから、包帯の上から怪我した部分を撫で、「そうですね」と口を開く。


「まぁ、転んだと言えば、転んだのですが……実は、少しだけ、貧血になってしまって」

「……えっ、貧血に!?」

「えぇ。……本当に少しなので、貧血自体は大したこと無いんですけど、その時に選抜リレーの練習をしていた人とぶつかってしまって……」

「それで転倒、か……」


 僕の呟きに、沙織ちゃんは頷く。

 貧血……か……。

 言われてみれば、沙織ちゃんは体育祭の練習だけでなく、生徒会長としての仕事もあるのだ。

 元々体力とかは無さそうだし、その疲れが出たのかもしれない。


「沙織ちゃん、無理したらダメだよ? 生徒会のこととかがあって忙しいのは分かるけど……先生とか、他の生徒会委員の人とかにも頼った方が良いよ」

「お気遣い、ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。今は少し休んでいますが、すぐに回復して見せます」

「……でも……」

「折角、実力を認めてもらって、二年生で生徒会長に推薦してもらえたんです。……私は……期待に応えなくちゃいけないんです」


 そう言う沙織ちゃんの目は、物凄く真剣だった。

 強い意志の炎を灯した目で紡がれた言葉に、僕は何も言えなかった。


 ……僕は……自分勝手だ……。

 告白しなくちゃって、僕の好きって気持ちを伝えなくちゃ、って……沙織ちゃんの気持ちを考えずに、思ってた。

 ただでさえ沙織ちゃんは忙しいのに、僕が告白なんてしたら、迷惑をかけるだけだ。

 少なくとも、今は告白する時ではない。

 今は……友達として、彼女を支えなければならない。


「そっか。でも、溜め込み過ぎないようにね。何かあったら、力になるから」

「……ありがとうございます」


 僕の言葉に、沙織ちゃんは笑顔を浮かべて、そう言った。

 彼女の言葉に、僕は笑い返した。

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