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黒い刺客

*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)

なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)

ボクの背中には、歓声がない。

祝福も、喝采も、滅多に降ってこない。

ただ、静寂と緊張だけが、ボクの名を包んでいた。

「黒い刺客」──

そう呼ばれたのは、誰かの夢を、正確に突き崩す役目を背負わされたから。

無敗の馬がいた。

時代の寵児、王者、偶像。

誰もがその栄光に酔いしれていた。

──でも、ボクは違った。

その脚を止めたのは、ボクだった。

誰も予想していなかった。

ゴール板の先にいたのが、黒鹿毛の影だったことを。

次もそうだった。

英雄と称えられた馬の連覇を、

ボクは静かに、しずかに断ち切った。

「黒い刺客が来るぞ」

観客たちはそう口にした。

それは称賛じゃなかった。

警戒と、畏れの入り混じった視線だった。

嬉しくなかったわけじゃない。

だけど──少しだけ、寂しかった。

ボクはただ、走りたかったんだ。

風とともに、まっすぐに。

誰かの夢を壊すためじゃなく、自分の夢を掴むために。

それでも、勝ってしまう。

だから誰も笑ってくれない。

それが、ボクの宿命だった。


そうして、最後の舞台がやってきた。

6月の終わり、空は厚い雲に覆われていた。

梅雨の雨は上がっていたけれど、湿気は重たく、風もぬるかった。

阪神の芝に、選ばれし馬たちが並ぶ。

その中に、ボクもいた。

小さな黒鹿毛の馬体。冷静な目。無駄のない動き。

どこか陰のある佇まい。

だけど、その名前だけは──ライスシャワー

「幸せの祝福」を意味する言葉だった。

ボクの名は、そう呼ばれていた。

皮肉だと思う人もいたかもしれない。

でも、ボクは気にしなかった。

それでも、どこかで願っていた。

今度こそ、“誰の夢も壊さない”走りがしたい。

この舞台なら、きっと。

スタートゲートが開く。

ボクは、静かにスタートを切った。

脚をため、呼吸を合わせ、いつも通りに運ぶ。

──しかし。

第3コーナー。

空気が、にわかにねじれた。

左前脚から、小さな音がした。

次の瞬間、地面が傾いた。

風が消えた。

……何が起きたのか、よくわからなかった。

ただ、見上げた空だけが、やけに明るかった。

歓声が、悲鳴に変わった。

ボクの耳には、遠い波音のように聞こえた。


その日の午後、ボクは静かに、安らかに眠った。

「黒い刺客」と呼ばれた馬の物語は、

“夢を壊す者”として語られ続けてきたけれど、

その最期は──

**“夢を抱いていた者”**として、人々の記憶に刻まれた。

そして気づけば、

ボクのもとには、静かな風とともに、**たくさんの“祝福”**が届いていた。

あの時は聞こえなかった声が、今ははっきり聞こえる。

「ありがとう」

「君が好きだった」

「君の走り、忘れないよ」

記録には残らなくても、記憶には残る。

それで、いい。

今、ボクは京都の片隅に眠っている。

緑に包まれた、小さな丘のふもと。

そこには静けさと、そっと咲く花と、誰かの祈りがある。

ボクの名前は、幸せを意味していた。

最期にようやく、その意味を知ることができた気がする。

目を閉じれば、風が吹く。

もう「刺客」じゃない。

今はただの、ひとつの魂。

それでも──誰かがふと思い出してくれるのなら。

風に名前を乗せて呼んでくれるのなら。

ボクは、それで、満足だ。


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