レンズ越しの人生
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
ぼくは、眼鏡。
黒ぶち、少し重たい、古風なデザイン。
このレンズを通して、ひとりの男の人生を見てきた。
彼がぼくをかけたのは、小学校の終わりごろだった。
黒板の文字が見えづらい、と言って、はじめて眼鏡屋に連れて行かれた日。
鏡の前で緊張したように立って、ぼくをかけてつぶやいた。
「……見える」
その小さな声は、ぼくにとって最初の宝物だった。
中学、高校と、彼はよく本を読んだ。
ぼくのレンズの中で、活字が走り回っていた。
ときどき、教科書の隅っこに小さな落書き。
ときどき、教壇のほうを真剣に見つめる横顔。
好きな子をちらりと見る視線に、ぼくはほんの少し曇ったふりをした。
大学ではノートとにらめっこする時間が増えた。
そしてある日、彼女ができた。
ふたりで映画を観た帰り道、
彼はぼくを外して、ポケットにしまった。
「今日は、ぼんやりしたままでもいいや」
その意味は、今でもよくわからない。けれど、きっとやさしい気持ちだったんだと思う。
就職してからは、書類の山とパソコンの画面が日常になった。
ぼくはだんだん疲れを感じるようになったけど、
それでも、彼はずっとぼくを使ってくれた。
結婚式の日も、
病院の待合室も、
夜中に子どもの熱を心配して起きた時も――
ぼくは、彼の目の前にいた。
時折、別の眼鏡に浮気されることもあった。
軽いフレームとか、かっこいいブランドとか。
でも、なぜか仕事のときや、大事な話のときには、
彼はいつも、ぼくを選んでくれた。
「こっちのほうが落ち着くんだよな」って。
ぼくは、派手じゃない。
でも、彼にとって“素の顔”でいられる眼鏡だった。
やがて、子どもたちが独立し、
彼は定年を迎えた。
読みかけの本、庭の草花、孫の顔。
どれも、ぼくのレンズを通してゆっくり見ていた。
少しずつ視力が落ちてきて、
もうレンズじゃ追いつかなくなったころ。
彼はふと、ぼくをケースにしまった。
そして、しばらくして――
二度と、取り出されることはなかった。
遺品整理の日。
ぼくは、息子さんの手にそっと拾い上げられた。
「……これ、ずっと父さんがかけてたやつだよな」
レンズの隅に、小さなヒビが入ってる。
でもそれは、何十年もの時間が、確かにここにあった証。
ケースに戻される直前、
ぼくは一度だけ、部屋を見渡した。
静かな部屋、飾られた写真、
ぼくが見てきたすべてが、そこにあった。
ぼくは道具だ。
でも――誰かの人生を一緒に見守れる道具だった。
この目の前で見た景色は、
ずっとぼくの中で、曇ることなく残ってる。
ありがとう。
君の目のかわりに、世界を見せてくれて。
ぼくは、眼鏡。
君の、静かな人生の、透明な影だった。




