砂の城、影の終わり
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
砂は、すべてを等しく覆い隠す
音も、匂いも、記憶も
因幡の国は、もう国ではなかった
拡がり続けた砂に飲み込まれ
人は去り、名は消え
残ったのは、城と俺だけだった
下酷城
かつての防衛拠点は、今や墓標のように砂に沈んでいる
俺はその最上階の一室に籠もり、五年を過ごした
眠るために
そして、守るために
この城には、もはや守るべき民も、国もない
それでも俺が去らなかったのは
ひとつの約束があったからだ
城主の姫
この城がまだ城であった頃
砂に飲み込まれる前夜
彼女は静かに言った
――この城が崩れる時まで
どうか、ここを空にしないで
それだけだった
だが、それで十分だった
この一室は、戦のために作られている
扉は狭く、通れるのは一人か二人
部屋もまた無駄に広くはなく
踏み込んだ瞬間、否応なく“間合い”に入る
侵入者が来るなら、起きる
来ないなら、眠る
それだけの五年だった
俺は居合の使い手だ
居合とは、抜いてから戦う刀ではない
抜く前に、すでに勝敗が決まっている刀だ
構えも、踏み込みもいらない
必要なのは、静止と一瞬
刀身が光ったその時には
相手はもう、斬られている
俺の刀は、斬刀・孤影
真っ黒に染まった鞘に
透き通るほど薄い刀身
羽のように軽く
抜けば影のような軌跡だけを残す
血を吸うたび
速さだけを増していく
切れ味も、重さもない
ただ速さだけに取り憑かれた、不出来な刀だ
だが、俺にはこれでよかった
忍が来た
白い影
名を名乗る間もなく
孤影を抜き、鴉を放つ
羽ばたくような一閃
音より先に影が走り
白は二つに分かれた
久しぶりに、眠りを妨げられた
次に来たのは、奇妙な二人だった
女はよく喋り
男は、静かだった
男は強かった
間合いの取り方、踏み込み、視線
どれも無駄がなく
「斬られる側」の気配がない
一羽
三羽
五羽
鴉は増え
編隊を成して飛ぶ
影が影を追い
空間を裂いていく
――だが、届かない
男は、紙一重でかわす
あるいは、かわす必要すらなく
最小限の動きで鴉の“外”に立ち続けている
速さでは、まだ足りない
この男は
鴉の軌道を“見て”いる
速さを、速さとして認識している
理解した瞬間
結論は出た
今の鴉では、勝てない
速さが足りないのではない
覚悟が足りないのだ
この一太刀で終わらせる覚悟
自分が傷つくことを
すでに計算に入れている覚悟
俺は、息を整え
左肩へ刀身を当てた
そして、切る
痛みは、遅れてくる
だが血は、すぐに流れ
鞘へと吸い込まれていく
月影流―奥義―烏兎怱怱――
居合において
抜いてから勝敗がつかないことは恥であるという戒め
本来、居合は一瞬で終わる
刀を抜いた時点で
生死は決していなければならない
それでもなお斬れぬ相手に向かい
刃を振るい続けることは
己の未熟を晒すに等しい
だから俺は
その恥を引き受ける
血を代償に
刹那を削り
一太刀を“本来あるべき瞬間”へと近づける
鞘の中で、孤影が鳴いた
否――
鳴いたのは、俺の魂だ
これで終わらせる
この城も
この約束も
この孤独も
俺は踏み込まない
狙いも定めない
居合に、準備はいらない
ただ――
「抜く」と決める
世界が細くなる
視界が刀身の幅へ収束し
男の存在が
斬るべき一点として固定される
今だ
孤影を放つ
最期の鴉
速さだけを極めた
影の刃
鴉は速くなる
速すぎて、音が消える
空気は裂けず
影だけが残る
速さだけは
裏切らない――
はずだった
――だが
男は、空にいた
刀が走るより先に
すでにそこにはいない
影は地を這う
速さは平面を切り裂く
だが
空を取られた瞬間
その一太刀は行き場を失った
刹那
花が散るように
視界が崩れる
床に倒れ
砂の匂いを吸う
斬刀・孤影が
手を離れる
奪われる
ようやく
城は落ち
国は終わり
俺の役目も、ここまでだ
五年分の眠気が
一気に押し寄せる
眠い
ただ、それだけだった
姫との約束は
ここまで守った
これでいい
これでようやく――
影から解き放たれ
深く、静かに、眠れる




