砂漠に吼える狼
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
地球攻略作戦は、とうに泥沼だった
砂漠は焼け、地平線は揺らぎ、補給線は擦り切れていた
前線は動かない
勝ってもいないし、負けきってもいない
ただ、血と時間だけが消費されていく
その日、司令部は冷たい声で告げた
「主戦場を、宇宙へ移す」
人型機動兵器の搭乗員
士官
次の戦争を生きる者たち
彼らは順次、地表を離脱し、軌道へ集結する
"来るべき決戦のために"
地上戦は「整理」に入る――
そう、言葉は丁寧に選ばれていた
地上軍はすでに、人型機動兵器の量産に成功していた
皮肉な話だ
それを最初に考え、設計し、形にしたのは宇宙移民軍だった
宇宙用に生まれたそれらは、軽量で、跳躍力があり、多関節で自由に動く
地上人たちは、それを地表用に徹底的に作り変えた
結果――戦場は変わった
戦車は遅く
飛べない
地面を這いずり回り
上から踏みつぶされる
人型起動兵器の恰好の餌食にされた
そして、いつしか戦車たちは
“鉄の棺桶”と呼ばれるようになった
そんな頃――
砂嵐の向こうから、ひとつの影が姿を現した
巨大な砲身
低く、分厚い車体
履帯が砂を噛みしめるたび、大地が唸る
普段は、巨大な自走砲にしか見えない
重走タンク
かつて、地球攻略作戦の切り札として構想された兵器
戦車でもない
人型機動兵器でもない
その砲身は、
従来の戦車砲とは比較にならない射程を与えられ
地平線の向こう――
敵が「安全圏」と信じて疑わない距離からでも
正確に敵を撃ち抜くことを想定されていた
一撃で戦線を崩し
一撃で戦況を巻き返し
一撃で、停滞した戦争そのものを動かす
――そう期待されていた
砲を撃つためだけに存在する存在
戦線を引き裂き
戦況を覆し
停滞した戦争そのものを動かすはずだった――狼
だが、その牙が振るわれる前に
時代は変わりすぎていた
完成は、遅れに遅れた
膨れ上がるコスト
扱いきれない整備性
そして、敵の圧倒的な物量と速度
「もう遅い」
「今さら一門の大砲で何が変わる」
そう言われ続け
“切り札”はいつしか
“過去の遺物”と呼ばれるようになり
計画は静かに凍結された――
そして今日
皮肉にも
最も追い詰められた状況で、ようやく
「試験」という名の実戦を迎えた
整備デッキで、男はその機体を見上げていた
かつて、戦車部隊を率いていた男がいた
隊長であり老兵
幾つもの戦場を走り抜けてきた男
だが今は、前線から外れ
酒とクスリに溺れ
生き残ったことだけを罰のように背負っていた
彼は、人型機動兵器が憎かった
「あんなモンが……戦場の主役だと?」
酒瓶を床に転がし、吐き捨てる
速さだけで
跳ぶだけで
戦争を分かった気になる連中が
そんな男のもとに、辞令が届いた
重走タンク・試験搭乗員
拒否権はなかった
整備デッキで、男は機体を見上げた
低く、分厚い車体
普段は、巨大な自走砲にしか見えない
だが、それだけではない
油圧音
装甲が軋み
車体上部がせり上がる
変形
下半身はキャタピラのまま
上半身が起き上がり
両腕が展開し、巨大な主砲を支える
歪で、不格好で
理屈と執念だけで作られた姿
整備兵が資料を差し出す
護衛任務
脱出艇最終波発進まで、敵主力を引き付ける
任務完了後――
「……現地廃棄です」
整備兵は視線を逸らした。
「搭乗員たちは、宇宙へ」
男は悟った
使い捨てだ
「宇宙へ…俺たちは、元から帰り道なんて持っちゃいねぇ…
なんたって俺たちは”鉄の棺桶”しか乗れねぇからな…」
男は、自走砲の装甲に手を置いた
だが、その声に迷いはなかった
「……だがな」
低く、確かな声
「こいつは違う」
分厚い装甲を叩く
「遠くから撃てる
届かないと思ってる場所から撃てる
――それだけで、戦争はひっくり返る」
男は、笑った
「頭の固ぇ上の連中もな、
この一発を見りゃ、少しは考えを改めるだろうよ」
「重走タンクか…
こいつはいい…
“人型”なんかより、ずっと男前な見た目をしてやがる…」
「よし…名前をつけてやる…
フェンリル――神話の巨大な狼だ」
男は、フェンリルの装甲に手を置いた
そこには、長年戦車と共にあった者だけが持つ
静かな信頼が宿っていた
だが――
上層部がこの任務を戦車部隊に与えた理由は
信頼でも、期待でもなかった
彼らは知っていた
戦車という存在が
すでに”主役の座”を追われた兵器であることを
だからこそ、選ばれた
失っても「計算に入れられる」戦力
敵の目を引き
敵に“分かりやすい戦争”を信じさせるための餌
戦車が動けば、敵は食いつく
装甲が集結すれば、敵は「反攻」と思い込む
その裏で――
本当に守るべき者たちは、静かに空へ逃がされる
戦車部隊に与えられた役目は
勝つことではなかった
生き残ることですらなかった
敵に、信じさせること
そして男は
それを理解したうえで
なおフェンリルの装甲に手を置いていた
作戦は、最初から欺瞞だった
宇宙移民軍は、敵に誤情報を流す
「地上にて大規模反攻作戦を敢行」
「装甲戦力を集中、戦線突破を狙う」
敵は、信じた
いや、信じたがった
地上軍の主力は新兵ばかり
教本で戦争を学び
まだ死の匂いを知らない
作戦決行の日
フェンリルと戦車大隊は、砂漠の谷間に潜んだ
距離――一万二千
砂嵐越し
敵はまだ、こちらを「視認」していない
砲身は上げない
履帯も動かさない
砂と風と一体になり、ただ“在る”
フェンリルの中で、男が低く言った
「きたか…戦争を教えてやるよ…ヒヨコども…」
「……徹甲弾、込め!」
命令と同時に、自動装填機構が唸る
砲身内部を、巨大な弾体が滑るように前進する
金属と金属が噛み合う、重い音
「装填完了」
男は照準を動かさない
砂嵐の向こう
敵の人型機動兵器
跳躍前の、わずかな静止
教本に載っている“理想的な前進”
速度
高度
着地点
すべてが、読める
「……撃ェ」
次の瞬間――
世界が、砕けた
雷鳴の何倍もの砲音が大地を叩き
衝撃波が砂漠を平らになぞるように広がる
砲身が後座し、鋼鉄の巨体そのものが唸り声を上げた
空気が引き裂かれ
視界が一瞬、白く弾ける
音は遅れて追いつく
耳鳴りだけが残り
弾丸はすでに“そこ”を通り過ぎていた
一万メートル以上離れた地点で
敵の人型機動兵器が――縦に裂けた
上半身が、空中で弾かれる
下半身は、何事もなかったかのように数歩だけ前へ進み
そして、遅れて崩れ落ちる
砂が舞い
破片が遅れて降ってくる
一瞬
戦場が、完全に沈黙する
敵の無線が、遅れて息を吹き返す
「……今の、何だ?」
「レーダー反応あり! 砲撃だ! だが――距離が……」
「馬鹿な……この距離から、戦車砲だと?」
「ありえない! 戦車の有効射程外だぞ!」
混乱
ざわめき
理解の拒絶
「まさか……敵の新型兵器?」
「戦車が……撃ってきただと……?」
敵は、まだ理解できていない
自分たちが“迎撃している”のではなく
“獲物として選別され、撃ち抜かれた”という事実を
その瞬間を、老兵たちは逃さない
「移動」
短い号令
フェンリルの履帯が低く唸り、射撃地点を捨てる
ほぼ同時に――
別方向の谷間から、戦車大隊の砲火
撃つ
当てる
消える
「どこだ!」
「砲撃源を特定しろ!」
敵人型機動兵器が、跳ぶ
高く
遠く
着地――
「見つけたぞ! 戦車だ!」
敵の声に、苛立ちと嘲りが混じる
「隠れて撃つしか能がないのか!」
「どれだけ射程が長かろうと、戦車は戦車だ!」
「近づけば、ただの”鉄の棺桶”だ!」
その瞬間
戦車の車体側面から白煙が噴き出す
スモーク散布
砂嵐と煙が混ざり合い、視界が崩れる
「煙だと!?」
「視界が……!」
答えは、即座に来た
「目標!!敵人型!榴弾装填!!撃ェ!」
三両
五両
一斉射
煙の中を、爆炎の嵐が貫く
「ぐっ――!」
「被弾!」
撃って、消える。
履帯が砂を噛み、戦車たちは再び影になる
敵は追う
追わせる
「接近しろ!」
「押し切れ!」
敵人型機動兵器が前進する
前へ
前へ
――それが、罠だった
「……引きつけたな」
老兵の声が、低く響く
戦車大隊、焼夷榴弾弾装填
「撃ェ」
発射
次の瞬間
砂漠が――燃えた
火線が走り、地表を舐める
跳躍しようとした人型機動兵器が、炎に包まれる
「うわぁぁぁ!!」
「足が……溶ける!」
装甲の隙間から炎が入り込み
内部の機構を、操縦者を、焼く
敵は混乱する
だが、数が止まらない
「構わん!」
「数で押し潰せ!」
砂嵐の向こう
巨大な影が動く
巨大陸上戦艦〈ビックガン〉
移動する要塞
砲門が、ゆっくりとこちらを向く
その瞬間、戦場の“形”が変わった
低い唸り
次いで、空気が押し潰される音
〈ビックガン〉の主砲群が、一斉に火を噴く
砲弾は、戦車を“狙わなかった”
谷を
砂丘を
稜線を
地形そのものを、破壊した
谷が崩れ
砂丘が吹き飛び
遮蔽物だった岩盤が、粉砕される
衝撃波が走る
隠れていた戦車が、否応なく姿を晒す
「遮蔽物が――!」
次の砲撃
さらに次
地面が裂け
掘り下げられた陣地が、平らに均されていく
煙幕は意味を失い
影は消え
“隠れる場所”そのものが、戦場から消滅していった
その上を――
人型機動兵器が、跳ぶ
「今だ!」
「”鉄の棺桶”どもを踏み潰せ!」
「”飛べもしない”奴らが俺たちにたてついたことを後悔させてやる!」
上から
横から
包囲
戦車は、もはや逃げ場を失う
戦車が一両、炎上
また一両、沈黙
その時――
老戦車兵の一人が、笑った
「…もはやこれまでか…わしらに、帰る場所などない…ならば!」
アクセル全開
単身突撃
敵人型機動兵器が振り向く
「なっ――」
爆発
鉄と炎が交錯し、砂に沈む
「…これまでか…フェンリル…見せてやろうぜ…”飛べない奴ら”の最後のあがきをな!」
フェンリルが、動いた
油圧音
装甲が軋む
上半身が起き上がり、腕部が展開する
「なんだこいつ!?でかいぞ!」
「”鉄の棺桶”どもの親玉か!?」
「こいつが、さっきの”砲撃源”の正体か…」
フェンリルは、前に出た
燃える”同胞たち”の列を踏み越え
沈黙した影を背に
主砲が、吼える
一撃
正面の人型機動兵器が吹き飛ぶ
二撃
跳躍の頂点で、別の機体が空中分解する
「前進してくる!?」
「止めろ! 〈ビックガン〉に近づけるな!」
フェンリルは止まらない
砲撃の反動をそのまま前進力に変え
履帯が砂をえぐり、距離を詰める
腕部が振るわれる
装甲ごと殴り潰し
着地した敵を薙ぎ払い
踏み砕く
人型機動兵器が、道を作るように倒れていく
「押し返されている!」
「距離が縮まるぞ!」
「何をしている!?相手は一機だけだぞ!!」
「囲め!!」
〈ビックガン〉の巨体が、視界を埋める
砲塔
装甲板
司令塔の輪郭
目と鼻の先
敵人型機動兵器が、一斉にフェンリルへ向き直る。
「全機、火力集中!」
「装甲を削れ! 動きを止めろ!」
砲口が並ぶ
照準が重なる
次の瞬間――
集中砲火
実弾
ビーム
誘導弾
空気が裂け
衝撃が叩きつけられる
フェンリルの装甲が、連続して火花を散らす
装甲板が抉れ
外装が剥がれ
内部構造が露出する
「効いている! そのまま撃ち続けろ!」
だが――
フェンリルは、止まらない
撃たれながら
なお前へ進む
フェンリルの装甲が火花を散らす
そして――
履帯に、直撃
金属が裂ける音
駆動が止まり
巨体が、前のめりに沈み込む
それでも
フェンリルは倒れなかった
履帯、破損
警告音が、容赦なく鳴り響く中で、男は血を吐き、笑った
「ようやく…みえた、な…飛べなく…てもよ…へへ…この距離、なら…一発あれば、十分だ」
最後の装填
砲身が、〈ビックガン〉の司令塔を捉える
距離
風
砂
すべてが、整う
「撃ぇぇぇ!!」
一閃
砲弾は司令塔に突き刺さり
一拍の静寂の後――
世界が、白く爆ぜた
直撃
一瞬の沈黙
そして――
巨大な爆発
陸上戦艦〈ビックガン〉は炎に包まれ
砲塔が吹き飛び
装甲板が剥がれ
巨体はゆっくりと傾き
砂漠へと崩れ落ちた
その爆炎の背後で
まだ息のあった戦車たちが
最後の砲撃を放っていた
履帯が千切れようと
砲身が歪もうと
彼らは撃った
敵の人型機動兵器が、次々と倒れる
指揮系統を失った敵は混乱し
包囲は崩れ
戦線は完全に瓦解した
その上空――
黒煙を突き抜けて
友軍の脱出艇が、次々と宙へ昇っていく
閃光
推進炎
夜空へ伸びる白い軌跡
それを
砂漠に残された者たちは見上げていた
誰も、悔やまなかった
誰も、後悔しなかった
この時間を稼ぐために
彼らはここに在った
戦史には、こう記された
「決死の覚悟!
戦車大隊と重走タンク《フェンリル》の多大なる功績」
英雄の名はない
勲章もない
ただ、記録だけが残された
だが――
その時間がなければ
空へ逃げた者たちは、生き残れなかった
砂漠には、今も残っている
砲声の記憶と
狼と
“鉄の棺桶”と蔑まれた戦車たちの影が
誰にも語られず
それでも――
決して、消えはしない




