最後のラグタイム – 時間を取り戻す街
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
朝の都市は、いつだって同じリズムを刻んでいた
駅前のロータリーでは、人々が流れるように歩き、信号が変わるたび
整然とした群れが一斉に方向を変える
電車は秒刻みで到着し、スマホのアラームが鳴り、予定表がびっしりと埋まっていく
──早く、正確に
それがこの街の“唯一の拍”だった
立ち止まる人間はいない
誰もが何かに追われるように、息を切らしながら歩いている
風景は美しく整えられ、ビルのガラスは空を映すほど澄んでいるのに
その空を見上げる者は、ほとんどいなかった
そんな街の中心部に、小さな広場がある
ビルの建設ラッシュの中で、取り残されたような古い石畳の一角
かつては休日になると大道芸人や露店が集い、子どもたちの笑い声が響いていたという
今ではベンチも錆びつき、誰も足を止めることはない
その広場の片隅に──一台の古びたアップライトピアノが置かれていた
もう何年も前に、広場を再整備したときに「モニュメント」として残されたものだったが
今や雨ざらしになり、木の外装は色褪せ、鍵盤のいくつかは欠け、誰も近づこうとはしなかった。
その日、ひとりの老人が広場にやってきた
白い髭をたくわえ、くたびれた帽子をかぶったその男は
ゆっくりと杖をつきながらピアノの前に立つ
しばらく黙って鍵盤を見つめると、まるで昔の友人に再会したかのように
ふっと微笑んだ
彼は腰を下ろし、そっと埃を払ってから、両手を鍵盤の上に置いた
そして、ひと呼吸置いて──
♬ ポロン……タタッ……ポロロロン……
音が広場に響いた
最初はかすかな音
でも、街の喧騒の中で、なぜかその音だけが不思議と風を伝い、通りを抜け、人々の耳に届いた
奏でられていたのは、ラグタイムだった
かつて酒場や劇場を沸かせた、あの軽快な、少しだけ拍をずらした音楽
老人の指は震えているはずなのに、鍵盤の上ではまるで若者のように跳ねていた
ズレたリズムが、石畳に、ベンチに、ビルの壁に反響して、街の空気を少しずつ変えていく
最初に足を止めたのは、スーツ姿の若いサラリーマンだった
駅へ向かう途中、イヤホンを外し、思わず立ち止まる
次に、ノートを抱えた女子学生
予定で埋め尽くされた時間割が、ふと意味を失ったように感じられた
そして子どもたちがやってきて、ピアノの音に合わせてくるくると踊り始める
買い物帰りの主婦、休憩中のタクシー運転手、通りすがりの観光客……
一人、また一人と足を止め、広場を囲み始めた
老人は一言も発さない
ただ、淡々とピアノを弾き続ける
その音は正確ではない。時にはキーが外れ、音が抜ける
けれども、その“ズレ”と“欠け”こそが、人々の胸に柔らかく響いていった
スマホを見つめていた若者が、そっと画面を閉じた
学生がノートを置き、カップルが手を取り合い、スーツの男がネクタイをゆるめて深呼吸する
──あぁ、こんな時間が、あったんだ。それぞれの胸の奥に、忘れていた“自分の拍”が戻ってくる
老人の演奏は次第に熱を帯びていった
跳ねる左手がベースラインを刻み、右手がメロディを軽やかに舞う
風が吹き抜け、落ち葉が舞い、夕陽がビルの隙間から差し込む
まるで、街そのものがひとつのセッションを始めたかのようだった
ある子どもが手拍子を打ち、学生が口笛を吹き、サラリーマンが軽くステップを踏む
広場は音楽と笑顔で満ち、今まで見たことのない光景が広がっていた
やがて、曲はクライマックスへ
老人の指が一瞬、わざと拍をズラす──その瞬間、広場全体が静まり返る
そして最後の和音が鳴り響いたとき──
拍手
大きな、大きな拍手が、広場を包み込んだ
それは時間に追われる日常では決して生まれない、心からの拍手だった
空を見上げると、灰色だった空がゆっくりと青く晴れていく
人々の顔には、どこか懐かしく、温かい笑顔が戻っていた
老人は帽子を取り、軽く会釈すると、立ち上がった
杖をつきながら、ゆっくりと広場を後にする
残されたピアノは、まるで誇らしげに夕陽を浴びていた
──その日から、この街では少しずつ、“ズレた時間”が戻ってきたという
スマホを閉じて立ち止まる人、誰かと目を合わせて笑う人、ふと空を見上げる人
速さだけが、正しさじゃない
少しズレた拍の中にこそ、人の心は息を吹き返す
街のどこかで、誰かが口ずさむラグタイムの旋律が、今日も静かに流れている




