夢を運ぶもの
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
わたしは、どこにでもいる馬だった。
名門の子でもない。血統表に並ぶのは、誰の記憶にも残らない名ばかり。
見にくる人もいなかったし、写真に写ったこともない。
でも、ひとりだけ。
わたしをずっと見ていてくれた人がいた。
古びた厩舎の片隅。
歳を重ねた、手の大きなおじいさんの厩務員。
その人は、誰にも聞こえないように、でも確かにこう言ってくれた。
「こいつはな、速さじゃないんだ。でも、芯にある。根っこが折れない馬なんだよ」
誰も耳を貸さなかったその言葉を、わたしは覚えている。
何度でも、何度でも。
デビュー戦は6着。
その後も、掲示板に載るのがやっと。
新聞の馬柱に小さく名前が出ればいいほうだった。
でも、おじいさんだけは変わらなかった。
朝も夜も、吹雪の日も雨の朝も。
わたしの身体を拭いて、たてがみを整えて、そっと呟いてくれた。
「走れるってのは、すごいことだよ。勝てなくても、走る。それだけで、すごいんだ」
──ある日、中山競馬場。冬の終わり。
新馬戦といっても、注目馬がいるわけでもなく、
スタンドはまだ寒風に吹かれて閑散としていた。
そんな中、わたしはゲートを飛び出した。
抑えも躊躇もなく、ただまっすぐ、前へ前へ。
誰にも譲らず、リードを広げる。
──逃げろ、逃げろ。自分でも、なぜそう思ったのか分からない。
でも、脚が止まらなかった。
直線、影のように迫る足音を振り切り、わたしはそのまま先頭でゴールを駆け抜けた。
勝った。
大歓声なんてなかった。
でも、パドックの隅で拳を握って泣いていたおじいさんの姿だけは、今でも忘れない。
──それが、わたしの唯一の勝利だった。
その後すぐに、脚を痛めた。
静かに、引退が告げられた。
わたしは、誰にも知られることなく、牧場へ戻された。
繁殖としての価値も、さして高くはなかった。
それでも、静かに余生を過ごしていたある春──
わたしは、ひとつの命を産んだ。
生まれた瞬間から、なにか不思議な仔だった。
しっかりと地を掴む脚。まっすぐ遠くを見据える澄んだ目。
そして額には、小さな三日月のような白いあざ。
それを見たとき、胸が熱くなった。
──ルナ。
わたしの名前と同じ、“月”のしるし。
おじいさんが、また会いに来てくれた。
老いた手で仔の首筋を撫でながら、ぽつりと呟いた。
「この子は……夢の舞台に行くかもしれんな。いや、行くだろうな」
そして数年後──
仔馬は、夢の舞台に立った。
緑のターフ、満員のスタンド、揺れる歓声。
世代の頂点を決める、あの特別な舞台。
“皇帝”と呼ばれる存在へと至る、栄光のはじまりだった。
誰も知らない、小さな血の先に。
名もなき母の、名もなきレースの、その全ての先に。
確かにそこには、“風をつなぐ者”がいた。
わたしは、どこにでもいる馬だった。
だけど、誰かの心に残り、誰かに走りをつなげたのなら──
それで、充分だ。




