三十四
凜様へ
先日は取り乱した姿を見せてしまい、お礼も言えずに申し訳ありません。
あの日はとても恐ろしいことが重なり、凜様のことまで恐ろしく見えてしまいました。
助けたいただいたにも関わらず、失礼な態度であったこと、いまは恥いるばかりです。
思えば、初めて凛様をお見かけしたときから、そのお姿に夢を見ていたのかもしれません。
貴女は強く、気高く、美しく、女人であるにも関わらず、誰に阿ることもなく一人で立っていました。
空を舞う鳥のように何にも縛られていないように見えました。
凜様のようになりたいと思いましたし、隣に立つ陽鞠様と代わりたいとも思いました。
それが叶わぬなら、せめて近くで見ていたいと願いました。
強く憧れ、自分の夢を重ねすぎたのかもしれません。
自分の夢とは異なる姿を見てしまったときに、受け入れることのできなかった弱い私をお許しください。
正直に申し上げれば、あの日の凜様を思い出すと、今でも震えてしまいます。
それでも、私が凜様に感謝していることは変わりありません。
それだけは何としても伝えなくてはと思い、筆を取りました。
いつか、またお会いできる日があれば、これに勝る喜びはありません。
凜様と陽鞠様のこれからに幸多からんことを、遠い北の空からお祈り申し上げます。
乱筆乱文お許しください。
天羽渚
かしこ




