6話 「炎の力」
私たちがやってきたのは洋風の屋敷。こんなところに下層への入り口があるのかな?
「おーっほっほ! 誰かしら? 下層へ行こうなんていうお馬鹿さんは。」
奥の部屋に入るなり聞こえてきた耳障りな笑い声。おまけにその主は結構な美人で・・・なんで私たちの周りにはそんなのばっかりいるのかな! ど、どんな人が出てきても絶対にリュウトは渡さないんだから!・・・アレ? なんか違うかな?
「あら? 誰かと思えばアシュラじゃない? あんたクラスの悪魔がどうしたのよ?」
やけに親しげにアシュラに話しかけてきた女悪魔。いえ、アシュラの様子から言って向こうが一方的に親しげにしてるのね。・・・だからレミー、少し落ち着きなさい。
「ふん、ちょっとした野暮用だ。ユラ、貴様にも番人としての役割を果たしてもらうぞ。」
「ふ~ん、いいわよ。あなたは除くから4人、いえ戦えるのは3人ね。誰が私の相手かしら?」
レミーは上層で戦った。リュウトは私たちの切り札。ならば、今回は私よね!
「そなたの相手は私だ。早々にどいてもらおう!」
先制攻撃のファイヤーボールの連撃。ユラと呼ばれた悪魔は涼しい顔でかわしていく。
「あらあら、随分せっかちね。男と同じで女だってせっかちな子は嫌われるわよ。」
クスクスと小馬鹿にしたように笑うユラ。でもね、私の目的はダメージを与えることじゃない。相手の行動で大体の実力を知るための攻撃。避けていたのだから、きっと当たりさえすれば私の攻撃は通用する。
「そなたこそ随分ゆっくりしているではないか? 戦いは何時始まってもおかしくない。いかなる手段を持ちいろうと最後に立っていたものが勝者というのが戦いの唯一絶対のルールだろう?」
私はリュウトと共に戦うことを決めた。そのためならどんなに汚れてもかまわないと・・・。関係のない人を巻き込むことはしたくないけど、卑怯と呼ばれようとも負けることは出来ない!
「あら? 言うじゃない? じゃあ、こんなことされても文句はないわね?」
そのセリフとともに飛んできた氷の矢。氷の基本技フリーズアロー・・・別にこれと言うものではないと思うけど? そして容易に避けた矢が床に刺さる。
「ふふ、戦いのルールを言う割には戦いなれていないわね。覚えておきなさい! これが本当の結界っていうものよ!」
ぞくっとする寒気。結界・・・これには二つある。一つは地属性が得意とする自身を守る結界。そして彼女が言うのはもう一つの結界。自身の有利な環境を作り出すこと。
氷の矢が当たった床に浮かび上がる魔方陣。この部屋自体が彼女の仕掛けた罠!?
「ふふ、私は番人。当然、戦場はこの部屋。だったら、このぐらいの仕掛けをしているのは当然でしょ?」
魔方陣を中心にして、強力な冷気が吹き荒れる。その付近にいる私の足はすでに凍り始めている。・・・火と氷は反対属性。火が分子運動を活発にさせるのに対して氷は抑制させる。つまり、こんな環境だと・・・。
「くっ、グランドフレイム!」
凍り始めた足を溶かすためにも足元に対して炎を撃つ。でも、圧倒的な冷気を前に僅かに温度が上がったように思えるだけ。・・・それさえも次の瞬間には感じられなくなる。
「クスクス、無駄よ、無駄。そんな炎じゃ何にも出来ないわ。」
威力が足りないか・・・。ちらっと私はリュウトを見る。彼は何の心配もしていないという顔を、笑顔を私に見せてくれた。あなたがその顔をしてくれている限りきっと私は落ち着いていられる。そう、威力が足りないならさらなる力を注ぎ込めばいい。私はエルフのNO1.それはエルフの誇りも背負っているのだから!
「真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ!」
百年前の戦いで何度となく唱えたこの詠唱。この百年間、暇を見ては繰り返し練習した私の必殺技。あなたの罠とどっちが強いかしら?
「ファイヤーバード!!!」
キュィィィィイイイン! 甲高い声をあげて生まれ来るフェニックス(もどき)たち。昔は1匹しか生み出せなかったけど今は本来のこの技のとおり8匹を生み出すことが出来る!
「な、何!? この熱量は!? こ、凍りつきなさい! ダイヤモンドダスト!」
ユラが放った強力な吹雪は魔方陣の効果と相乗であたりの温度を急激に奪っていく。でもね・・・私のフェニックスはいかなる防御も貫き通す!
「飛びなさい! 勝利に向かって!」
この一言の命があればそれでいい。一度飛び去ったフェニックスは目標を燃やし尽くすまで消えることはない。・・・悲鳴さえも飲み込んで火柱が上がる。
さすがに命を奪うのははばかれたので、炭になる前に技を中断する。・・・これぐらいならしばらくすれば気がつくよね? ふぅ、やっぱり私は非情に成りきることは出来ないのかな。
ほんのちょっとの自己嫌悪。でも、あなたが優しく頭を撫でてくれる心地よさがそんな思いを消し去っていく。私、これでいいのかな? ・・・でも、その慰めかたって子供扱いしてない? う~、やっぱり頭を撫でるんでなくて抱きしめて欲しいよ~!
汚れることを覚悟してもやっぱりアキは優しさを隠せないのです。・・・そうでなくてはアキではないといえますが。
アキ「そういってくれるのは嬉しいが・・・戦いの場では優しさではなく甘えなのだろうな。」
受け取り方次第なきもしますが、そうともいえますね。でも、アキは随分強くなりました。単純に考えても威力は8倍!
アキ「相乗効果や一匹一匹も強くなっていることを考えれば10倍は堅いな。」
おまけにアキのことだから新技も・・・おっと、これは内緒でしたね。
アキ「まったく、そなたが率先してネタバレをしてどうするのだ。さて次章はついに下層へ降り立った私たち! 目指すは勿論魔王たちがいる深層魔界! 最後の番人は意外? それとも予想どうり? な、あやつ! 竜神伝説第二部5章「宿命の戦い」私たちはまだまだ止まらないわ!」




