3話 「水の戦い」
アーくんの案内で魔界を歩くこと3日・・・ぐらい。わたしたちは一見廃墟みたいに見える建物に着いたんだよ~。
中にいたのはどっかりと玉座っぽいのに腰を下ろした紫の肌をした悪魔。そして、その先にある空間のゆがみがわたしたちの進む道? ・・・きゃ! もう! いきなり炎の矢を撃ってくるなんてひっどいよ~! 当たらなかったからよかったけど・・・
「ふん、相変わらずだな。」
表情一つ変えずに炎の矢をいなしてアーくんがそう言う。・・・魔界ってこんな人たちばっかなの?
「貴様は・・・アシュラ!? お前のようなものがこんなところで何をしてる?」
やっぱりアーくんって魔界じゃ有名なんだね。うん、何だろう? この変な胸のもやもや・・・。わたしなんかじゃつり合わないから?
「何、ちと野暮用でな。こいつらに付き合っている。」
ほんのちょっとだけ口元に笑みを浮かべてアーくんは言う。
「相変わらずなのは貴様だよ。何を考えているのやら・・・。だが、貴様はともかくこやつらがここを通れるかは・・・」
「無論、実力は示させる。1対1でこの中の一人でも貴様を倒せればいい。・・・そうだったな。」
一人でも倒せればいい。・・・きっとアーくんは駄目なんだよね? リューくんとかなら確実なんだろうけど、ここはやっぱり・・・。
「だったら、わたしがやるよ~! たまにはいいところ見せないとね!」
わたしは水。わたしだってわかっているよ。水の力は補助であって戦闘向けじゃない。リューくんたちはきっとその補助が助かるって言ってくれるだろうけど、それでもわたしだって戦えるってところ見せたいもん。
アーくんはそれに良いとも悪いとも言わずに、ただ小さく「そうか」とだけ答えた。そして、肝心の相手はというと
「ふっ、天使がこの先に何をしにいこうというのだか。いいだろう、我が名はミラン・・・と言ってもわかるまい。アークデーモン、の名の方がわかるかな。」
ム~、わたしは天使だから行くんじゃないもん。わたしだから行くんだもん! ん? アークデーモン? 聞いたことある気がするなぁ?
「・・・アークデーモンとは上級悪魔のことだ。とはいってもこんな場所の門番をやっているとおり、こいつはアークデーモンの中では下っ端だ。逆を言えば、この先にいるのは皆上級悪魔クラスだと言うことだ。」
なるほど~! でもアーくん? なんでわたしの方を向いて説明するのかな~? 皆だってわかってないんじゃ??
「・・・アシュラよ、本当にこいつは天使か? 実は狸かなんかが化けてたりするんじゃないのか?」
ム~! わたしは純粋な天使じゃないけど狸なんかじゃないよ~! もう怒ったんだから! レーチェル様の戦い方で戦っちゃうよ~!!!
しばし睨みあう両者。レミーが俺が見たことがないぐらい真剣なのはきっと狸呼ばわりされて怒ったんだろうな。・・・単純なのは相変わらずと。
先に動いたのはレミー。無造作に、そして無防備にミランに向かって歩いていく。・・・って遠距離タイプのお前が近づいてどうする!?
当然と言えば、当然の結果。ミランは自身の足元に刺さっていた巨大な斧が振り下ろされて・・・レミーは真っ二つに!?
「うふふ、ざ~んね~んでした~!」
真っ二つにされたレミーの姿がすぅ~と消えていき、普段のレミーからは考えられないような妖艶さと相手を小馬鹿にしたような声がどこからか聞こえてくる。
「うふふ・・・うふふふふ・・・わたしを見つけられるかしら?」
響き渡る声。そして無数に現れるレミーの姿。・・・これは幻影? たしかに水の力は幻惑だ。それにあの態度はうまく相手を挑発しているが、レミーらしくはない。
「・・・ちょっこざいな。幻影など全て打ち消してくれる! グランドフレイム!」
ミランの地を這う炎がレミーの水の幻影を一つずつ打ち消していく。さらに
「まとめて消し飛べ! エクスプロージョン!」
強力な爆風を伴った炎があたりを埋め尽くし、残ったレミーの姿は一つだけ
「えっ? えっ? そんな! わたしの幻影が!?」
焦るレミーに振り下ろされる斧。驚愕の表情のままに血にまみれ、地に伏せるレミー。・・・そして
「はい、チェックメイトだよ~。わたしの勝ちでいいよね?」
ミランの背後より首に水で出来た刃を押しつけたレミーが笑顔で言う。勿論、彼女は無傷である。
「・・・認めよう。無数の幻影の中から唯一つ強固に作った幻影を本物と錯覚させるとはな。」
「レミー! 凄いではないか! いつの間にあんな戦法考えたのだ?」
レミーの幻影が斬られたとき、涙ぐんでいたアキが感極まったようにレミーにそう問う、まぁ、確かにそれは俺も気になるところだな。
「あ~、あれ? あれはわたしが考えたんじゃないよ~? わたしがお仕えしてる神様の戦法を真似してみたの!」
・・・アレがマネ? レミーは元が単純だから物真似はけしてうまくない。どうしても自分の個性が出てしまうのだ。・・・それでアレなのか? レミーが仕えている神様・・・底知れない怖さがあるな。
レミーの背後にちらつくレーチェルの影。出番は少ないのに妙に存在感のある人です。
レーチェル「存在感もいいけど、出番も欲しいわね。」
ついにあとがきにまで出てきたか。・・・正直性格的にはメイやマリアさえも凌ぐ最凶の人だから来て欲しくなかったんだけど
レーチェル「あら? 何か言ったかしら? 作者くん? うふふ、こっちでは会ってないからもう忘れちゃったのかしら? 再教育しないとね~?」
い、いやだ~! たたたた、た~す~け~て~!
レーチェル「うふふ、うふふふふ・・・。」




