4話 「闇への道」
俺たちを取り囲むように現れた四聖獣。その圧倒的な威圧感はあの邪竜神さえも上回るのではという気がする。
「ほう! そなたは竜。いや、噂に聞く竜神を継いだ者か。」
おそらく四人の中のリーダー格なのであろう鳥の姿をしたもの・・・朱雀が俺に語りかける。奴にとっては普通に語りかけてきただけなのだろうが、俺にとってはまるで拷問をかけられているような錯覚さえも覚える。
「ふむ、よく訪れた。いや、よく帰ってきたというべきか。」
朱雀に次ぐように亀の姿をした玄武が話す。静かな語り口調であるに関わらず、威圧感は朱雀に勝るとも劣らない。
「ちょっと待ってくれ! 帰ってきたというのはどう意味だ! 俺はここに来たことなどないぞ!」
さすがにこれを見逃すことは出来ないと、声を大にした俺に答えたのは
「無知だな。我ら竜族はこの地より生まれ、世界へと散って行った。汝も竜の血を引くもの・・・ここはそなたの血のルーツでもある場所なのだ。」
と次げたのは緑の竜(※青竜はその名前から青と思われがちですが植物の『青々と茂る』や『青虫』『青信号』などという表現と同じなので色は緑です。日本に緑と言う単語がなかった時代の名残ですね)。・・・ってちょっと待て!? 俺が竜の血を引いている?
「がっはっは! 青竜よ、こやつは自分が竜の血を引いていることも知らぬと見えるぞ! よいか童っぱよ、そもそも竜の力は容易に他者に譲れるものではない。その力を受け取れるのは竜の血を引くもののみよ!」
この島国まで送ってくれた船長を髣髴させる豪快さで言うは白き虎、白虎である。そんなこと先代は何も言っていなかった。・・・まさか、あの洞窟の最初の門はその資格を試すものだったのか!?
「白虎よ、そういうでない。まだまだ竜を名乗ることすらおこがましい未熟者なのだ。」
その声にはあざけ笑う様子はまったくない。淡々と事実を述べているのだ。
「青竜殿、少々待って欲しい。リュウトはこれでも竜神を継いだもの。そして、邪竜神を打ち倒したものだ。未熟ということはないだろう。」
アキが気丈にも意見を述べる。・・・ほんのちょっと前まで震えていたというのにな。
「そうだよ~! リューくんは未熟者なんかじゃないよ~!」
こちらは勿論レミー。・・・こっちは単純にプレッシャーなんて感知していないだけだな。
「そこの悪魔はわかっているようだが、先代の竜神も邪竜神も真に力あるものとは呼べん。いや、その領域から脱落してきたものということだ。」
再び語るは朱雀。力あるものの領域から脱落? ・・・そうか時の流れか。
「理解したようだな。1万年の長き眠りはかのものたちから力を奪い去ったのだ。・・・全盛期であったならば力あるものと呼べたであろうが。」
やはりか・・・ん? いやいや、俺たちはこんな話をしにここにきたわけではない。俺が未熟なのは俺自身が良くわかっているし、他者の力がいかに大きかろうと関係ない。
「そんなことはどうでもいいんだ。それより、ここを襲ったという魔族たちの親玉がいる場所に心当たりはないか?」
俺たちの持っている手がかりはここだけ。ここがはずれなら行くべき場所を見失ってしまう。暫しの静寂のの後、朱雀は口を開く。
「そなたが望むならば、我らが道を道を開いてやろう。」
俺たちの前に現れた光の床。・・・これが噂に聞く転移陣ってやつか?
「その床を踏めば、汝らは此度の騒動の真実の入り口へと運ばれよう。」
「だが、心せよ。闇を照らす灯篭は一つ。しかし、その灯篭は真実を映すこと叶わず。」
「忘れるなかれ、汝の力となるものたちを・・・。汝のもっとも近くにいるものこそが事態を打開するものなり。」
「けれど、そやつは所詮傀儡。真実の見えし時こそが真の地獄の幕開けとなろう。童っぱよ、それでも行く覚悟はあるか?」
発言は上から朱雀、玄武、青竜、白虎である。わかりそうでわからん言い回し・・・それもまた俺の覚悟を試そうというのだろうか。
「俺は迷わん。自身の命ならばいつでもかけられる覚悟はある。」
「かってにそんな覚悟をもたれても困るな。・・・私はそなたと共に帰る覚悟ならあるぞ。勿論、平和を取り戻した上でな。」
俺の身勝手な覚悟をいさめながらアキも続く。
「ん~、なんだか良くわからないけど、わたしはいつでも大丈夫だよ~!」
レミーには問うだけ無駄なんだろうけど・・・本当にいいんだろうか?
「ふん、心躍る戦いがそこにあるならば命など掛け金としては安いものだ。」
本当に楽しそうに笑うはアシュラ。こいつにとっては生きることそのものが戦う覚悟なのかもしれないな。
「わ、私だって、こ、怖くなんてないんだからね!」
明らかに強がり。・・・でも、はっきりと俺と共にこの先へ行くことを宣言するママナ。・・・本当に皆バカばっかりだ。
「さぁ、行こう!」
俺たちの戦いはきっとここからが本番なんだろう。
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「ルーンよ! これは一体どういうことだ!! 余はやつらをここにおびき寄せろなどといってはおらんぞ!」
闇に響く怒声。そこには以前のような余裕は感じられない。
「あら、誰かしら? そんなミスをしたのは。」
楽しそうにコロコロと笑うルーンにも以前のような敬意は見られない。
「ルーン! 貴様はこの魔王に逆らう気か!」
「魔王? あんた本気でばれていないと思っているの?」
一転不機嫌そうに、そして小ばかにしたようにいうルーン。
「何時から知ってたと思う? この百年の間? それとも百年前の戦いの最中? どれもは・ず・れ。答えは初めから。だって私は本当の魔王様の命にあなたが逆らわないかの監視役だもの。今までのことは全部報告してあげたわ。魔界に戻っても今までみたいには暮らせないわよ?」
もはや、言葉もないかのような闇の中の存在は
「ま、まさか・・・ヘルの奴もそうだというのか?」
と搾り出すのがやっとのようだ。
「ヘル? あいつのことは私も知らないわ。まぁ、あんたにいいように使われているような馬鹿じゃないと思うけどね。ひょっとしたら別の魔王様の手のものかもしれないわね。・・・じゃあ、後は何とかしてみなさい。ここで彼らを倒せれば許してもらえるかもしれないわよ。自称不死身の魔王様?」
最後にそういい残し、ルーンは闇の中へと消える。後に残されたものは静かに決戦のときを待つのみ・・・
ほんのちょっと明らかになったいくつかの伏線の答え。そして、影に見え隠れする魔王たち!
リュウト「邪竜神の次は魔王か。・・・なかなかヘビーな相手だな。」
そのぐらいじゃないとつりあわないという事情もある。・・・もっともその前に自称魔王様との戦いもあるけど。
リュウト「そこで敗れるようなら話にならないというわけか・・・。」
そういうこと! じゃあ、今回はこの辺で・・・次回もよろしくお願いします。




