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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
2部2章『語らいの夜』
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8話 「手を濡らすものは」

 息を切らせて駆け込んだビアホール。・・・何、この凄いアルコールの匂いは?


「あら? 女王様、どういたしました?」


 涼しい顔をして飲んでいるのはお姉ちゃん。・・・この人に付き合わされたらこうもなるか。でも、アシュラまで酔い潰されているなんて・・・ん? 肝心のリュウトはどこ?


「メイよ、リュウトがここで飲んでいると聞いたのだが?」


「ええ、確かにいましたよ。何時の間にかいなくなりましたが・・・。お部屋にお戻りになったのではないでしょうか?」


 また入れ違い!? なんで私はこうまでリュウトに会えないのかな? で、アシュラが酔い潰れるほどの量・・・いえ、少なく見ても倍は飲んでいるお姉ちゃんがまったく酔っていないのは何でかしら?


「程々にしてね。お姉ちゃんはともかくアシュラが明日動けないのは困るから。」


 これだけ酔っていれば私の言葉なんて聞こえていないでしょう。素の言葉遣いしても大丈夫よね?


「後で医務室に放り込んでおくから大丈夫よ。」


 ・・・まぁ、アシュラならたぶん平気でしょ? それよりリュウトのところに行かないと!




 コンコン・・・ただのノック。それなのに私の心臓は張り裂けんばかりに高鳴っている。


「・・・アキか? 悪い、今ちょっと会えそうもないんだが・・・」

 えっ!? りゅ、リュウト何かあったの! とりあえずマスターキーで・・・


「りゅ、リュウト! 一体どうしたのだ!」


 ベットにぐて~と倒れているリュウトを見て、私は心底焦る。ちょっと注意すれば原因はすぐわかりそうなものなのに・・・。


「あ、いや・・・ちょっと飲みすぎてな。」


 ・・・そうね。リュウトもあのお姉ちゃんと飲んだんだからこれぐらいは当然ね。部屋の中もアルコール臭いし・・・。


「まったく、そなたは何度私を心配させれば気がすむのだ。本当に相変わらずだな。」


  相変わらずなのは私だろう。リュウトのことになるとこんなことにさえ気がつかないで・・・無駄に心配して、折角二人きりなのに私の素の口調なんてとっくにばれているのに女王の仮面をはずす勇気がもてなくて・・・情けないわ。




「・・・そうだな。俺は本当に変れていない。救いようがないほどに・・・。」


 変りたいと思う。誰よりも強くなんてなる必要はない。だが、誰かを泣かせるようなマネはもうしたくないんだ。


「・・・リュウト。」


 ん? どうした、アキ? って、ちょっと待て!


「お、おい! ここは俺のベット・・・って抱きつくんじゃない! 俺だって男なんだぞ! 今、酔っているんだからな!?」


 信頼は嬉しいが、もう少し警戒心も持ってくれ! 俺の身が持たないから・・・。


「何を言う。リュウトが酒の勢いを借りてでも襲ってくれるような奴なら・・・。それに、私は百年・・・そなたとこうして触れ合える時を待ったのだ。」


 ・・・百年か。俺さえも(石化して考えることしか出来ることがなかったというのもあるが)自分の気持ちにうっすらと気づけるほどの時間。アキの気持ちに予想がつけられるほどの時間。アキはどんな気持ちで過ごしたのだろう。俺がこうして蘇ることを期待して? 生半端な希望はどれだけ彼女を傷つけたんだろう? だが、それでも俺は


「俺の手は血でべっとりと濡れている。アキは綺麗過ぎて俺には触れないよ・・・。」


 俺の手は血まみれだ。俺の体は積み重ねた罪の鎖でがんじがらめだ。・・・綺麗で優しいアキには俺は似合わない。レミーのように見える羽ではなくても彼女の持つ羽はどんな未来にでも飛んでいけるはずなんだ。


「私も・・・綺麗などではない。私の手だってもう、血で濡れているぞ? リュウトはそんな私に触って欲しくないと思うのか?」


「思わない。アキが汚れているともな・・・もしアキが汚れているなら、それは俺がつけてしまった汚れだ。これ以上俺の傍に居たら・・・キミは汚れていく一方だ。」


 そんなことは初めからわかっていたのに・・・それでも俺は近くにいて欲しいと思った。思ってしまった。そろそろ・・・限界なのかもな。


「もし、そなたが私が綺麗過ぎるというのなら、そなたの近くにいることで汚れていくというのなら・・・それでもいい。そなたが触れてもいいと思えるまで・・・私はいくらでも汚れよう。だから、私の傍にいて欲しいのだ。もう・・・離れたくなどないのだ。」


 消えるような小さな声。アキの小さな体がフルフルとゆれているのが伝わってくる。・・・俺の傍に居させたら汚してしまう。離れれば傷つけてしまう。・・・俺はどうしたらいい。


「罪の鎖に縛られた俺と違って、キミはいくらでも望んだ未来へと飛んで行ける羽を持っているのに・・・俺の傍に居たらその羽も折れてしまうぞ?」


「かまわない。私が望む未来はそなたの傍にいることだ。そこで羽折れ離れる術を失うなら、それは不幸ではなく幸せだ。それでもそなたは私の傍にはいてくれぬのか? そんなに私の傍にいるのは嫌なのか?」


 アキの目から流れ落ちる、一筋の涙が俺の手に落ちる。たった一滴、俺の手を濡らした血と比べてなんて少ない量か。だが、俺の手の汚れを覆い隠してくれる気がする。・・・そうだな、汚れたなら何度でも洗い落とそう。どれほどの鎖に縛られようと鎖を引きちぎって飛んで見せよう。アキの羽が折れたのならばアキを抱いて飛べばいい。


「アキ、今の俺には覚悟が足りない。キミを守る力もない。未来を導く知恵もない。・・・だからもう少しだけ時間が欲しい。出来ることならば、俺の傍で見守ってくれないか?」


 俺に出すことが出来る精一杯の結論。いや、これは結論とは言わないか。ただ、答えを出すのを先送りにしただけ。情けないにもほどがある。それでも・・・いつか必ず掴んで見せるさ、誰も泣かせない理想の世界って奴を。俺一人では届かない。でも、二人でなら届く気がするんだ。


「うん、うん! 勿論傍にいる。離れろって言っても離れないんだから!」


 世界一罪深い俺。その俺が幸せの前払いを貰ったんだ・・・果たさなければならないものはさらに大きくなったな・・・。


ようやく、再会後まともな会話をしたリュウトとアキ。・・・しかし、ちょっとシリアスでアダルトな会話です。年齢制限が要るような内容ではないけど^^


アキ「う、うむ・・・冷静に見るとこれはちょっと恥ずかしいな。」


アキもこうして大人しく赤面していると可愛いんですけどね・・・。


アキ「そなたはいい加減覚えた方がいいぞ? 口は災いの元だとな!」


・・・・・・


アキ「ムッ! 少々やりすぎたか? まぁいい、そのうち復活するだろう。では次章は竜神伝説第二部三章「偽りの決戦!」手がかりを求めてやってきたどこかで見たような島国。そこで待ち受けていたものとの決戦・・・だが、全ては偽りに消える? 物語はまだ動き出したばかり、膨らむ闇にも注目だぞ」

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