3話 「復活!」
・・・光? 久しくそんなものは感じていなかったが、石化が解けるとでも言うのだろうか? ・・・ってハンマー!?
俺は慌てて振り下ろされたハンマーを避ける。情けないといわないで欲しい。相手が普通の人間だろうと、武器が普通のハンマーであろうと当たれば痛いものは痛い。
「おお~! 竜神様!お蘇りになられましたか!」
蘇る? この人たちが俺を? ・・・どうやら、そんなことを気にしている暇はなさそうだな!
俺は上空から襲ってきた魔物を切り払う。どれほどの間石化していたのかはわからないが、解除されたばかりでどうにも感覚が鈍いな。さてと・・・
「アシュラ! 一匹はそっちに任せていいんだろ?」
どれほどの時が過ぎていようと忘れるはずのない顔に声をかける。
「ふん、当然だ。貴様こそ百年程度の眠りでこの程度の奴にさえ勝てんなどといわんだろうな?」
相変わらずのようで安心だ。しかし、百年か・・・長いと見るか短いと見るか、微妙な線だな。
さてと、あの人たちも逃げ出したようだし、肩慣らしといかせて貰おうか!
「ケケー、どうやらこいつら俺たちに勝つ気らしいぞ? 相棒。」
「ケケケー、俺たち上級魔族の力を知らねぇんだろ。」
上級魔族ねぇ? そんな大した力は感じないんだが?・・・気にせずに屈伸運動などしていた俺に苛立ったのか二匹揃って突撃してくる。
「ふん、リュウトの肩ならしには一匹いれば十分だ。貴様はオレの遊び相手をしてもらおう。」
もっとも途中で一匹アシュラに殴り飛ばされて一対一の形式になりはしたが・・・。
「ケケー、竜神! 死ねぇ!!」
・・・単調な動き、速度も遅い・・・見るまでもなく先が読める! 自称上級魔族の振りかぶった斧は半歩横にずれただけで俺の体に当たらず地面に刺さる。無論、そんな隙を見逃すつもりはない! 以前アシュラにやられたように顔に向かって跳びまわし蹴りをうってみる。
「ふぎゃ!」
奇妙な悲鳴を上げて吹き飛んでいく魔族。・・・おかしい、全てのものがゆっくりに見える。力があふれ出てくる?
「ケケー! き、貴様~~~!!」
怒りのままに突撃してくる魔族。昔、聞いたとおりだな・・・怒りに我を忘れたものは御しやすい!
「うぉぉぉおおおおお!」
体に溢れる力のままに、思いのままに力を振るう。俺の周囲に渦巻く風・・・風の防御技『ウィンドフィールド』防御技に分類されるが実際には攻防一体のこの技が突撃してきた魔族の動きを封じ、切り刻み、吹き飛ばす。
わかる。以前の俺にはここまでの力はなかった。竜神剣の能力が発動しているわけじゃない。むしろ竜神剣はまるで俺の力を試すかのごとく無反応なぐらいだ。ならば、効率がよくなった? それも違う、少なくとも目に見える変化はない。・・・つまり、百年間眠っている間に先代から受け継いだ力が完全に馴染んだんだな。
吹き飛ばされ地面でもがく魔族に一息で迫り、竜神剣を喉元に突きつける。
「ひっ!」
「さぁ、話してもらおうか? お前たちの目的は何だ?」
わざわざ俺が祀られていたらしい神殿(そんな大それた存在になった覚えはないんだがな)に来たということと先ほどからの言動を見る限り狙いは俺で間違いあるまい。問題はなんのために俺を狙ったのかだ。
「お、俺たちは竜神の石像を壊す。あ、あんたを殺して来いって命令されて・・・た、たのむ! 命ばかりは・・・。」
「・・・誰に言われた。」
俺はさらに剣を近づける。予想はしていたが百年・・・こんなに早く平和が崩れ去ろうとしているのか? いや、あの時のルーンやヘルを思えば百年良く持ったと言うべきなのだろうか?
「し、知らねぇ! 俺たちは後ろから脅されたんだ! そ、そうだ、声だけはわかる。アレは女の声だった。」
女・・・か。思い当たるのはルーンぐらいだが、決め付けるのは早計だな。これ以上こいつを脅しても情報は出てこないだろうし参ったな。おっと、ひとまず剣を引いてやらないと。
「た、助けてくれるのか?」
「ああ、二度と悪事に加担しないと誓えるならな。」
正直、こんな誓いに信憑性などないとは思うが無駄に殺したくはない。
「あ、ありがてぇ・・・誓う! 二度とこんなことはやらねぇ!」
「さっさと、どこへでも行け。」
さてと、アシュラはどうしてるかな。あいつのことだからもう片付いているとは思うが・・・と俺が後ろを向くと
「け、ケケー! 死ねぇ!」
はぁ、やっぱりか。振り向き様に首をはねる。やはり、何回経験しても慣れるものではないな。
「相変わらず甘い奴だ。だが、多少はマシになったといってやろう。」
当然のように、息切れ一つしないで背後に立っていたアシュラが言う。
「その甘さで傷つくのが自分だけじゃないってことを嫌ってほど思い知ったからな。・・・こんなことがあっても大丈夫なように配慮ぐらいはしてたさ。」
結局、俺はアシュラの言うように甘いのだろうな。俺の殺したくないは優しさじゃない。自分の心を守りたいだけなのだろう。それは優しさとは呼べない。
「はっ!」
突然襲い来るアシュラの拳。俺はバックステップで距離を取り、それをかわす。暫しのにらみ合いの後、アシュラの嵐のような連撃とそれを向かいうつ俺の竜神剣のぶつかり合う音が響く。どちらの攻撃もまともに当たれば致命傷になりかねないものだ。
だが、お互いに交わす言葉はない。アシュラは元より俺も何故と問いはしない。そんな必要はないからだ。・・・そうやってどれぐらい打ち合っていただろうか、どちらともなく攻撃の手を緩め始め、そして完全に止まった。
「「くっくっくっ・・・・あっはっはっは!」」
そしてお互いに大笑いである。
「百年の眠りで腕が落ちてやいないかと心配したが、逆に強くなっているとはな。面白い奴だ。」
「俺も驚いたんだがな。・・・それにアシュラも強くなったみたいじゃないか。まだまだ本気には程遠いようだけどな。」
一歩間違えれば死んでもおかしくないやり取り(もっともお互い本気じゃないし、アシュラなら寸止めぐらいはできるのだろうが)。だが、それでもそれは俺たちの挨拶代わりだった。
「当然だ。貴様が復活した時により楽しい戦いをするならオレも強くなくてはな。」
まるでそれまでのアシュラでは楽しい戦いができないとでも言うかのようなアシュラ。・・・俺はたしかに争いは嫌いだ。だが、どれほどの危険をはらんでいたとしても何故かこいつとの戦いは楽しいと思う。心の底から笑い、俺はようやく自分自身の復活を自覚できたのかもしれない。
ようやく主人公復帰です。前部から数えると3話の間いなかったんですね。・・・それを長いと見るか短いと見るかはお任せします。
リュウト「しかし俺は随分強くなっているみたいだな。」
以前言ったように第二部に入りましたから少し常識のレベルから逸脱しつつあります。もっとも百年の年月が経っていますから強くなったのはリュウトやアシュラだけではありませんが。
リュウト「アキ、レミー・・・そしてまだ見ぬ敵やあいつらもか。それが避けられない戦いというならば、どんな相手であろうと勝って見せるさ!」
さらに竜神剣の秘密の入り口あたりが見え出すのも第二部の特徴。さらに広がる竜神ワールドを応援していただければ幸いです。




