5話 「終われない物語」
綺麗な夕焼けが落ちる。本当だったら辛い旅の終わりを告げる感動の夕日になるはずだった。・・・なるって信じていたのに。
今の私には夕日なんて目に入らない。ううん、夕日だけじゃない。空中城が完全に地に落ち、崩壊したのを見た瞬間から溢れた涙で何も見えない。・・・だって! だって!!
「私・・・私! あなたに伝えてない! 好きだって! 愛してるって!! ずっと・・・ずっと私の隣にいて欲しいって・・・。」
いつか、いつか必ず言おうと思っていた。他の誰でもないあなたに知っていて欲しかった! でも・・・言えなかった。
「今なら・・・今ならきっと言えるのに! なんで・・・なんで! あなたは私の隣にいてくれないの!? なんで・・・私に笑いかけてくれないのよ・・・。」
わがままだってことはわかっている。でも、感情がそれを許してくれない。正直、憎いとすら思う。私の思いに気づかなかった、言いたい時に私の隣にいてくれないリュウトを・・・そして、言えるタイミングなんていくらでもあったはずなのに言えなかった私自身を・・・。
「なんで・・・ヒック・・・なんで私はあなたが隣にいるとき・・・グスッ・・・なんで、なんで私は! 私は~~~~!! うう、リュウトォォォォォォォ!!!」
もしも・・・もしも、私が自分の思いを言えていたならば、この結果は変っていたのだろうか? 答えるものなどいない平原に私の叫びだけがいつまでも響き渡るのだった。
「リュウトォォォォォォォ!!!」
あーちゃんの叫びが響き渡る。聞いていたくない、見ていたくない。胸が、心が痛すぎるから。・・・ねぇ、リューくん? あーちゃん、こんなに泣いてるよ? 全部リューくんの所為だよ? リューくんはいつだって自分を犠牲にしてわたしたちを守ろうとして・・・ねぇ、もし、本当に自分よりもわたしたちが・・・あーちゃんが大切なのなら帰ってきてよ・・・リューくん。
「レミー・・・お前は泣かないのか?」
アーくん・・・わたしのことをレミーって名前で呼んでくれたの初めてだね。本当にこんな時に・・・ずるいよ。
「泣かないよ・・・泣いたらいけないんだよ。あのね、物語はいつだってハッピーエンドで終わらないといけないの。だからね、わたしたちの物語はこんなところで終わっちゃいけないんだ。・・・だから・・・だから涙はハッピーエンドのうれし涙のためにとっておかなくちゃいけないの。・・・だから・・・・だから! これは涙なんかじゃないの! ないんだから!! うう、うわぁぁぁあああああん!!!」
黙って、ぎゅっと力強く胸に抱きしめてくれたアーくん。本当にこんなときばっかり・・・ずるいよ。
「そうだな、レミー・・・お前は泣いてない。オレは何も見てはいない。聞いてないぞ。」
わたしたちの物語はここでは終われない。だから・・・必ず帰ってきて。約束だよ、もう一人のお兄ちゃん。
こうして、一つの伝説の幕はいったん下りた。だが、これは仮初の平和・・・世界が再び竜神を必要とするときに伝説の幕は再び上がる。そのときまで戦い抜いた戦士たちにしばしの休息を・・・。
竜神伝説第一部・・・完
竜神伝説第一部・・・皆様どうだったでしょうか?
レミーの言うとおり、物語はまだここでは終われません。(終わらせようと思えば終わらせられる場所ではあるのですが)ここはあくまでも一区切りに過ぎないのです。
物語は全体から見ればまだまだ序盤。第一部で張られた幾多の伏線。数多くの謎たち。示唆されておきながら登場さえしなかったキャラたち。
第二部以降をお楽しみいただければ幸いです。




