3話 「決着」
竜神剣がどうして奴に有効打を与えられるのか・・・疑問はあるが、今はそれを考える時ではない!
「ん~? じゃあ、わたしたちはリューくんのサポートをすればいいのかな?」
そうだな・・・しかし、効果のない攻撃なら奴は見向きもしないだろうから、ここは・・・って!
「いっくよ~!ウォータショット乱れうちだぁ!」
れ、レミー! 乱れうちはいい! だが、せめて方向だけは邪竜神のいる方へ絞ってくれ! こ、これじゃあ邪魔にしか・・・
「愚かな小娘よ・・・ならばお前から我が闇の業火に消え去るがいい!」
以前白昼夢で見た邪竜神の技。俺の光と風の融合のモデルになってる技でもある。現実で見ると迫力が一段と違う・・・。
「きゃぁぁぁああ!」
くっ! あんなのの直撃を受けたらレミーは・・・間に合うか!
「いやぁぁぁああ! えっ!?・・・アーくん!!」
レミーを守る為に割り込んだのは俺ではなくてアシュラだった。アシュラの手から噴出した闇が邪竜神の炎を完全に遮っている。
「ダークウォール・・・オレの数少ない防御技だ。もっとも、闇を含む攻撃にはめっぽう強いがな。・・・か、勘違いをするなよレミー。攻撃が通用しない以上貴様の回復のサポートがもっとも有効だ。それゆえに、勝利のために庇ってやったに過ぎん」
「くっくっく・・・アシュラよ、そんな技で我が炎を防げるとでも?」
たしかに一時は完全に押さえ込んでいた闇の壁が徐々に押されていっているのがわかる。
「我ら竜族は貴様らとは生物としての根底が異なるのだ。竜族とは自然の脅威そのものが具現化した存在なのだからな!」
そうか・・・つまり奴、邪竜神は闇の脅威が具現化したもの。まさに闇そのものと言うわけか・・・!
「ならば・・・私の壁も追加させてもらおう!」
その声とともに突然現れたのは炎の壁。無論、作り出したのはアキだ。
「さぁ行け(行って)!リュウト(リューくん)!!」
三人の声が重なる。そうだ、三人に攻撃の手が向いている今が最大のチャンスだ!
「うぉぉおおおおお!」
気合とともに邪竜神に切り込む。・・・たしかにダメージはあった、ほんの少しだけ・・・。これでは致命には程遠い。
「くっ! まさか・・・これほどとは!」
アキの苦痛の声に振り向くとまさに今、炎と闇の壁が砕けようとしていた!
「くっ・・・貴様ら、どけ!!」
アシュラがとっさにアキとレミーを突き飛ばし、邪竜神の炎を一身に受ける。
「このぉ・・・・ふざけるな~!!」
気合とともにアシュラが炎を跳ね除ける。ぷすぷすと全身の毛が焦げてはいるが、幸いそこまで大きなダメージではないようだ。
「リュウト!・・・真紅なる業火よ。我が命の火を糧に偽りの生命となれ! ファイヤーバード!!!」
アシュラの突き飛ばされたアキが起き上がり様にファイヤーバードをうつ。勿論狙いはアレだ。
「行くぞ! 火炎竜尾斬!」
以前ウェアウルフを! アシュラを倒したこの技。だが・・・
「その程度の炎で何をするつもりだ!?」
邪竜神の吐き出した強力なブレスの前に炎は掻き消えてしまう。・・・おかしい、以前ほどの威力がなかった。そうか、以前使ったときは竜神剣の力の一部が発動している状態だった。どうすれば・・・どうすれば、この剣の力を使える? 思い出せ、今までのことを・・・
俺は認識していなかったがアキが言うには初発動であるあの神殿での戦い。俺はゴーレムを倒そうと・・・いや、アキたちを守ろうと必死だった。
ウェアウルフとの戦いのとき、俺は騙されていたとはいえアイカを助けようと思った。アシュラとの戦いのとき、俺はただひたすらアキを守りたかった。
そして、最後。ママナを救ったとき・・・俺はママナのために奇跡を祈った。そうだ! この剣が力を発揮する時はいつだって俺が心の底から誰かを守りたいと思った時だった。その思いの強さに呼応するようにこの剣は力を発揮した。なら!
「竜神剣! 俺に! 俺に力を貸せ!・・・俺のためじゃない。この世界に生きる命を守る為! 俺の命の全てを使い果たそうとも! 世界の・・・『希望』を守る為に力を示せ!!」
言葉にした思いに答えてくれたのか竜神剣が今までのどの時よりも強く光る。その後、強い光が集約するように剣には穏やかな光と使い手である俺さえも恐ろしいほどの力だけが残った。
「そ、その光は!? その力はぁぁあああ!!!!」
邪竜神の悲鳴とも言うべき叫びが漏れる。そう、奴はこの力を知っているはず! あの白昼夢の続き・・・1万年前の決着もまたこの力だったのだろうから。ライオスは・・・先代はきっとあの場にいた女性、レーチェルとか言ったあの人を守りたいと思っただろうから。
ざしゅっ!・・・ただ振っただけの剣が邪竜神の皮膚を軽々と切り裂き、血があふれ出る。
「また・・・また我はその剣の前に敗れるのか!?またしても長き眠りに・・・」
違う。この剣は封印の剣ではない。・・・何かを守る為に何かを壊す剣だ。先代は封印しかできなかったわけではない。あえて封印という手段をとったんだ。この二人は兄弟だったんだから・・・だからあの時に言った、『此度の戦いは我の不始末。封ずることしか出来なかった我の責だ』と。きっと、あの言葉はあの時自分が覚悟を決めていたら・・・と言う意味だったのだろう。 アキの炎の力を込めた時、アレだけの力を発揮したように・・・俺の風の力だって力を発揮するはず。魔法としてではない、純粋にエネルギーとして力を送りこむ。見た目は変らない・・・けれど、感じる力はさらに強くなった。
「竜神流・・・風竜斬!!」
「竜神・・・だと? 貴様が! 竜族とも呼べぬ貴様がその名を名乗るのか!?・・・許さぬ! 許さぬぞぉ~!!」
突撃をする俺に邪竜神は闇の炎を吐き出す。だが、俺は避けない。避ける必要がない。目には見えなくとも剣がまとっていた風が炎を跳ね除ける。そして
「ぐおおおぉぉぉおおおお!!!」
竜神剣は邪竜神の心臓を突き貫いたのだった・・・。
ついに決着!ですが、これで世界は平和になりました。めでたしめでたし・・・で終わるほど甘くはないのです。
メイ「普段はご都合主義なんですから、こんな都合のいい話があってもいいのでは?」
・・・久しぶりに出てきていきなり言うな。でも、そうはいかない・・・まだ、2部以降に解決する伏線は山ほど残っているのだから!
マリア「でも、ちょっとは平和な時間もあるでしょ? リュウトくんも当然享受できるわよね?」
・・・・・・・・・・・
マリア「ちょっと! その沈黙は何よ!」
メイ「リュウト殿が享受できないとなると・・・女王様も幸せでは・・・・」
マリア/メイ「フフフフフ・・・・」
勘弁してくださ~い!!!!




