2話 「賭けるものの価値」
玉座の間
そのあまりに大きな玉座にどっかりと腰を下ろしていたのは推定10mほどの漆黒のドラゴン。以前見た白昼夢(5章2話参照)で見たあのドラゴンだ。
「とうとうここまで来たか。貴様らごときにここまで道を進めさせるとは我が部下たちのなんと不甲斐無いこと。・・・いや、裏切り者三人のせいかな。なぁ、アシュラよ・・・。」
けして大きな声ではない。だが、大気が震えるかのようなこの威圧感。これが邪竜神・・・太古の昔より竜神と呼ばれし真の竜の神か。だが、そんな存在に睨まれたアシュラは涼しい顔で
「裏切り者? 貴様に裏切られるような臣下がいたとは知らなかったな。・・・オレは貴様ごときに従った覚えはない。おそらく奴らも同様だろう。」
そう言い切った。そして、邪竜神もアシュラとのやり取りに大した意味は求めていなかったのだろう。次に奴が視線を向けたのは・・・無論俺だ。
「光の竜、我が弟ライオスの後継者。偽りの竜の神よ、お前は何を求めここにき、何をなさんと言うのだ?」
変らぬ静かな問いかけ。それでもなお、俺の体には震えが走る。・・・静かに目をつぶる。心の内を見つめる。俺が返すべき言葉はこれ以外には考えられない。
「俺が求めるもの・・・それはこの世界だ。皆が笑っていられる世界。不完全かもしれない、問題も山積している。だが、それでもなお俺はこの世界が好きだ。お前にそれを壊させはしない!」
世界を救う・・・そんな大それたことを言うつもりはない。それは初めから今までずっと変らない。俺は・・・俺の理想を追ってここに来たんだ!
「我は世界を壊すのではない。世界を創るのだ・・・いや、これ以上の問答は無駄だろう! 我が名はダロン! ダロン=アルバード!竜族の誇りと、竜神の名・・・そして1万年前の恨み! 全てに賭けて我は汝を滅ぼさん!」
邪竜神の賭けるものか・・・だが、賭けるものがあるのは俺とて同じ!
「悪いが・・・竜神の名は俺がすでに引き継いでいる! そして俺も賭けよう、この名と平和の祈りと・・・この俺の命を!」
どちらが先に動いたのか、それは俺にもわからない。だが、玉座と入り口のちょうど中央で竜神剣と邪竜神の爪がぶつかり合った。それだけが事実である。
剣と爪のつばぜりあいは互角。・・・それは俺の不利を意味する。当然のごとく襲い掛かる尾の鞭を上空に跳びかわしながら距離をとる。改めてわかるな、邪竜神の強大さと先代の偉大さが。だが、邪竜神は一人(一匹?)先代は2人で戦った。俺は四人・・・個の力で勝てなくてももいい。欲しいものは未来なんだ!
「邪竜神! 覚悟!!」
「いっけぇ~! イリュージョンアロー!」
アキのファイヤーボールマシンガンとレミーの必殺技が交錯する。だが、どちらも邪竜神には当たらなかった。・・・避けられたのではない。すり抜けた・・・そんな感じだ。
「そのような攻撃など無駄よ。・・・我は闇。いかなる力も我を傷つけること叶わず。」
闇? そういえばあの白昼夢でもそう言っていたような。・・・ならば何故、先ほどの俺の一撃は防がれたとはいえ何故当たったんだ? 少々試してみるか!
「アシュラ!」
「おう!」
俺とアシュラのダブル攻撃。だが、邪竜神が見ているのは俺だけだ。一瞬のアイコンタクトの後、俺は横に大きく跳ぶ。それを追う様に繰り出された尾を避ける。その隙をつき、竜神剣の一撃をうつが
「うぬぅ!」
寸前で下から突き上げられた爪に阻まれてしまう。その勢いを利用して上空からうった蹴りとその間におこなわれたアシュラの攻撃はすり抜けられる。
「竜爪閃!」
目立った戦果はないが俺が単独で使える唯一の攻撃技『竜爪閃』。三本の風の刃は2本までは防がれたが、1本は邪竜神の体に僅かながらに傷をつけた。
今までの結果からわかること。アシュラの攻撃さえも通用しないなら威力じゃない。俺の蹴りもすり抜けられているから俺自身の何かでもない。当たったのは竜神剣の二撃と竜神剣を媒体にした魔法剣・・・考えるまでもないな。こいつに有効打を与えられるのは竜神剣のみ! ってことか
さすがにラスボスだけあってやっかいです。アシュラさえも歯牙にもかけず、頼れるのは竜神剣だけ!
アシュラ「ふん、あの特殊能力さえなければどうにでもなるものを・・・」
リュウト「しかし、竜神剣も謎が多い剣だよな。一体どんな構造をしているんだが・・・」
竜神剣の謎はこのシリーズ中最大級のものですからね。・・・真の正体が明かされるのは最後の最後ですし^^
アキ「そのようなことは後で考えればよい! 今は奴を倒すだけ・・・私たちの幸せのために!!」
レミー「お~! あーちゃんが燃えてる~~!」




