1話 「竜の泉にて」
ん?・・・ここはどこだ・・・・ガボッ!? み、水の中~~~!?
「ガハッ! ゴホッ! ゲヘッ!・・・い、一体何があった!?」
慌てて、水面に顔を出す。確か俺はレミーの話を聞いた後、急に眠くなって眠っていただけのはずなんだが?
「・・・だから言ったであろう。この方が効果的だと。」
腕を組み、憮然としたように言うのは・・・アシュラか。
「おお~! リューくんが生き返った!!」
元気に騒ぐのはレミー。よかった、とりあえずは元気が出たみたいだ。・・・ん? 生き返った? 俺が?? ってことは・・・
「!?・・・・ガハッ! ゲホッ!」
突然何者かが飛び掛ってきて俺は再び水を飲んでしまう。
「い、一体誰だ!?」
涙目になりながらも俺は襲い掛かってきた人物を睨み付ける。・・・だが、そこにいた人物を見たとき、俺は二の句が告げられなかった。
そこにいたのは、無論アキである。だが、その泣き腫れた目がなんとも痛々しかった。
「お、おいおい・・・一体どうしたって言うんだ? そんな泣いて・・・。」
「馬鹿! 馬鹿!! 馬鹿ぁ!!!・・・そなたは自分がさっきまで死んでいたことをわかっているのか! そなたの心臓が止まっていることに私が気づいた時の気持ちがわかるか!? 必死に心臓マッサージをしてもそなたの脈が戻らなかった時の私の気持ちがわかるかぁ・・・。私まで・・・グスッ・・・私まで・・・ヒック・・・私まで!心臓が止まるところだったのだぞ・・・。」
アキの前で俺の心臓が止まったのはすでに二回目・・・。だが、アキの様子から見て今回は本当に死ぬところだったのだろう。危うく死ぬところだったということに何も感じないわけではないが、それ以上にアキの心を傷つけてしまったことが悲しかった。
「ごめん・・・・ごめんな。」
以前(7章1話)のように俺はさらさらとアキの髪を撫でる。・・・しかし、俺も情けないな。アキをこんなに泣かせておいて・・・傷つけておいて、嬉しいなんて思ってしまうのだから。
私がリュウトの異変に気づいたのは、リュウトがまるで糸が切れた操り人形のように倒れたから。
リュウトにはまるで私が心臓マッサージしたみたいに言ったけど、実際にマッサージをおこなったのは実はアシュラなの。私はただオロオロして、最後には泣き叫んでいただけで・・・何の役にも立てなかった。
結果としてアシュラの力でマッサージしても駄目だったから、レミーの提案で元々目的地だった竜族を癒す泉に連れてきたんだけど・・・アシュラはリュウトを背負って、レミーとママナは先行して正確な場所を確認しに行ったのに、私はリュウトの傍から離れることが出来なかった。・・・目を離したら消えてしまうんじゃないかって・・・そんな気がして怖かったの。
ママナはアシュラがリュウトに何かしないように監視しててなんて言っていたけど、アシュラがそんなタイプじゃないことはママナだって知っているから気を使ってくれたんだよね? 自分だって泣きそうな顔をしていたのに・・・。
レミーも・・・レミーは見た目じゃわからなかったけど、彼女だって平気なはずはない。私にもわかる。あの子は喜怒哀楽のうち哀だけを何故か隠そうとする。それも結構うまい。いつか・・・話してくれるよね? レミー・・・。
そうして、不思議な泉にたどり着いて・・・無造作に泉にリュウトを投げ込んだアシュラに抗議して・・・リュウトが息を吹き返して・・・。
本当はもっと! もっといっぱい言いたいことがあった。あれほど死ぬなといったと、死なないと約束したと、無茶ばかりしないでくれと・・・でも、リュウトの無事な顔を見たら何も言えなくなっちゃった。だからね・・・言うのはこれだけ。
「そなたには・・・本当にみっともないところばかり見られる。これはもう・・・責任を取ってもらうしかないな。」
自分でもかなりの無茶を言っていると思う。まぁ、裸を見られたわけでなし、本当に責任を取ってけ、結婚・・・してもらおうとは思っていないけど・・・・も、勿論、してくれるなら嬉しいけど、じゃなくて・・・間接的に私の思いを伝えられれば、意地っ張りで臆病な私の気持ちに気づいてもらえれば・・・それでいい。
「責任??・・・一体何の話だ??・・・・まぁ、それはそうとレミーたちの姿が見えないが?」
「そ、それはそうと・・・だと!? はぁ、そなたに期待した私が馬鹿だったのだな。・・・しかし、先ほどまでそこにいたと思うのだが?」
甘かったわ。いくらなんでもこれぐらいはって思ったんだけど、リュウトの鈍さは想像の斜め上をすっ飛んで行ったって感じね。他のことには結構鋭いし頭だって悪くはないのになんで恋愛ごとに『だけ』こんなに鈍いかな!?
毎章のごとく死んだり死に掛けたりしてるリュウト。いい加減心配してもらえなくなりそうです。
アキ「逆に毎回心配している身にもなって欲しいものなのだがな。」
第2部までお待ちください・・・ってところかな? 2部以降は大分強くなっていく・・・予定だから。
アキ「しかし、リュウトの鈍さはどうにかならんのか? 私がアレだけアプローチしているというのに・・・。」
はっきりと好きだ! 結婚してくれっていえばさすがに気づくと・・・
アキ「わ、私にそんなことを言えというのか!? む、無理だ・・・私にもプライドが・・・。」
いや、あなたの場合はプライドじゃなくて恥ずかしがっているだけ・・・ぎゃぁぁぁぁああ><
アキ「口は災いの元って言うだろう?」




