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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
1部8章『憎しみを越えて』
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5話 「魔剣の咆哮」

 気合をともに敵に向かって飛び込んでいくのは俺とアシュラ。背後からおこなわれるアキとレミーの援護射撃が心から頼もしい。


「リュウト!・・・ごめん!」


 謝りながら攻撃してくるのはママナだ。だが、精彩さを欠く動きでは今の(今ですらだろうか)俺たちを捕らえることは出来ない。しかし、いくら俺たちがママナを攻撃できないとは言え、ママナばかりを攻撃に回して前に出てこないヘルは何を考えている?


 ママナをかわし、背後にいるヘルに切りかかる。さすがにこれに対してはしっかりと剣で防御してくる。伝わる衝撃に俺の体が悲鳴を上げるのがわかる。無意識のうちにかけたブレーキにより威力をそがれた俺の攻撃は、ヘルにダメージを与えること叶わず(むしろ俺の方にダメージがあった)逆に大きくはじかれてしまう。


 ??・・・僅かにママナに止められたアシュラとの距離もある。ママナに当てないように遠慮されたため後方支援もない。今ならば俺に追撃を食らわせるのは簡単だったはず・・・それが何故、仕掛けてこない?


 やはりそうだ。ヘルの目的が俺たちを倒すことだとは思えん。・・・奴は俺たちの前に現れてから何をした?俺を挑発し、俺たちが万全でないというのもあるが実力差を見せつけ、そしてわざわざママナを呼び出して現状を俺に知らしめた。・・・そうか! あいつの目的は


「残念だったな、ヘル! お前の目的はすでに叶うことはない!」


「ふっ、何を馬鹿なことを。貴様らに俺が倒せると思っているのか!」


  「・・・お前の勝利が俺たちを倒す、殺すことならばとっくに勝負はついているはずだ。」


 ヘルの表情が曇った気配がする。こいつはどうやらアキと同じタイプのようだな。何かの為に自分を隠している・・・だが、その割にはポーカーフェイスは出来ていない。


「お前の目的は俺を絶望させ、戦意を折ること。いや、心を壊すことかな?・・・何の為かは知らん。俺か、それともこの中の誰かを殺したくない理由があるのか、それともまったく別の理由があるのか。」


 無意識になのだろうか? ヘルが後ろに後ずさる・・・どうやら図星をついたらしいな。


「くっ!?・・・ママナよ、俺は竜神様に呼ばれている! お前はここに残って奴らを始末してくるのだ!」


 そういい捨て、ヘルは闇の中へ消えていく。しかしまた、ベタな言い訳をしたものだ。だが、あの闇は一体なんだ? 闇や雷には転移系の魔法はない・・・とアキが言っていたんだがな?


 いや、そんなことより今はママナをどうするかだ。ママナを残したのはママナには俺たちを実力的にも精神的にも殺せないと判断してのことだろうが・・・俺たちも手を出せないのは同じ。


「リュウト・・・どうするのだ。」


 アキが心配そうに聞いてくる。さすがのアキも魔族の機械・・・それも体内に埋め込まれているものの対処法なんて知らないか。


 何も答えることが出来ない俺。だが、その沈黙がすでに答えとなってしまったようだ。


「え~! リューくんもあーちゃんもわからないの~! う~、わたしとおんなじかぁ・・・じゃあ、わたしも考えないと!」


 何故だろう? 確かに案はないのだが、レミーと同じと言われると無性に悲しくなるのは・・・。有効な解決法は欲しいところだが、それを出したのがレミーだというのは受け入れがたいと思うのは・・・。俺の横で渋い顔をしているアキもきっと同じことを思っているんだろうな。


「リュウト・・・もういいよ。もういいから楽にして。・・・・私、もう人を殺したくないの! リュウト達を傷つけたくないの!! だから・・・お願い。私を・・・殺して。」


 疲れたように、でもとても綺麗にニッコリと笑ったママナ。・・・できない。出来るはずがない! 何かあるのではないか!? 俺の知らない方法が! 俺の知らない力が!!・・・もしこの世に奇跡があるのならば、今この瞬間に! 他ならぬママナの為におきてくれ!


 ん? 熱い。・・・手? いや、熱いのは・・・竜神剣か!・・・・・・・・そうだな。このままではまさに八方塞りだ。ここは・・・お前に賭ける!


「竜神剣! お前が『究極の魔剣』と言われたのならば! 今ここにお前の力の一端を示してみろ!」


 確証があった。・・・今の竜神剣は本来の力など微塵も発揮していないと言う確証が。・・・だから、この剣ならばもしや・・・そう思ったんだ。




 リュウトの声に触発されたように竜神剣が光り輝く。それも今までにないくらい強い光だ。


「リュウト! それは駄目だ~~!!」


「心配するなアキ! きっと、きっと! この力ならママナを救える!」


 違う! そうじゃない!! あの時の・・・あの時のアシュラ戦の光り方ですらリュウトはこんなにも深く傷ついた。あんな強く光っているのに! 今のリュウトは危険な状態なのに!!・・・リュウトの体がもつわけ無いじゃない!!!!


「ぐぉぉぉおおおおお!!!」


 響き渡った竜の咆哮は、はたして幻聴だったのだろうか・・・。




 体が熱い! 手が・・・いや体全体が勝手に動く!?


 そして・・・まるでそうなるのが当たり前のように竜神剣はママナの体を吸い込まれるように肩口からわき腹へと抜けていった。


「ハァハァハァ・・・」


 呼吸が苦しい。今にも全身がばらばらになりそうだ。・・・でも、そんなことを気にしている場合ではない!


「ママナ!・・・ママナ~~~!!」


 助かるはずがない。だが信じられなかった。・・・ママナが、ママナが死ぬなんて・・・。


「えっと~、何かな? リュウト。」


 ・・・・・・えっ?


「ママナ!? 無事なのか!? 生きているのか!!!?」


「う、うん。私も斬られた時には死んだって思ったんだけどね。何故か、どこも怪我していないし。あ、あと~・・・私の体の中の機械も壊れたみたい。ほら、あいつらの命令どうりに動かなくてもなんともないもん。」


 ・・・つ、つまり、ママナは助かったってことか? 俺の手の中の竜神剣がまるで当然だろと言わんばかりにチカチカと明点を繰り返していた。

不思議な奇跡の力で一件落着♪


アキ「今回の功労者はどうみても・・・」


あ、それは一応言わないで下さい。誰がどう見てもですが、明言するのとしないのではまた違いますから。


アキ「なるほど。まだまだ、かの存在には謎が多いというわけだな。今回の力も全容には遠いのだろう?」


勿論です! まだまだこんなものではありませんよ。性質から言って持っていて当然の能力ではあるのですが・・・アレ? ひょっとして僕・・・自分から言わされちゃってる??


アキ「私が言わせたみたいに言わないで欲しいがな。」


あはは・・・読者様も気づいているよな・・・。


レミー「えっ? えっ?・・・一体どういうこと~~!?」


こんな奴は例外中の例外だし・・・。

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