1話 「治療不可能!?」
アシュラが去った後、倒れたリュウトを今レミーが治療している。レミーだって本当は休息が必要な状態であるのに無理を押しての行動だ。
私の心に忍び寄る暗い影・・・それは不吉な予感。リュウトは毎回無理をするから、毎回のように倒れている。でも、今回は今までとなんか違う気がするの。
「あーちゃん・・・。」
治療を終えたのだろう。レミーが私のところへ戻ってきた。顔色が青いのは疲れの所為だろうか・・・それとも。
「ごめんなさい・・・わたしじゃあ・・・リューくんを治せない。」
予想していた言葉、覚悟していた言葉・・・でも絶対聞きたくなかった言葉。
「リューくんの神経ズタボロになっているの。わたし・・・あんなの見たことない。どんなことが起こればあんなことになるのか想像もつかない。でも・・・リューくんはもう・・・戦えない。」
原因・・・それはきっと竜神剣だろう。あの異常な発光、そしてリュウトに与えられた力・・・それがどのような経緯でリュウトを壊したかまではわからないけど。
「・・・そうか。」
でもレミーの言葉に対して私はこれしか言えなかった。凄く複雑な気持ち・・・リュウトが戦いが嫌いなのは知っている。だから、これでよかったような気も少しはしなくもない。・・・・でもやっぱり悲しい。うん、彼がまともな状態でないことが・・・良い訳がないよね。
「ごめんなさい・・・。」
レミーが・・・どんなときでも笑顔を絶やしたことのないレミーがポロポロと涙をこぼす。
「泣くな・・・そなたの所為ではない。」
「違うの・・・違うの! あーちゃん・・・。さっき、わたし戦えないって言った。でも本当はいつ・・・今この瞬間にでも死んでしまってもおかしくない状況なの!」
死ぬ・・・リュウトが死ぬ? 考えられる事態、でも考えたくなかった事態・・・それを目の前に突きつけられたことで私の意識は一瞬遠くなった。わ、私の手の上に落ちる水は涙?泣いてるのは・・・私?
「ごめんなさい・・・本当にごめんなさい・・・。」
もう謝らないで・・・私・・・私・・・我慢が出来なくなっちゃう。
「うう・・・うぁぁぁああああ・・・リュウト・・・リュウト!・・・・リュウトォォォォォォ!!」
私は恥も外聞もなく、一頻り泣いた。落ち着いたころレミーから聞いた最後の希望の光を見るまでは・・・。
「あのね、あーちゃん・・・ひょっとしたら、ひょっとしたらだけどね・・・リューくんを助ける方法があるかもしれない。」
「えっ!? れ、レミー! 何でもいい! 何でもいいから教えて!! 私はリュウトを助ける為ならなんでもする!」
心からそう思う。私・・・こんなにリュウトのことが好きだったんだ。その・・・愛してたんだ。
「あのね、わたしもさっきまで忘れてたんだけど、わたしがお仕えしてる神様が言ってたの。竜族の体を治す神秘の泉があるって。もし、竜神が治療できないような大怪我をしたならそこに連れていきなさい・・・って。」
そんな大事なことを忘れていたっていうのはちょっと~って感じだけど、とりあえずナイスよレミー! いえ、レミーのお仕えしてる神様!!
「で! 肝心のその場所はどこ!?」
いつの間にか言葉遣いが素になってる気もするけど、そんなことはどうでもいいわ!
「えっと~確かこの先の山を越えたところだったと思ったよ。ちょうど進行方向だしよかったよね。」
例え進行方向の真逆だろうと、世界の裏側だろうと私はいくわよ!・・・まぁ、ついでに空中城に近づけるのはラッキーかもだけど。
「でもどうやってリューくんを連れていく? リューくんは動けないよ?」
「無論、私が背負っていく! 大丈夫、リュウトは見た目のわりに軽い(※身長170cm、体重58キロです)からな。さぁ、すぐに行くぞ!!」
「え~! す、少しは休まないと・・・。」
「何を言う! リュウトの状態は一刻を争うのだぞ!・・・無理なら私だけでもいくが・・・。」
「わ、わかったよ~。あーちゃんだけで移動するなんて危険すぎるよ~!」
ごめんね・・・でも私我慢なんて出来ないの・・・。あ、でも・・・リュウトが私の背中にピッタリ・・・ちょっと嬉しいかも!
そして・・・私たちは最悪の敵と再び相対することになる。
主役がリタイヤしようとも!タイトルはあくまで『竜神伝説』。そして、このまま泉について回復♪で終わるはずがない!
アキ「たまには争い無く平和に終わる話があってもいいのではないか?」
まぁ、そういう話も別にそれなりの量ありますから・・・。
レミー「平和な時にはわたしが大活躍♪」
・・・まぁ、確かにある意味大活躍するな。
アキ「するのか? 大活躍・・・。」
する。っていうかレミーの真骨頂は平和な時に無駄なトラブルを呼びこむことだったり・・・。
アキ「はぁ、憂鬱な情報を聞いたな・・・。」
レミー「ム~、わたしそんなことしないよ~!」




