1話 「約束」
闇の底に蠢く影。血で血を洗う戦いの中に生きるものたち。
『悪魔』 魔族の中でも力と知恵にて一目を置かれる種族である。そして、ここに誰よりも強く強者との戦いに飢えるものがいた。
「光の竜・・・いや、竜神か。ふっ、いずれ戦う機会もあるかとあえて邪竜神などについたが・・・やつの方が楽しませてくれそうだ。竜神よ・・・オレの血の乾き、貴様に癒せるか?」
「リュウト・・・ちょっといいか?」
食事も終わり、結界も張り終わったため(地属性以外も弱いものは張ることは出来る)に後は寝るだけと言うときにアキは俺に話しかけてきえた。レミー?・・・彼女ならとっくに女性専用のテントで寝てる。
「どうした? 珍しいな。」
普段アキは早めに眠っているのだが・・・歳を考えればむしろ遅いぐらいかも知れないがな。
「そなたと・・・少々話しをしたくなった。迷惑じゃったか?」
「いや、そんなことはないさ。」
どうしたのだろうか。アキの目は今にも泣きそうに見えた。
「そなたは・・・そなたは自分を守る気はないのか?」
・・・その問いに何も言えなかった。死にたいわけではない・・・だが自分を守る・・・そんなことは考えたこともなかったからだ。
「私は・・・私は怖いのだ。そなたがいつか死んでしまうのでないかと・・・私の前からいなくなってしまうのではないかと!」
何故? とはいえない。俺たちはいつそうなってもおかしくない旅の中にいるのだ。特に・・・俺はな。アキは女王の仮面さえはずしてしまえば心優しい少女だ。自分の知る命が失われることに恐怖を覚えることは当然なのかもしれない。
「死なないさ。まだ・・・死ねない。そうだな・・・アキが俺を失っても泣かないようになるまではな。」
どうしてこんなことを言ったのか正直わからない。もちろん、確証なんてない。明日死んだっておかしくはないのだから。実際につい先日も死に掛けた。傷も未だ完全には癒えていない。・・・でも俺はそう約束したかった。
「だ、誰が泣くというのじゃ!・・・だが、約束だぞ? 絶対! 絶対死ぬでないぞ?」
フルフルと震えながら俺にしがみついてきたアキ。顔を隠しているのは泣いているからなのだろうか。
そして、アキが落ち着くまで俺はアキの頭を優しく撫で続けたのだった。
「落ち着いたか?」
「う、うむ。恥ずかしいところを見られたな。」
それは今更な気もするぞ。恥ずかしいことだとも思わないけどな。
「気にするな・・・ここではアキ=シルフォード=エルファリアじゃなくて、ただのアキ=シルフォードなのだろう。アキの歳ならあれぐらい当然だ。むしろ・・・ああいう姿を見せてくれた方が嬉しい。もっと頼ってくれてかまわない。」
これは俺の紛れもない本心。こういうとアキは怒るかもしれないが辛い旅につき合わせてしまった罪滅ぼし。
「そなたも時より凄いことをいうな・・・。」
何故か顔を真っ赤にしたアキがそういう。そんなに凄い事俺言ったか?
「そうかな?・・・さて、そろそろ寝ないと明日に響くぞ。」
「そうだな。だが、今からテントに戻るのはレミーに悪い。今日は・・・ここで寝かせて貰うとしよう。」
・・・・・・・・な、なに~~~~~!!
「な、何を考えて・・・ってもう寝てるし。」
俺の作った簡易寝床は2人で寝れるようにはなっていないのだが。その前にいくら仲間だって言っても俺も男だって理解しているか?
「はぁ、今から起すのも可哀想だし・・・仕方がないか。」
無邪気な可愛らしい寝顔を見ると文句を言う気もうせる。もっとも、こんなことは今日だけの特別だけどな。
「すぅすぅ・・・むにゃ・・・リュウト~。」
一体どんな夢を見ているやら。まぁ、アキにとっては俺は兄代わりかな? アキにも実の姉がいるが、普段甘えるわけにはいかなかっただろうからな。・・・いくらなんでも親代わりってことはないよな?
冒頭の雰囲気と本編の内容がまったく違いますね^^ 冒頭の悪魔が出てくるのは次回からになります。
レミー「そんなことより! わたしが知らないところでなんかいい雰囲気作ってるよ~!!」
・・・レミーがいないから作れたんじゃないか? それにさっさと一人で寝てるから加われなかったわけだし。
レミー「わたしがリューくんとあーちゃんの邪魔してるって言うの~! ひっどいよ~!!・・・でもリューくんはまったくわかっていないね。」
まぁ、そこがリュウトのリュウトたる由縁というか・・・鋭いリュウトはリュウトじゃないだろ?
レミー「たしかにそうだけど・・・人よりちょっと鈍いじゃなくて鈍さコンテストでもあったら優勝狙えそうな鈍さだよ?」
・・・二人の恋の行方はアキの努力次第にかかっているな。




