6話 「真実」
「クスクス、さすがね~あの状態からほんのちょっと体をずらして心臓を避けるなんて。」
胸と口から大量の血を吐き出して生気のないリュウトを見ながらアイカさんはそういう。・・・心臓は無事? ならまだ助かるかも!
「あ、アイカちゃん・・・キミは一体?」
苦しげに問うリュウトに、アイカさんはニッコリ笑って
「アイカ~? それって誰のことかしら? 私はね~」
次の瞬間、今までアイカさんだったものは消え、そこにいたのは一人の魔族・・・サキュバスだった。
「私はルーン。サキュバスのルーンよ。よろしくね。」
妖艶に微笑むサキュバス・・・間違いなく『私』の敵ね!
「サキュバス?・・・アイカちゃんは! アイカちゃんはどうしたんだ!」
血が足りない。思考が定まらない。だが、俺は約束したんだ・・・必ず守ると・・・。
「フフ、可愛いわね。でも・・・お・バ・カ・さん。アイカなんて子はね・・・初めからどこにも存在してないのよ。」
ぼやけた頭の中で点と点が繋がっていく。そうか・・・そういうことか!
「全てはお前の仕業だったのか。ウェアウルフに情報を伝えた女っていうのも・・・いや、そもそも今回の騒動そのものがお前の・・・。」
「ご明察♪ 回りだせばなかなか切れるじゃない。・・・そう、元々あんな場所に村自体がなかった。全て私が操っていたのよ・・・村人もウェアウルフもね。」
俺達を嵌める為だけの大掛かりな罠。わかってしまえば全て納得がいく。・・・アイカが逃げたのは・・・俺を誘い込むためと言うことなどな。
「フフ、じゃ~あ・・・正解した坊やにご褒美よ。」
近づいてくるルーンの顔。いや、この場合は唇と言うべきか。血のような真っ赤なルージュの塗られた唇・・・絶対に受けてはならない! 本能が最大出力で警報を鳴らしているのがわかる。だが・・・俺の体は彼女を振りほどけるような余力は・・・すでになかった。
私はどれだけの時間、呆然としていたのだろう。気がついたときにはルーンとなのった女の唇がリュウトに近づいている真っ最中だった。
嫌だ!・・・心が悲鳴を上げる。気持ちはリュウトたちの元へ走っていた。でも実際には・・・数歩よろよろと足を進めたところで膝が折れ、地に手をついた。魔力・・・つまり元となる内部エネルギーが枯渇してるから。
見たくない! 心からそう思うのに、目をそらすことは出来ず、むしろ大きく見開いて凝視していた。・・・リュウトとルーンの唇が触れ合うところを・・・。
くちゅくちゅ・・・私とリュウトたちの距離を思えば、幻聴だったかもしれない。でも、その音はいやに大きく響いた。でも!
突然、リュウトの手が大きく動き、ルーンの頬を切りつける。思わぬ反撃に驚き、ルーンは大きく距離をとった。でも・・・私の見間違いかな? 今の・・・リュウトの手が動いたんじゃなくて、竜神剣が動いたように見えた。
ルーンは自分の頬の手を当て、手についた血を信じられないもののように見つめて・・・
「わ、私の・・・私の顔に傷を! 許せない! 許さない!!・・・今日のところは引いてあげるけど・・・坊やは絶対に逃がさない。逃げれない・・・私の死のキスを受けたんだから・・・。」
ルーンが転移魔法でどこへともなく消えた後、リュウトは仰向けに倒れた。・・・正直うつ伏せじゃなくてよかったわ。だってまだ・・・ナイフが胸に差しっぱなしだったんだから。
「れ、レミー! 急いで治療を!! リュウトが死んでしまうぞ!」
「わ、わかってる!・・・もう! なんでリューくんは毎回倒れるのよぉ!」
???
「ルーンよ、手痛く痛めつけられたようだな。」
「も、申し訳ありません。少々甘く見ていたようです。」
「その顔の傷・・・邪竜神には気づかれるなよ。」
「はい・・・ご安心を。邪竜神など所詮は小物。私の幻術を見破ることは出来ませんわ。・・・ですが忌々しいはあの竜神の小僧。何ゆえに、あのようなタイミングで私を呼び戻されたのでしょうか?」
「不満か?・・・・どうやらあの男が動くようなのだ。あやつが余にとって毒になるか薬になるか・・・見定めようではないか。」
今回こそは無事に戦いが終わりました♪ といって良いですね^^
アキ「どこが無事だと言うのだ!!!」
ぜ、前回と同じような展開(汗)い、いや、リュウトは(一応)生きてますから! ちゃんと次章では回復していますから!!
アキ「そんなことはわかっている! リュウトの・・・・リュウトのファーストキスがぁ~!!」
・・・そこに怒っているのか。とりあえず、苦悶しているうちに逃げよう・・・メモだけ置いて。
アキ「ん? 作者はどこに行った?何々・・・くっ!仕方ない、役割ぐらいははたさんとな。・・・リュウトたちの前に現れた次なる刺客は漆黒・・・ではなく白き悪魔。その圧倒的な実力は!? 次章 竜神伝説7章「闇の牙」女王の勅命をそなたに与えよう。」




