3話 「しなやかなる獣」
「お願いします! 私を・・・私を連れて行ってください! 私大好きな村のために役に立ちたいんです! もし、お邪魔だと言うならば私の事など見捨ててください。どの道今日捨てるはずだった命です・・・今更助かりたいなんて思っていません!」
生贄にされようと言う少女の訴え。ここで命乞いをしたとしても俺はけして浅ましいとは思わない。むしろ、それが当然であるとさえ思う。
だが、この少女が選んだ道は逆だ。村のために積極的に犠牲になろうとしてる。そして・・・その目にくもりは見られない。
「キミは・・・あ、君の名前はなんていうんだ?」
戦う術は持たなくても、命をかける覚悟があるなら彼女は戦士だ。名前で呼ばないのは失礼に当たる。
「えっ?・・・あ、あの、私・・・アイカといいます。」
さすがにこれを独断で決めるのは少々気が引けるので一応アキたちにアイコンタクトをとってみる。アキはしっかりと俺の目を見てうなずいてくれた。彼女も民のために自身を犠牲にしてきた・・・アイカに共感するものがあるのだろう。
レミーは・・・状況が理解できていないみたいだ。まぁ、レミーなら反対はしないだろう。
「アイカちゃん・・・きみの意思は確かに受け取った。」
「じゃ、じゃあ!」
「ああ、一緒に行こう。・・・ただし忘れないでくれ。俺たちは必ずキミを守る。だから、死に急ぐまねだけはしないでくれ。」
「は、はい! 私・・・皆さんを、リュウトさんを信じます!・・・チュッ。」
突然、俺の頬に押し付けられた彼女の唇。・・・いいいい今のってキスって奴か!? 顔に血が集まって赤くなるのが分かる。彼女も赤いがきっと俺はもっとだろう。・・・俺はこの手のことに耐性はないんだ!
ゾクッ! 突然冷や水をかけられたように今度は血の気が引き、青くなる。な、何なんだ? 今の強烈な殺気は!?
「あ、あーちゃん・・・落ち着いて~><」
「りゅ、リュウトにきききキスを! 私だってしたこと無いのに~~!!」
魔物がすむ山頂 生贄の祭壇
山頂は小規模な戦いをするには十分な広さの平地となっていて、そこに祭壇が作られていた。名目上、村とは無関係と言うことになっているため俺たちはアイカを一人祭壇に残し、魔物が現れるまで隠れることとなった。
そして待つこと数十分・・・僅かに他のものは気づかないだろうほど僅かに風が動いたのを俺は感じた。・・・今ならわかる、俺が風に敏感なのは俺自身の属性が風だからだ。
闇夜に蠢く怪しい影・・・それは一瞬のうちに祭壇まで到達した。しまった!? 出遅れた!
「ん? くんくん・・・匂うぞ! そこに隠れている奴ら・・・でてきやがれ!」
気づかれたと言うのは失敗だが、アイカちゃんに手を出されなかったと言う意味では幸いだ。
「村の奴らの差し金か。やつらよほど、どうなってもいいらしいな。」
「なんのことだ? 俺たちは偶々きさまの凶行を目撃しただけだ。」
あくまで無関係・・・そういうことにしておかないとアイカちゃんの犠牲の全てが無駄になる。
「ふん、戯けた事を。この小娘の体からも貴様らの匂いがぷんぷんしやがるのさ。まぁいい、奴らのシナリオどおり無関係ってことにしてやろう。これからも俺様に生贄をよこすならなぁ。」
そうあざ笑う奴は・・・月光に照らされた奴の正体はウェアウルフ(いわゆる狼男)。なるほど・・・それゆえに満月か。ウェアウルフの力は月が真円を描く時に最大になる。こういう事態を予想してのことだろう。そして、満月のウェアウルフの鼻をごまかすことなどできるはずもない・・・か。
ならば! ここで奴を倒す・・・それだけだ!
今度の相手はウェアウルフ・・・有名どころが少しずつ出てきました。
リュウト「その割りには俺たちはまだまだ弱いんだよな。」
まだ序盤だから強いわけにはいかないと言うか・・・とりあえず第一部の間はまだ常識的な範囲の強さでいてもらおうと・・・。
リュウト「第一部? 初めて聞いたぞ・・・その区分?」
えっ!? そうだったかな? 一応今は第一部・・・詳しくは言えませんが最終部あたりは並みの主人公最強物など物の数じゃないぐらいの強さに・・・(もっとも敵も極悪なのぞろいだけど♪)。おっと、これ以上はいえません^^ではまた~♪
リュウト「あ! こら!! 中途半端に言っていくな~! 待て~~~!!」




