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竜神伝説~リュウト=アルブレス冒険記~  作者: KAZ
1部6章『満月の夜に』
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2話 「生贄の村」

 

「実はですな、ちょうど1年ほど前から山に凶暴な魔物が住み着きまして満月の夜のたびにおなごを一人生贄に差し出せと要求しとるのですじゃ。」


 説明を求めた俺に語りだしたのは村長を名乗る老人。・・・満月の夜のたびか、明日がちょうどその満月。偶然か? それとも・・・。


「討伐を依頼しようにもワシらにはそんな金はありませぬ。ゆえに泣く泣く生贄を差し出し続けとりますのじゃ。」


 何か胸に引っかかるものがあるのは事実だ。だが、この老人が嘘をついているとも思えん。なら・・・


「わかった・・・そういうことならばその討伐、俺が・・・いや、俺たちが請け負おう。」


「おお! なんとお礼をしたらいいか!」


「礼など・・・いや、今晩と明日の宿を頼めるか?」


 相手が何者かは知らないが、討伐の報酬としては破格・・・っていうか普通なら報酬にもならないものだがこれ以上を望むのはこの村には酷だろう。


「まったく、そなたは勝手に決めおってからに・・・。」


  口調は厳しいが表情がそれが本心でないことをありありと物語っているアキ。・・・ポーカーフェイスなど当初から出来ていなかったが最近益々表情に出るようになったな。


「アキたちなら聞くまでもなく参加すると思ったんだがな? 勿論、嫌だって言うなら俺一人で行くぞ?」


 少々意地悪な問いかけかな?


「そなたは私がひとりで行かせることが出来るとでも思っておるのか?・・・だが、得にもならんことを他者の為にやろうとすること・・・そなたらしいと私は思うぞ。」


 やっぱり不機嫌だ~! って言うのを前面に押し出して言うアキだったが、後半はやわらかい笑みを見せてくれた。


「うんうん、やっぱりリューくんはそうでなくちゃ!」


 言っていることは同じなのにレミーに言われると考えなしと言われてるような気がするのは何でだろう?


 ともかく、こうしてこの村では俺たちを歓迎するささやかな宴が開かれ、俺たちは明日の戦いに備え英気を養うのだった。




「さて、じゃあそろそろいくか!」


 日が沈み、代わりに真円を描く月が夜空に昇り始めるころ、俺はアキたちにそういった。


「お待ちくだされ・・・騎士様、どうかこの子もお連れになってください。」


 その俺達を止めたのは先日の村長さん。連れられてきたのはまだ歳若い少女だ。


「村長?その子は?」


  嫌な予感・・・というか大体答えは予想がつくのだが、一応確認を取る。


「今宵の・・・生贄ですじゃ。」


 やはりそうか・・・俺たちが来たのは昨日。当然その前には生贄の候補は決まっていたはずだ。だが、分からないのは何故彼女も連れて行くのかだ。


「村長・・・いったいどうして?」


「騎士様たちを信用していないわけではないのです。しかし、万が一のことがあった場合、生贄もなしでは魔物に何をされるか・・・どうか、騎士様たちはこの村と無関係に討伐に行った・・・そういうことにしていただけないじゃろうか?」


 気持ちが分からないわけじゃない。俺たちが破れたときのデメリットをなくす。・・・良くわかるさ。だが、自分たちが破れたときの話をされると言うのは正直気分のいいことではない。アキも・・・レミーさえも複雑そうな顔をしてるぐらいだ。それに・・・


「村長、気持ちは良くわかる。しかし、彼女は足手まといだ。わざわざ、勝率を下げるようなマネは・・・」


 したくない・・・そう続けるはずだった俺の言葉を遮ったのは


「お願いします!私を・・・私を連れて行ってください! 私、大好きな村のために役に立ちたいんです! もし、お邪魔だと言うならば私の事など見捨ててください。どの道今日捨てるはずだった命です・・・今更助かりたいなんて思っていません!」


 生贄にされる少女本人だった・・・。

ある意味ファンタジー系の王道イベント、生贄です!


リュウト「普通は生贄の代わりに籠やら樽やらに入っていくんじゃないのか?」


まぁ、確かにそういうスタイルが多いなぁ・・・。


アキ「まして、本当の生贄連れて行ってどうするのよ! 死亡フラグたちすぎでしょ!」


・・・あからさまなのを折るのが・・・・じゃなくてまだ行くとは決まってないでしょ?


レミー「じゃあ、かわりにお酒を積んでいくの・・・それで~」


八岐大蛇ヤマタノオロチじゃないんだから・・・それも王道と言えば王道だけど。

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